第11話 結果
魔法戦の結果は――全敗だった。
どれだけ工夫しても、全部真っ向から叩き潰される。
熟練度も、魔力操作も負けているということを改めて痛感したのだった。
「これからは戦闘スタイルを考え、それに合わせて魔法の習得を進めていく予定だ。・・・来週までに、いくつか考えてくるように。」
「ありがとうございました。」
私はいつも通りマノンさんに礼をしてから、お母様の執務室へ向かった。
「お母様、訓練終わりました。」
茶色の、他のものよりいくらか立派な扉をノックして開くと、お母様は書類に囲まれていた。
その隣では、秘書のマチルドさんが書類の整理をしている。
「あら、リリス。それじゃあ、帰りましょうか。」
お母様が帰り支度をしようと腰を上げると、マチルドさんがすかさず口を開く。
「何を言っているのですか。娘が大事なのはわかりますが、部隊も大事でしょう。」
「でも、必須の書類はあらかたかたずけ終わったでしょう?」
「・・・目、ついてます?」
「・・・わかったわ。リリス、先に帰って居て頂戴。」
お母様はマチルドさんの視線に負けた、という風に、浮かせていた腰を椅子におろす。
「わかりました。お母様、頑張ってくださいね。」
私はそのまま踵を返し、馬車へと向かった。
「・・・1週間に一度の楽しみなのに。」
「それなら、さっさと片付けてください。」
マチルドは、書類を整理する手を止めずにそう言い放ち、セレストはどこか不機嫌そうに書類仕事に戻っていく。
ちょうどその時、扉をバンッと開く音が部屋に響いた。
「お疲れ。」
「・・・ノックくらいしたらどうです?あなたは10歳未満ですか?」
マチルドが、いつものように毒を吐くと、マノンはドカリとソファーに腰掛け、肘をつく。
「リリス、すごいな。あの年で上級相当の魔力とか。」
マチルドの言葉を華麗にスルーし、書類に向き合っているセレストに言葉をかける。
「ありがとう。あなたの訓練のおかげでしょうね。」
その言葉をきき、マノンは誇らしげに胸を張る。
「そりゃあ・・・
「でも、戦闘スタイル考えてくる、という課題はいただけないわ。」
セレストはペンを置き、椅子の背にもたれて腕を組む。
「あの子の意志はきいたの?」
「あんたみたいになりたいって言って訓練してんのに、軍人にならないなんて選択肢、あると思う?」
マノンはため息をつきながらセレストにちらりと視線を向ける。
「・・・本音は?」
「あんな才能の塊、放っておくわけがないだろ!」
「まったく。」とつぶやきながらも、うれしそうな表情を浮かべたのは気のせいではないだろう。
「もういいわ。書類を渡すから、それを片付けてから帰って頂戴。」
その言葉を合図に、マノンの背後に立っていたマチルドは彼女の肩をつかみ、有無を言わせずに部屋から閉め出した。
部屋には、セレストとマチルドだけがいた。
「さて、さっさと片付けましょうか。」
そんなことを呟き、机に向かうセレスト。
そんな彼女の横では、
「娘のことがなければ、完璧な上司なのに。」
とつぶやき、どこか楽し気な表情を浮かべるマチルドが立っていた。
「何か言った?」
セレストが顔を上げ、マチルドに視線を向ける。
「いえ・・・ただ、仕事中に魔法を使わないでほしいと言っただけです。・・・では、私はマノン殿へ書類を届けてきます。」
マチルドはまとめた書類を抱え、部屋を出ていく。
その背後では、セレストが頭を抱えていた。




