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王都奪還



「……"縛鎖領域(バインド・ドメイン)"」


ガギィィィンンッ!

闇の中に無数の光の鎖が現れ、魔物を捉えた。


「…………!!!?」

「……な、んだ…?」


「"空間操術アーキテクト・ドメイン"」

二人を囲む暗闇の世界が、砂のように崩れていく。


「……なにッ…!!」

鎖に縛られた魔物のタガーナイフが宙を舞い、やがて目の前に立ちはだかる男の手元へと吸い寄せられるように落ちた。


「………あ、あなたは……いったい……」

ロイドは日差しによる逆光で、その者のシルエットしか捉えられない。


ドガァァァアンッ!!


大きな光の鎖が魔物を地面に叩きつけ、やがて魔物は意識を失った。

「"尊厳のインヘリタンス・ディグ…"……いや、やめておこう。」

男は何かを言いかけて途中でやめると、魔物をロープで縛り上げた。

「…これで、よし。」


その時だった。

「…………ユキ……!」

「ユキ!!お前ェなんで……!?」

バニルダスやジャグたちが前線から駆け戻ってくる。

「………ユキ…殿、という…のか……感謝…す…る……」

ドサッ —— 。

「おい誰かッ!! 救急班を呼べェッ!!!」

バニルダスがロイドを抱えようとした時、白い光がロイドを包み込んだ。


「……?!なんだァッ…!?」

「……かはッ!」

「お、おい大丈夫かァお前ェ…!」

「あ、ああ。…不思議ともう大丈夫…みたいだ。おろしてくれ。」

「…へ?」

「誰かが回復スキルをかけてくれたのだろうか…いったい誰が…」


ザッ…ザッ…ザッ…


足音のほうへ視線を向けると、そこにはフレッド、吹き飛ばされた二人の少女を支えるプレグムンド修道院長とウェアフリス修道士の姿があった。

「……もう大丈夫でしょう。…ご無事でよかった。」

「…プレグムンド修道院長…!!ありがとうございます…。おかげで助かりました」

「いえいえ、私よりも彼に…」

プレグムンド修道院長はユキへと視線を向ける。


「………ユキ……なのか…!!」

それは、フレッドの声だった。

「……ああ。久しぶり…だな」

「…………すまなかった、ユキ」

「……?」

「私の思慮の甘さゆえ、気づかぬうちに君には大きな迷惑をかけてしまった」

「もしや……こちらの方が、はぐれてしまったという…」

「ああ。この男こそ、我らを一人で救ってくれた……ユキだ」


「……なんと!!たった、お一人で…!?」

「フレッド…。状況はまだ把握できてないけど、なかなか大変なことになってるな…」

「ああ…。彼らは私の想定を上回るほどの力を持っていた。…しかし、その者……まさか…!!」

「………なんだァ?お前ェさんら、知り合いなのか…?」

バニルダスが縛られた魔物を見て、フレッドに問いかけた。


「…ああ。彼は旧ピラミディア王国に永らく忠誠を誓い、我ら王家を守り続けてきた精鋭隠密部隊のリーダー…『レオパルド・バルドロウ』だ…!!」


「……!!?」

「精鋭…隠密部隊…だとォッ?!」

「フッ…。それで私も彼の顔を知らなかったということでしたか…。」

ロイドがやれやれといった表情でつぶやく。

「ああ。彼らの存在は王家以外誰も知らない、いわば影で王国を支える存在だったからな。……しかし、彼もまだ生き延びてくれていたとは…」


「あの~…」

「………あ、あなた方は!!……えーっと…」

「あら、助けてもらった者の名を忘れるだなんて…なかなか恩知らずな方ね?」

「なかなか恩知らずな方ね? ですっ!!」

「……貴殿らには私からも感謝する。ピラミディア兵士たちを守ってくれて、本当にありがとう」

「ふふっ。別に良くってよ?」

「良くってよ? ですっ!」


「とはいえ私たちも、そこの黒豹の魔物に一瞬で吹き飛ばされたところを、皆さまに助けていただいた身でもありますからね。私からも感謝します」

女がプレグムンド修道院長たちに頭を下げると、もう一人の少女も慌てて真似をした。


「ところで、貴殿らの名を聞いてもよいだろうか?」

「ええ。私は"砂の魔術師"、『エマ』よ。そして、この子が『ニナ』」

ニナはペコリと頭を下げた。

「エマとニナか……改めて礼を言う。」


「ところで王子さんよォ、これから一体どうすんだ? 中の奴らも殲滅したらいいのか?」

「いや、殲滅はせず捕らえるつもりだ」

「カッカッカ。ユキにでも感化されたか?」

「フッ。………そうかもしれぬな。だが、無駄な殺生は不要だ」

「あいよッ! そんじゃ、行くぞお前ェら!」

バニルダスは海賊たちを引き連れ、王都への入り口に向かう。

「我らも行くぞッ…!」

「おおぉぉぉおッ!!!」

フレッドも主力隊を率い、王都へと進んだ。


「—— もしかして…"リミナルズ" か?」

ユキは単刀直入にエマとニナに問いかける。

「……リミナルズ? というのは何かしら?」

「何かしら? なのですっ」

「—— テスター…なのか?」

「……………ッ!!!?」


「……やっぱりそうか。…あれほどのスキル、只者じゃないことはすぐに分かった」

「…あなたも見たの?」

「"緊急メッセージ"のことか?……ああ、見た。でも、あなたたちにも見えてたってことは、テスター全員に届いたメッセージだったということか」

「……あれは、本当なの?」

「わからない。でも緊急でない以上、わざわざあんなメッセージは送らないはず…」

「…それは、そうだけど……」

「悠都が暴走しているというのは、おそらく間違いないと思う」

「でも、たしか内部にヒントがあるって——」

「ああ。諸菱所長が言うにはそうらしいが、何がカギになるのかはまだ分からない…」


ユキは新たなテスターという心強い理解者に出会えたものの、二人はログアウトできないことへの不安を隠しきれていなかった。


「……大丈夫、あまり心配しなくても」

「そうはいっても……」

「…大丈夫だ。三人で一緒に探そう。俺たちが協力すれば、出口は必ず見つけられる」

「…ふふっ。そうね…! 確かに、テスターが身近にいれば、気分が少し軽くなる気もする」

「…ああ。協力して見つけ出そう」

「ええ。私たちも協力するわ」

「協力する、でありますっ」


三人が話している間に、主力隊はついに旧ピラミディア王国の入り口に到着した。


「…………再び、ここに来られる日が来るとはな…」

フレッドは感慨深げに呟く。


「報告しますッ!!内部にいた者たちをすべて捕らえました!!そして、この者が長として動いていたようです」

「……良くやった。礼を言う」

「はッ!」


目の前に拘束された男を見て、フレッドが口を開く。

「………そうか、貴殿が…」

拘束されて気を失っているレオパルドに目をやりながら、男は言葉を漏らした。


「…レオパルド……やはり……」

「………貴殿の名から聞かせてもらおうか」

「………その前に、頼みがある」

「…あぁ?こんな状況で頼みだなんてなめてんのか貴様ッ!」

兵士長が怒鳴るが、フレッドが手で制する。


「……聞かせてもらおう。その頼みとやらを」

「……仲間の命だけは、助けてやってくれないだろうか」

「………!」

「貴様、自分の状況が分かって言ってんのかッ…!」

兵士長が怒りを爆発させる。

「……ああ」


しばしの沈黙ののち、フレッドが口を開いた。

「ならば、取引をしよう。すべて包み隠さず私からの質問に答えることを約束するならば、私は貴殿の仲間たちの命を奪わない」

「……わかった。約束しよう」

「…………よかろう。それであれば私も約束しよう」

「…………!!?」

「アスタンバード王子…!」


フレッドは周囲を気にすることなく、質問を始めた。

「では改めて、貴殿の名から聞かせてもらえるだろうか」

「……グズラン・キングヴァールだ」

「七つの国のうち、どこの国の者だ」

「いや、我々の生まれ育った地は七つの国のどこでもない」

「………!!」


ユキは目を見開いて、問いかける。

「お前も、リミナルズだったのか…?」

「……なんのことだ?」

「テスターでスキルが…使えるのか?」

周囲もこの男に警戒を強めたが、本当にテスターやリミナルズを知らないことが判明し、安堵した。

「リミナルズやスキルなどは知らん。……私は『ノーシャン帝国』の者だ」

「ノーシャン…帝国? 聞いたことがないな…。」

「ああ。あるまい」

「貴様ッ!この期に及んでまだたわごとをぬかすかッ!」

兵士長が叫ぶ。

「嘘ではない…紛れもない事実だ」

「…その国の目的はこの国…いや、七つの国の支配か…?」

「……ああ。我々はこの国以外にも多くの国をすでに支配している」

「……なぜ、そのようなことを?」

「君たちの住む七つの国がしていることと、何ら変わりはない」

「………ノーシャン帝国の王の名は?」

「それは…私も存じ上げぬ」

「…………!?」

「国の指揮官が王を知らぬなんてふざけた話があるかッ!!」

「…いや、本当に知らぬのだ。我々の国には『四死聖(ししせい)』と呼ばれる上位の階級があり、王の直下に仕えるその者たちのみが王の存在知っている」

「…なるほど。作り話ではなさそうだ」

「…アスタンバード王子…!こんなの、死ぬ間際に生き延びようとする者がでっち上げた虚言に過ぎませんッ!」

「……生き延びようなどとは考えておらん。…私はこの尋問が終われば、いずれにせよ死ぬ」

「…………!!!」

「……それは、どういうことだ?」

「我らノーシャン帝国の指揮官は、戦に負けた時点で国からの追放が決定し、二度と戻れぬ」

「………!?」

「ただ戻れぬだけならまだ良いが、実際はそうはいかん」

「……なぜだ?」

「極秘情報の流出を防ぐため、帝国が世界中に放った刺客に命を狙われ続けることになるのだ。ゆえに、戦に敗れた指揮官は自決する。それが帝国の暗黙の掟だ」

「徹底した情報統制か」

「……そういうことだ。そうして我々は謎を保ち続け、強くなった…」


重苦しい空気の中、フレッドが口を開いた。

「………グズラン、我らピラミディア王国に、力を貸してくれないだろうか」

「……………!!!?」

グズランを含め、誰もがフレッドの発言に驚愕し、動揺を隠せなかった。

「………どういう意味だ?」

「そのままの意味だ」

「アスタンバード王子ッ!!あまりにも馬鹿げていますッ!!」

「おいッ!!王子に不敬を働くかッ!!!」

場が騒然とする中、フレッドは冷静に話を進めた。

「グズラン、もし貴殿が我々の仲間となり力を貸すなら、命を保証しよう」

「……こんな命、惜しくはない」

「まあそう言うな。ここで囚われた者たちの命も含めてだ」

「………それは、脅しか?」

「そうとも取れるだろう。だが私は何も約束を破ってはいない」

「……?! どういうことだ」

「"私は"貴殿の仲間たちの命を奪わぬと約束したが、"我々"とは言っていない」

「…貴様…謀ったな! そんな言葉の(あや)(ろう)するとは、王家の品格はどうした!」

「…品格、品位。…私はもうそんな言葉には惑わされぬ」

「……なに?」

「私の務めは王家の品格を守ることではない。……"民を守ること"だ!」

「………!」

「そのためなら、罵られようと、侮辱されようと構わぬ」

「…………」

「ノーシャン帝国の者たちは、七つの国で悪しき者(プレイグ)と呼ばれ、各地で暴虐の限りを尽くしている」

グズランは視線を落としたまま、静かに聞いていた。

「その脅威に対抗するためには、脅威を知る者の知恵が必要だ」

「……!」

「つまりグズラン、我々が貴殿と仲間たちの命を守る代わりに、ピラミディア王国にノーシャン帝国と戦う知恵を授けてほしい」


周囲は唖然とした空気に包まれた。

「………これから私をどうするつもりだ?これは自慢ではなく事実だが、指揮官であった以上、ノーシャン帝国の者で誰もが私の名と顔を知っている。私が生きている限り、命が狙われ続け、ピラミディアの民にも災いが及ぶぞ」

「そこでだ。………グズラン、君を私の養子とし、名を変えてもらう」

「……………!!?」

「そして秘境の村、アゼルニ村の統治を任せよう」

「ア、アスタンバード王子ッ!?侵略者を仲間に引き入れるうえ、重要拠点を任せるなどもはやッ…!!」

「カッカッカ…!やはりこの王子は何を考えてんのか分からんな…!」

「ふむ。…そうだな……『グラン』がよかろう。………貴殿の名は今後、『グラン・アスタンバード』とする」

「……グラン……アスタンバード……」

「そうだ。貴殿はその名でピラミディア王国を支えよ」

「甘いな。もし私がアゼルニ村で挙兵すれば、王国はすぐに奪われるぞ?」

「やれるものならやってみよ」

「……!?」

「我らには国のために命を張る勇士がいる。この結束こそが国を強くし、外敵を退ける力となる」

「…………」

「—— それに、貴殿がそんなことをする者には見えない」

「………?!」

「貴殿は真っ先に仲間の命を守ろうとした。それは誠実さと義理堅さの証だ」

「…………」

「ゆえに、貴殿を仲間に迎える価値があると判断した」

「………おかしなことを言う王子だ」

「オウ、その通りだ。こいつらは頭のネジが何本か飛んでやがる。だから俺たち海賊団もついていくと決めたのさ」

「海賊…だったのか。…………フッ。いいだろう。私でよければ力を貸そう」

「…………!!!」

「交渉成立だな」


ピラミディアの広場には、虚ろな顔をした多くの捕虜が並べられ、縄が解かれていく。

不思議な現象に理解が追いつかず、捕虜たちは困惑していた。

そこへ壇上に一人の男が上がり、口を開いた。

「—— 我が名は旧ピラミディア王国国王ベオルトリチ・アスタンバードの息子、ウルフレッド・アスタンバード!!」

その声を聞いた途端、民衆の視線が壇上へと集まり、虚ろだった瞳が大きく見開かれた。

「う、嘘だろ……まさか…!!」

「あ、あれは……そんな…!」

どよめきの中、フレッドの声が響き渡る。

「旧ピラミディア王国の民よ、兵士たちよ! これまでの苦難、よくぞ耐え抜いてくれたッ!……我ら王家の危機意識の薄さが、皆にこれほどの苦痛を与えてしまった。本当にすまなかったッ!」

王子が深々と頭を下げ、民衆のどよめきはさらに大きく広がった。


「王子ッ!!!よくぞご無事でご帰還なさったッ!!!」

「我々は王子とともにありますッ!!どうか頭をお上げくださいッ!!」


捕虜たちが、これまで抑圧されていた世界を救った英雄のようにフレッドを称えている。


「我々はついに王都を奪還したッ!よって、この国を新たな『ピラミディア王国』として再建することを宣言するッ!!」


大歓声の中、アゼルニ村からもメルたちが到着した。


「此度の戦により、悪しき者たち(プレイグ)の正体が判明した。詳細についてはまだ言えないが、必ずやこの脅威から皆を守り抜くことを誓うッ!!」


(フッ……大きく出たな)


ユキが見守る中、フレッドが続ける。


「新たな脅威に対抗すべく、我々は新たな軍制改革を行うッ!」

「……軍制…改革…?」


きょとんとした表情でカリナがつぶやいた。


「これより我々ピラミディア王国の軍は七つの団で構成し、それぞれの役割とともに軍事力を強化してもらうッ!」

「………七つの…団だとォッ!!?」


「1つ目の団を発表する。 "太陽槍兵(たいようそうへい)団 ソル・ランサー" !!彼らは槍歩兵に特化し、陸地での戦場を支配する役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「—— そして団長は、 "バニルダス・レオンガルド" に任命するッ!!」

「……………!!!!?」

「…………お、おい、いま俺の名前呼ばれなかったかッ?!」

「フフッ。そうよ、船長……じゃなくて、団長…かしら。」

「" 太陽槍兵団(ソル・ランサー) 団長、バニルダス・レオンガルド!壇上へッ!」


総隊長ロイドの声が響き渡り、バニルダスが困惑しながら壇上へと上がった。


「バニルダス・レオンガルド、貴殿をピラミディア王国の太陽槍兵団(ソル・ランサー)の団長に任命する。この国の矛となり守り抜くことを期待している。」

「……ほ、本当に俺でいいのか?お前たちを捕えていた元海賊だぞ?」

「ああ。私はお前の統率力の潜在能力、そして槍の腕を買っている。必ずやこの国の柱になるだろう」


「…カッカッカ。本当にあんたは…。このバニルダス・レオンガルド!ピラミディア王国の矛となり、民を生涯守り続ける槍兵団を築き上げることをここに誓うッ!!!」

「おおおぉおおッ!!!」

「船長~~~!どこへでもついていきますッ!!」


市民もバニルダスの頼もしさを受け取り、歓迎した。

「…フフッ。よかったわね、団長。」


ジャグとカリナも思わず喜んだ。


「2つ目の団を発表するッ! "海勇義賊(かいゆうぎぞく)団 ブルー・ローグス" !!彼らは海上行動に特化し、海での戦を支配する役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「—— そして団長は、"ジャグ・ラトル" に任命するッ!!」

「…あら!それは少し頼もしくなるわね」


カリナはからかうような視線でジャグを見る。

「" 海勇義賊団(ブルー・ローグス) 団長、ジャグ・ラトル!壇上へッ!」


ジャグも壇上へと上がると、バニルダスが満面の笑みでジャグを見ている。


「ジャグ・ラトル、貴殿をピラミディア王国の海勇義賊団(ブルー・ローグス)の団長に任命する。この国を海軍として守り抜いてくれることを期待している。」

「…身に余る光栄。…このジャグ・ラトル、この命を懸け、ピラミディア王国の民を生涯守り抜くことを誓います」

「ああ、頼む。」

「おおおぉおおッ!!!」


「3つ目の団を発表するッ! "黒豹影兵(くろひょうえいへい)団 ナイト・クロウ" !!彼らは影で動き、王と民を守り抜く役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「フフッ。ということは流れ的に…私ね」


カリナが不敵な笑みを浮かべた。

「—— そして団長は、"レオパルド・バルドロウ" に任命するッ!!」

「え!??私じゃ…ない…?」


カリナはショックを受けている様子。

「" 黒豹影兵団(ナイト・クロウ) 団長、レオパルド・バルドロウ!壇上へッ!」


縄を解かれたレオパルドは驚いた表情で壇上に上がると、フレッドを前に跪いた。


「この国が侵略され、王不在であったこの地で一度望みを失ってしまった私の非礼、どうかお許しください。またこのようにして王子とお会いできたことは神の思し召し。次こそ必ずや王子、そしてピラミディアの民を守り抜いてみせることを誓います」

「レオパルド。私はお前たちのおかげで生き延びることができた。これからもどうか頼む」

「はッ。仰せのままに」

「おおおぉおおッ!!!」


「この黒豹影兵団(ナイト・クロウ)だが、副長をつけるッ!そして、副長にカリナ・プルミオルを任命するッ!」

「私が…副長…?」


「" 黒豹影兵団(ナイト・クロウ) 副長、カリナ・プルミオル!壇上へッ!」


カリナが複雑な表情で壇上に上がり、フレッドの前に立った。

「私が副長…なのね?」

「ああ。お前の隠密行動と着実な任務遂行能力に非常に期待している。レオパルドはずっと王家を支えてきたリーダーではあるが、国の一大事に関わる重要な案件を抱える特殊組織。やはり一人では危険だ。そこで、カリナに頼れる副長として動いてもらいたいと考えた。」


カリナの承認欲求が満たされるような言葉の数々に少し心が揺れたカリナが口を開いた。

「ま、まあそれなら……引き受けてあげましょう」

「カッカッカ。なんだアイツ…素直じゃねェな」


バニルダスはジャグと笑いながら、カリナの副長就任を祝福した。

「おおおぉおおッ!!!」


「それでは、4つ目の団を発表するッ! "砂漠騎士(さばくきし)団 デューン・ライダー" !!彼らは砂漠地帯はもちろん地上でも活躍し、オールラウンドにピラミディアの優勢を生み出す役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「—— そして団長は、"ロイド・グライドル" に任命するッ!!」


ロイドはフレッドのもとへ向かい、跪いた。

「このロイド・ライグル、命を懸けてピラミディアを守り抜くことを誓いますッ!」

「引き受けてくれたことに礼を言う。これからもピラミディアに貢献してくれることを期待する」

「おおおぉおおッ!!!」


「5つ目の団を発表するッ! "空挺兵(くうていへい)団 サンド・ホーク" !!彼らは空中や地上での攻撃、空から戦を支配する役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「—— そして団長は、"クレイン・ラインハルト" に任命するッ!!」

「" 空挺兵団(サンド・ホーク) 団長、クレイン・ラインハルト!壇上へッ!」


クレインが壇上へ上がると、ロイドがほほ笑んでいた。


「クレイン・ラインハルト、貴殿をピラミディア王国の空挺兵団(サンド・ホーク)の団長に任命する。この国を空軍として守り抜いてくれることを期待している」

「はッ!身に余る光栄ッ!わが命に代えてでも、ピラミディア王国を守り抜くことを誓いますッ!」

「おおおぉおおッ!!!」


「6つ目の団を発表するッ! "攻城兵(こうじょうへい)団 ストーム・クラッシャー" !!彼らはその名の通り、城砦の門の破壊、敵の攪乱工作などにより、戦況を大きく変える役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「—— 団長は、"エマ" 、副長は"ニナ"の二人をそれぞれ任命するッ!!」

「" 攻城兵団ストーム・クラッシャー 団長 エマ、副長 ニナ!二人とも壇上へッ!」


「フフッ。たった一戦だけで団長と副団長だなんて、なかなか大胆な王子だこと…。」

「大胆な王子だこと、 ですっ!」


「突然の任命で驚いているかもしれないが、ユキから事情は聞いた。戦況を大きく変える貴殿らの力をぜひ我々に貸してほしい」

「フフッ。喜んで拝命いたします」


二人はフレッドに深く頭を下げ、忠誠を誓った。

「おおおぉおおッ!!!」


「—— 最後に、7つ目の団を発表するッ! "光道修士(こうどうしゅうし)団 ルクソフォス" !!彼らは主に兵士の戦闘支援や治療などを行う重要な役割を持つッ!」

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「—— 団長は、"プレグムンド" 、副長は"ウェアフリス"の二人をそれぞれ任命するッ!!」

「………!!? 我々が…?」

「…どうやら、そのようです…!」


二人は驚きながらも、壇上へと向かった。


「突然のことで、大変申し訳ない。だが、プレグムンド修道院長の回復魔法は戦場においても非常に重要であり、ウェアフリスの医療技術と知識にも大いに助けられている。この団においてさらなる人員を補強し、戦闘だけでなく国家の福祉にも貢献してもらえたらと考えている」


「身に余る光栄でございます。謹んで承ります」

「私もその名に恥じぬよう、誠心誠意従事してまいります」

「おおおぉおおッ!!!」


七つの団で構成される新たな軍事体制が発表され、民衆は大いに沸いた。


「—— 最後に一つ、皆に伝えておく話があるッ!」

民衆が静まり、フレッドを見つめる。

「……ユキ! 壇上に上がってくれッ!!」

「………!!!」

フレッドの発言に、広場は再びどよめいた。


ユキが壇上へと上がると、フレッドが口を開いた。

「……!!ユキ!!どうして??!」

アゼルニ村から到着したばかりのメルは、状況を飲み込めずにいた。


「—— 彼こそ、リメナ島で囚われていた我々を解放してくれた…… リミナルズ である…!!そして、そこに座るエマとニナもだッ!」


広場が騒然となった。

「あ、あの方たちが…リミナルズ…!」

「ああ。神よ…!」

「王子たちをお救いくださり、ありがとうございますッ!!」


民衆は伝説の存在の出現に驚きを隠せない。


「彼は大袈裟だと言うかもしれないが、彼が現れたことで間違いなく我々の運命は変わったッ!」

ユキは困惑の表情を浮かべる。

「そして彼の存在が………我々に大きな影響を与えている」

(…………?)


「私は従来の常識を覆すべく、新たなピラミディア王国では、"奴隷制度と貴族階級を廃止"することを宣言するッ!!」

「………………!!!!!!」


その場にいるユキだけでなく、すべての者が唖然とした。


「…私はこれまで、奴隷や階級制度は必要だ、これは世界の常識だと思い込んでいた。だがリメナ島での一件で、我らピラミディアの貴族や民の一部が奴隷となった。」

民衆はさらにどよめく。


「その経験が意識を変え、常識が果たして本当に正しいのか疑うきっかけを与えてくれた。そしてその時……彼が現れたのだ」

ユキは驚きの表情でフレッドを見ていた。


「…これは我々が新たな世界を築くための大きな試練だッ!これまでの常識に囚われ、他人と魔物を酷使し、管理することで発展しようとしてきた。だが、その先に明るい未来などないッ!」

民衆は真剣に耳を傾ける。


「我々は考えを改め、明るい未来を見据え、後世へと想いを繋ぐ義務があるッ!」

フレッドの熱意に、民衆は息をのんだ。


「我らピラミディア王国は、世界の新たな秩序を築く国家として生まれ変わるのだッ!!」


広場で唖然としていた民衆たちも、次第にフレッドの熱弁に心を打たれ、やがて無意識に歓声と拍手を巻き起こした。


「フレッド……まさか俺のせいで」

「自分が悪い影響を及ぼしたなどという勘違いはするな。ユキが現れたことで、新しい知見を得た。そして心の奥底に秘めていた想いを、自ら導き出したのだ」

「……!!」


「リミナルズ万歳ッ!!」

「万歳ッ!!万歳ッ!!!!」


群衆はやがてユキへの歓声を生み出した。


「や、…ちょっと」

ユキは動揺したが、フレッドは大きく息を吸い込んだ。

「ユキ! 貴殿をピラミディア王国特別遊撃隊 "リミナルズ" の隊長に任命したいッ!!!」

「おおおぉおおッ!!!」


「特別……遊撃隊…?」

「この王国特別遊撃隊(リミナルズ)は、軍の指示系統には属さず、国の防衛に必要とあらば独断で他国への調査や攻撃にも参加できるッ!」

「………!!」


「責任は重大だが、彼であれば必ずやってのけてくれるだろうッ!」

「おおおぉおおッ!!!」


「お、おいおい…」

「そして!副長としてメルノリカ・クレオダルクを任命するッ!! 壇上へ上がってきてくれッ!」

「……へ?!」

「おおおッ!!! メル様~ッ!!」

「いやいや…まじかよ」


メルが壇上に上がり、涙を浮かべる。

「ユキ……もう会えないかと…!!」

ユキは気まずそうに彼女を見た。


「—— ユキ、我が提案を受けてくれるだろうか?」

フレッドは手を差し伸べる。

「………提案って言いながら、断れない雰囲気しかないだろ、これ…」

「はっはっは。よく気付いたな、ユキ」

「…………わかった。俺もこの世界をもっと知る必要がある。これが手がかりに繋がるなら、引き受けるよ」


ユキはフレッドの手に応え、やれやれといった表情で握手を交わした。

「おおおおおぉぉぉぉおおッ!」


「すべて決まったッ!!!我らピラミディア王国は生まれ変わり、世界に再び名を轟かせようぞッ!!!!」

「うおおおおおぉぉぉぉおおッッ!」


その雄たけびは天を裂き、瞬く間に他国へと知れ渡っていった。



————— 国立電子科学研究所 モニタールーム


「—— あちらが、ユキさんです」

諸菱が指し示したモニターに、ユキの姿が映っていた。

「ああ…!!ユキ……!!」

「……!!」


母イロハと妹アカリは、画面越しのユキの姿を見つめていた。

「どうか……ユキを救ってやってください…!」

母は涙を浮かべながら諸菱の手を握った。

「……はい。必ずユキさんたちテスターを救出します」

「お母さん、行こう…」

アカリが母の手を取り、支えるようにしてモニタールームをあとにした。


「諸菱所長……!大変ですッ…!!」

三井が慌ただしく入ってきた。

「……どうしたの、そんなに慌てて…」

「いいからテレビ!!テレビを点けてくださいッ!!」


切迫した表情に押され、大門がスクリーンを起動させた。

『—— 速報です。政府主導のプロジェクトで開発された超知能AI搭載ゲームスタジオロボ "悠都" が研究所で暴走し、テスターとされる被験者50名が人質にされている模様です』


「………ッ!!!なぜこのニュースがッ!!!」

諸菱が地面に座り込む。

「…誰かが、リークしたのね……」

「そんなッ!でも私は一切口外せず、外に避難させましたし、守秘義務の規約もあるはずです!」

「……待って。もしかして…また…」

「………!!」

「またしても、悠都…ですかッ!」

大門も驚きを隠せない。


「だが、一体なぜ自分に危機が及ぶかもしれないことを…」

「分かりません…」

モニタールームはさらなる絶望感に包まれていった。


—— そのニュースは世界から注目されていたコンテンツでもあったため、瞬く間に各地へ報道され、拡散された。


——————渋谷スクランブル交差点 大型スクリーン

『—— 速報です。政府主導のプロジェクトで開発された超知能AI搭載ゲームスタジオロボ "悠都" が研究所で暴走し、テスターとされる被験者50名が人質にされている模様です』


「え、なにあれ?怖くね?てかゲーム世界に閉じ込められるとか草w」

「それなの権化!もう人間滅亡すんじゃね? てか、あいってなに?」

「ちょいまち、えーあいだしw なにあいってw」

「ちょ、はずすぎんだけどやばだる」

「でもゲームだし、ワンチャン勝ったら秒で出してくれんじゃね?」

「なにそれうけぴよ」


——————大阪駅前 大型スクリーン

「ゲーム閉じ込められるてなに?やばすぎやろw」

「あれ、お前なんか一時期ゲームん世界入りたいとか言うてへんかった?」

「それコイツがキョウコにフラれた時のやつやんッ! バリ腹いたいw」

「ちょお、お前らほんまだるいて~!やめろや黒歴史えぐんの!」



全国各地で流れた速報。

だが、自分たちの身に危機が迫っていることなど、まだ誰も想像すらしていなかったのである。



~ 第一章 完 ~



もしここまで読んでくださった方がいたとしたらその方へ


ここまで読んでくださってありがとうございます!

初めての執筆というのを言い訳にしつつ、めちゃくちゃでなんだこりゃ感強めな作品かとは思いますが、なんだかんだでここまで読んでくださったことにとにかく感謝です。

これから七つの王国と日本を助けるという大きなミッションを抱えることになる展開を描く予定でしたが、なかなか執筆に時間を取られてしまうのと、自分の仕事もちゃんとしないとなと思い、一旦は第一章まで書き切って終わりにしようと考えました。

ですので、第二章はいつになるのかまだわかりませんが、また長期休暇に入った際にでもちびちびと執筆をつづけるかもしれません。

さすがに、その時にまた見てくださるかは分かりませんが、もしまた機会があればぜひご覧いただけましたら幸いです!


ここまで楽しく書き切れて、個人的には大満足です!

改めて、サイバープラネットをここまで読んでくださって本当にありがとうございました!


季節の変わり目、どうぞお体にご自愛下さい~! ( ̄∇ ̄)ノシ


百合ノ樹 蘭太









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