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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第3章 最優秀ギルドアワー編
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14-C スライムに負けた神様の行方

「あは、あはははっ。それでスライムに居場所奪われたってワケ? 怪物貴族テラス・オブ・ノーブルでも無い、普通のスライムに? カミサマ、だっさぁぁ」


 指を差し、腹を抱えているのは巻貝のような角を生やした魔族シェパナ。

 気絶から復帰した私は馴染みのパン屋を訪れ、今日の出来事を彼女に話していた。

 元来この巻貝角女の事は苦手な部類に入るので、会いたくもないのだが、とある理由の為渋々訪れたのだった。


 私はそんな彼女をジト目で見つめながら、溜め息を吐く。


「取られた訳じゃ無いわ、一時的に貸しただけ。それにあのスライム、ヒトに擬態出来るんだから、普通なんかじゃ……」

「元魔王軍四天王のワタシからしてみれば、擬態出来るかどうかなんて関係ないわ。大方、スライムの核が見えない〜、とかで負かされたんでしょう? あーあ、ワタシも店を閉めてアナタの滑稽な姿を見れば良かった」


 私をバカにしているのだろうが、指摘は正にその通り。

 私に化けたスライムに負けた敗因は、スライムを動かす核が肌や服に隠れてどこにあるか分からなかったのだ。

 滅多刺しぐらいスライムを刺したのに、終ぞ見つけ出す事が出来なかった。


「それで、金欠の女神様、お店まで来て何の用かしら?」


 図星を突かれ何も言い返せずにいると、シェパナはそう問いかけて来た。

 不思議そうに、怪訝そうに、何を言われても意志を変えないぞという小憎たらしい表情を浮かべている。


 成功確率は半々といったとこね。

 そんな風に心で思いながら、私は本題を切り出す。


「ねぇ、巻貝角女。しばらくここに泊めなさい」

「はい?」

「私はね。スライムに負けっぱなしなのが自分で許せないの。だから、倒せるようになるまで家に戻るつもりはない!」


 神としてか戦士としてか、あるいは両方か私のプライドがそう叫ぶ。


「でも、残念な事に宿に泊まる金も無ければ、騎士団屯所の牢屋も出禁。私は考えたわ。ヒトに迷惑を掛けず、屋根がある最低限の場所を。そして思い出したのがココ。貴方に迷惑を掛けても、私の良心が痛まないしね。もちろん、リベンジを果たすまで泊まり込みで働いてあげるわ。もはや感謝しなさい」


 苦渋の決断だった。

 野晒し生活を取るか、シェパナの小言を取るか。どっちも嫌だけど、背に腹はかえられず、後者を取った。小言は無視できるが寒いのは無視できない。


 しかし、


「ワタシ、困っているヒトを見ると、蜂の巣投げ付けて、泣かせるって決めてるの。だから、ごめんなさいね」


 答えはノー。

 シェパナは申し訳なさそうな顔をしつつも、嘲笑うように口を歪め、侮蔑的な瞳で私を見る。


 コイツ。マジ、コイツ。

 パン屋の店員になっていようが、魔王軍で四天王に上り詰めた悪い女なのだ。こんな奴に頼んだのが間違いだった。


 その後も粘ったが撃沈。

 暖簾に腕押し。何一つとして私の言葉は彼女に響かなかった。


 諦め掛けた、その時。不意に店の扉が開いた。


「「いらっしゃいませ〜」」


 一度みっちりバイトをしたからか、今日は店員でも無いのについつい定型句が口から滑ってしまった。

 その事に、シェパナに笑われつつも、その客に目を向けると見知った顔があった。


「あっ、ベルナデッタ」

「おおっ、これはこれはクラリム殿ではないか」


 つい先日、道場騒ぎを起こした胴着の男だった。


「すまぬが、そっちの名前は師を思い出す故、ケンザブローとお呼びくだされ」

「ごめんごめん。ベルナデッタの方が印象深かったから……で、こんなパン屋に何しに来たの? パンなら、他の店で買った方が美味しくて安いわよ」

「カミサマ〜? 今の発言は今期分の給料を捨てると捉えていいのかしら?」

「ベルーニャ最高統括魔王リ・デモーネ・エグゼクティブ・オフィサーのパンこそ至高にして唯一無二! シェパナ店長閣下万歳! こら、ケンザブロー! 借金してでもパンを買い占めなさい!」


 いつぞや作ったギルドは稼働しておらず、私の収入源はこのパン屋のバイトのみ。

 悪口一つで給料剥奪など、労基ものだが、そんなものこの世界にはないので、この女の匙加減。そして、この巻貝角女はやる。無給にさせる訳にはいかない。


 私の鬼気迫った表情に圧倒されたケンザブローは財布を開き、値が張ったパンを一通り買った。


「……リンドー殿とクラリム殿へのお礼にと思っていたから、良いのは良いのだが……それはそうとクラリム殿はどうして、パン屋に?」


 売れ残っていたパンが捌けてホクホク顔になったシェパナを横目に、私は今日の朝の出来事をケンザブローにも話した。


「なるほど、なるほど。強きスライムに、リベンジと。武闘家の端くれとしては、胸が躍るような状況であるな」

「ねぇ、ケンザブロー。貴方、スライム一撃で倒せる方法とか知らない? 出来るだけ楽に習得出来るの限定で」

「いや。クラリム殿、こういうのは一から修行に励み一人前の強者となり、リベンジを果たした時にこそ、一定の幸福を得られるものだ。楽をしようとしては勿体無い」

「…………貴方が、それ言う?」


 リンドーが主原因とはいえ、この胴着の男も己が目的の為、師匠を疲労困憊にして倒したのだ。私も方向性は同じなので文句を言われる筋合いは無い。


「我が魔拳であればスライムなど木っ端微塵にする事は可能であろうが。気が遠くなる修行を果たせねばならんし」

「無理ね。私に修行を成し遂げる精神力は無いわ!」


「ううむ……そうだ、辻斬り同好会の他の面々ならば、何か良い方法を知っているやもしれん」

「あー、なんか言ってたわね。実力者の情報共有をする為に参加してたんだっけ?」


 あの時は聞き流したけど、どんな集まりだ。

 同好会の名称も、所属している人物もヤバい予感しかしない。


「丁度、今晩、その会合があるのだが、着いてこられるか?」


 正直、関わり合いたくないなと思っていたのだが、他に良いアイデアも寝床も無いので、その手を取る事になった。


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