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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第2章 果汁100%! パン屋と四天王とワイバーン~至高の一品を求めて~編
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12-J 『前魔王軍四天王 シェパナ』 エピローグ 

 四天王シェパナによる一連のワイバーンを絡めた騒動について。


 街に凶暴なワイバーンを放ち、街長を人質に取るといった大きな事件だったのだが、終わってみれば大きな被害が出たわけではなかったので、街長の権限で、闇に葬られた。

 ただ一人四天王シェパナの部下であった老人レンブランは街長を傷付けたという事で、騎士団により連行されたようだった。

 なんだかんだで、私は街長と会った事がないので、器がデカいのか、何も考えていないだけなのかは分からないが、魔王軍が近くに来ても即座に対処に動かないらしいから、あまり信用の置ける人物では無いだろう。



 次、パン屋ちゃんによる公開調理について。


 公開調理は一時の休憩を挟んだものの、卵からワイバーンが生まれる瞬間を二回も見せた事もあって話題を掻っ攫い、ワイバーンサンドは爆売れし、挽回は上手く行ったようだった。

 一週間くらい猫の手も借りたいという事で、私もリンドーも駆り出され、店の売り子として働く羽目になったのだった。


 ある程度落ち着くと、パン屋ちゃんは魔王城に帰らないと言い帰った。

 後を任されたのはイケすかない巻貝角女ことシェパナ。

 街長に許された彼女は、そのまま店長としてウルメラで過ごすらしい。


 新たな看板商品、ワイバーンサンドを永続的に販売する為、リンドーとシェパナで魔法の共同研究をするようだが、詳しく聞いても分からないので、聞かなかった。

 ワイバーンで、養鶏場的な事をするのだろうか。世話係として私にお鉢が回ってこないことだけを祈ろう。



 ま、そんなこんなでハッピーエンドといった所だが、私にとってはあまり関係ないので、それ以上の感想はない。


 それよりも、もっと大事な事が私にはあった。


「ふっふっふっふーー!」


 ストーナの家。

 皆んなが集まるリビングで私はワザとらしく高笑いを奏でる。


「なんだァ? クラリム、気持ちの悪い笑い方しやがって」

「きも、気持ち悪いって、慈悲の女神になんて無礼な! いいえ、今回ばかりは、その暴言を水に流しましょう。これこそ正に慈悲、私はなんて寛大なのでしょう」


「ストーナ、あの約束覚えてるでしょうね」

「あァん? なんの話だァ?」


「使者の報酬! 忘れたとは言わさないわよ!」


 そう今回の騒動、私にとっても、ご褒美があるのを忘れてはいけない。

 私がリンドーと一緒に魔王軍の拠点に使者として出向くっていう話をストーナに持ちかけられた際、取引として私に成功報酬を約束させたのだった。


 その額、なんと五百万マニエ。

 ちゃんと働いてもすぐに手に入らない程の高額。


「そォーだったな。ちょっと待ってろ」

「リンドー! すこ〜し、待ってなさい。立て替えてくれえたお金、ドンと返してあげるから。そうね〜、百万ぐらいは出しちゃうわよ〜」


 ストーナが自室へ戻っている間に、のんびりと本を読んでいるリンドーに宣言する。


 流石に今から入ってくる全額返したら、私が遊ぶ金が無くなるので、そんな事はしない。

 払えと催促されていないので、こういった事も出来るのだ。


 楽しみに待っていると、ストーナが戻ってきて、お金が入っている袋をテーブルの上に置いた。


 トスッ。

 軽い音に嫌な予感が走り、恐る恐る開ける。


「えっ、少なくない? 約束した額と全然違うんですけど」

「そりゃあ、生活費差し引いたからな。あと、未払いの罰金や税金とか。今まで色々立て替えてたから、こんなもんだろ」


 絶句。

 五百万どころか百万にも満たなさそうな金貨の袋。


 私が知らないだけで、ストーナにも借金をしていたようだ。

 信じられないと掴み掛かろうとしたが、ストーナの威圧の瞳が私を縮こませた。


「私、ヒトに迷惑掛けないように生きてきたけど。生きているだけで、お金って掛かるのね」

「被害者ヅラしてっけど、罰金は騎士団屯所不法占拠や許可を得ずワイバーンの卵を運び入れた事、それと街に対する脅迫加担……」

「もういいわ。私、過去は振り返らない主義なの」


 そういえば、お金無いからって騎士団屯所に入り浸ってた事あったけど、それがこんな形で帰ってくるなんて。


「なんでもタダにはならないものなのね」


 そんな風に黄昏ていると、側に一人の男が立っていた。


「それで、クラリム。いくら返してくれるんだ?」


 変な魔法使いが借金取りとして私の前に手を広げる。


 そんなお金は無い。


「いやー、あのー、うん。もう少しで、うん」

「そうか」

「そうよ、あははは」


 笑って誤魔化す。

 何事も笑顔、笑顔さえあればヒトは前を向いて生きれるはず。

 そしてそれは神も同じ。


「これはアルバイトの予定表だ。特に人手が足りなく高賃金を獲得できそうな仕事をピックアップしておいた。借りて返すと言った以上、残りはこれで稼げ」


 どうやら、笑顔はゼロマニエだったようだ。



 追い出されるように私はバイト先へと出勤した。


「あら〜、あらあらあら。どこの誰がワタシに扱き使われる哀れな子羊になると思ったら、慈悲の女神様が降臨してくださるなんて」


「帰る」


 リンドーが指定したバイト先は、パン屋だった。

 そしてそこにいたのは、巻貝角女。


「いいのかしら〜。あんまり我儘言ってると、またアンクーラの巣に卵を取りに行かないと行けなくなるんじゃないのかしら?」

「ぐぬぬぬぬ。し、仕方ないわね。慈悲の女神として困っている哀れなヒトに手を貸してあげるわ」


「はい?」

「だから、今回だけ慈悲をくれてやるって言ってんの。さっさと仕事始めるわよ」


「シェパナ店長閣下。どうか、この愚かな金欠の女神を働かせて下さい」

「は?」

「ウチの最初の仕事は素直な心と言葉遣いを磨く事なの。こんな簡単な事も言えないようだったら、お客様に出すパンを任せられないわ」


「さんはい」


「シェパナテンチョウカッカ。ドウカ、コノオロカナ、キンケツノメガミヲ、ハタラカセテ、クダサイ」


「よく出来ました〜。えらいえらい。さぁ、一緒にベルーニャ最高統括魔王リ・デモーネ・エグゼクティブ・オフィサーの為に頑張りましょうね」


「……パン屋ちゃんの肩書きどうなってるのよ」


 出会った時と憎たらしさは一切変わらないが、どこか楽しそうにするパン屋の店員の後に付いて、私はバイトを行うのだった。


 そこから一週間、前に私がパン屋ちゃんに提案した猫耳メイド服での接客が待ち受けている事を、その時の私は知らなかった。



 そういえばギルド作ったけど、名前も決めてないな。

 まぁ、また使う事があれば考えよう。

 お客さんも来ないし、平和だし、お金もちょっと返せたし。

 ま、当分、何も無いわよね〜。

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