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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
序章 『変な』魔法使い、異世界へ
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2-C 魔王面接

 そして時は戻って、私が妄想の手紙を出し終えた頃。

 魔王と屋根が魔法レーザーによって吹き飛ばされた魔王城の一室にて。


「どうやら、新魔王候補者が来たようですな。ワシは迎えに行って参ります故。お二人は、どうぞ、そのままに」

「あぁ」


 私が虚空と向かって話をしている間に、新魔王の面接の準備はテキパキと進められていたようで。

 そう言い残して、緑肌の老人べシュッド(故魔王の側近らしい)は、私と魔法使いの男を残して、部屋を出て行った。


「あんたねぇぇぇえぇ! 黙って聞いてりゃ、ヒトのことを破壊神だなんだ、滅茶苦茶言って! 魔王を倒したのはアンタでしょなんで、全部私の所為になってんのよ!」


 爆発。魔王軍がいる間、黙っていた分溢れ出す想い。

 まるで我が家のように寛ぎながら、テーブルに置かれた紅茶の匂いを堪能する魔法使いの男。


「大幅にズレた事は言っていないだろう。俺だろうとお前だろうと、ここには魔王ターゲットを倒しにきた。俺は、お前に命令されてやっただけで、全責任は神であるお前が取るべき事柄だ」

「最初のお願い以外全部無視するのに、よくもまぁ、ぬけぬけと」


 もはや、この男に命令出来る程、信頼関係掴み取った記憶も時間もない。

 本当に最初に世界を救ってくれというワードくらいだ。

 あんな、無茶苦茶な魔法で魔王を倒すなど微塵も思って無かったが。


「なんにせよ。奴らが話を聞いてくれたのは僥倖だった。べシュッドはもちろん、他の魔王軍の者が、もっと激情していたら、危なかっただろう」

「……それにしてはリスキーな脅しね」


 決戦兵器ヴィナッシュ。

 この時点で魔法だと言い張っているのが謎だが、魔法らしい、コレは魔王を消し去った程の高火力のレーザーを放つ。

 そんな物をチラつかせて、交渉? を行ったことを平然に言うコイツはどうかしている。それを私に押し付けているのもどうかしている。


「脅しが効くのはマトモな奴だけだ。ネジが外れる程感情を揺らしている奴には、何を言っても聞かないし、此方が剣だろうが決戦兵器だろうが持っていても、構わず、殺しに来るだろう。どちらにせよ、此方が決戦兵器を使えないという事実が分かっていたら、殺されていたのは間違いない。彼らの警戒心の高さに感謝するとしよう」


 私は、頭半分で話を聞いていたが、この言葉に引っかかる。


「へ? あの時、アレ使えなかったの?」


「単なる魔力切れだ。時間が経てば、使えるようになる」

「それってどのくらいかかるの?」


「一時間」


「一時間……って、嘘でしょ。まさか、あの場面から今まで、脅しが効かなかったら、死んでいたっての?」

「言っただろう。死ぬぞと」

「……その状況でよく、あんな態度でいられたわね。肝が据わっているというか蛮勇というか」

「そうか? 俺は命乞いをしているつもりだったのだが」


「……脅しと命乞いは向き合っても、イコールにはならないって知ってる?」


 衝撃の事実を知った上で、ここ(魔王城)で寛いでいる状況はどうなのだろうか。

 再装填は出来ているとはいえ、未だ敵地のど真ん中なのは間違いない。


 下手なことをして、串刺しにでもされたら、痛いどころの話じゃない。不死身とはいえ、痛いものは痛い。天界への緊急脱出が出来ない、この状態では大人しく助けを待つのが良いのだが、そうも言ってられない。

 この魔法使いの男も、頼りになる気がしないし。


 うん、ちゃんと面接官をして、サクッと新魔王を決めたら五体満足で帰してくれるはず。それに賭けるしかない。


「そもそも、魔王倒しに来た神様が新しい魔王の面接するっておかしくない?」

「おかしいと思うからおかしいなら、おかしいと思わなければいい。出会いが多ければ価値観は変わる。永遠にも近い時間を天界で過ごす神が人生観を変えるには良い機会だと思えばいい」

「いや、別に、私、人生観変えたいって思ってないんですけど。むしろ、一刻も早く帰ってダラダラ生活をしたいんですけど」


 コンコンコン。


 私達が滞在する魔王の一室への扉が音を立てた。

 そして返事をする前に現れたのは、緑肌の老人。

 来たと言うことは、面接の準備が出来たということだろう。


「今日の今日ですので、集まったのは未だ五名の上、その……何と言いますか、今一つでして。まだ魔王軍幹部など主力級もあまり帰ってきていませんし、もう少し待つべきかと思いますが」

「時間を掛けた所で、良い者が来るとは限らない。構わない、通せ」


 うん、この緑肌の老人(ヒト)が言いたいのはそう言う事じゃないと思うなー。

 あと、魔王軍重鎮みたいに振る舞うの、やめよか。


「……分かりました。それでは順番に通していきます」


 緑肌の老人が扉を開けようと扉に手を掛けようとした瞬間、扉が大きく開け放たれた。

 吹き飛ばされる緑肌の老人。一回転しながらも受け身をしっかりとってるのは、流石魔王の側近というべきか。

 それよりも、私の目に映し出されたのは筋肉巨漢。


「頼もう!!」


 この部屋の入り口は、見上げるほど大きな扉だったのだが、それに頭が当たりそうな大きさ。

 筋骨隆々の四文字が似合う肉体を見せつけるような服。額から飛び出るような角があるから、鬼かオーガだろうか。この世界に訪れるにあたり、一通り、資料で種族等の常識も入れたのだが、細やかな違いがあるのか、詳しくは分からない。


「貴様らか、魔王様をぶっ倒した強者と言うのは!」


 魔王軍きっての武闘派と言わんばかりの男はズンズンと此方に近づいてくる。

 私と魔法使いの男は横並びで、入り口に向かい合う形、面接官スタイルで座っており、その前にはちゃんと椅子があるのだが、この筋肉巨漢は一切気にしていないようだ。

 机を挟んで立つ筋肉巨漢。


「椅子が見えなかったのか? そこに座れ。座り次第、面接を始める」

「面接だと、何をヌルいことを言っておるのだ!」


 筋骨隆々の男は机を叩き、今にも魔法使いの男に触れそうな位置にまで顔を近づける。


「魔王の座など、力あるものが座るものだろうが、つまり、このオルドバラン様が座るものである! そうであろうベシュッド!」

「それは……そうですな。今残っている魔王軍では……オルドバラン様が強者であらせられます」


 あっ、そんなに強いんだ。


 座っていた椅子を五回程、後ろに引く。

 勝手に序盤のボスぐらいかなって思ったから、少し余裕を見ていた。


「そうか」


 魔法使いの男は、静かにそう呟く。

 相変わらず動じないな、ホント。


「俺ばかりに注目している所悪いが、魔王を倒したのは俺ではなく、そっちの破壊神だ」

「なにぃ?」


 筋肉巨漢の獲物を睨むような視線が私を捉える。


 こっちに振るなぁぁぁぁ。


 絶対的強者の眼光。

 蛇に睨まれる蛙の気持ちが分かる。彼らは、蛇と相対する時、逃げの一手を打つべきなのだが、睨まれると体の神経の一本一本が震え、怖いという感情が逃げるという理性を壊すのだ。


「この小童が神で、魔王様を弑したと? 笑わせてくれる。ならばその実力を試してやろう!」


 腕を振り回す筋肉巨漢。


 ムリムリムリムリムリムリムリ。


 あんなの当たったら、体が上下に分かれちゃう。

 私は必死に頭を左右に振り、視線で魔法使いの男に助けを求める。


「待て、面接で暴力を振るえば即失格だぞ。魔王になれなくてもいいのか?」


 すっごい常識的な一言。

 そんなの分かった上で暴れようとしているのではないだろうか。


「な、なんだと! それは困る」


「ならば、さっさと座れ。時間が掛かっては、後ろで待っているやつに迷惑だろう」

「それもそうか、分かった」


 今にも飛びかからんとしていた筋肉巨漢だったが、魔法使いの言葉で、指し示された椅子に、ちょこんと座った。


「……めっちゃくちゃ素直じゃん」


 あーあ、魔法使いのペースに巻き込まれちゃてるよ。さっきまでの威勢はどうした。

 そこからはとてもシンプルな面接が行われた。


「オルドバラン=ヲーラ=ロンドランである」

「魔王軍随一のパワーが自慢だ!」

「この世で最も強い奴が魔王になるのは道理であろう」


 名前、長所、魔王の志望動機。

 メモも用意していたのだが、ビックリするくらい聞く事が無かった。

 魔法使いも、それ以上に聞くことが無かったのか、緑肌の老人を介し筋肉巨漢を外へ出した。


「どシンプル。もういいじゃん、このヒトで」


 私は筋肉巨漢が面接室を出て行ってから、感想を呟いた。

 まぁ、きっと実力はあるけど軍の上に置くにはちょっとアホっぽいから選ばないで欲しいってとこかな。 


「……次」


 次に現れたのは長い袖の服を着た女だった。


「はぁ〜い、よろしく」


 言葉の軽やかさと別に死んでいるように顔色の悪い。隣の魔法使いのように表情筋が機能していない。


「私はカナラワヘビ族のシエラ。魔王を面接で決めるなんて、誰がそんな面白いことを決めたんだと思ってたけど、貴方がそうだったのね」

「あぁ」


 いや、表情どころか口が動いていない。

 よくよく見れば、角や尾といった魔族的外観が無い。魔族じゃない? 待て、探せ、口上的にどこかに蛇がいるはず。

 髪が蛇! 違う。下半身が蛇! 違う。口の中が蛇! 違う。

 ラミアやナーガでは無い。どうしよう、今までに無いパターンだ。私の神様プライドに傷が付く。


「残念、私はこっちよ」


 顔色の悪い女は私のキョロキョロとした視線に気づいたのか、右腕を持ち上げると、袖の下から蛇が顔を覗かせた。

 そうきたか。

 右腕が蛇の女? いや女の殻を持ったヤドカリのような蛇?


「ふふふ、さぁどっちかしらね」


 どうしよう。私の心の中が読まれているみたい。

 何にせよ、蛇の性格のような人物である。

 魔法使いの男は私が面接に参加せず遊んでいることに少し表情を固くしたが、何も言わず、面接を続けた。


「何が得意かって? そうねぇ。特に無いわ。別段、強くないしね」


 なんでもいいから言えば良いのに。


「私はね、魔王なんてどうでもいいの。でも魔王になったら、この城に眠ってる財宝が使い放題なんでしょ。だから応募したの。もし魔王になれたら、死ぬまで遊んで暮らすだけ。政治だとか、そういうのは好きな奴がやればいいじゃない。必要なら、お金を積んで良いヒトを雇うわ」


 良い性格だ。私も同じ立場なら同じことをする。

 楽が出来るならお金を積んででも楽をする。素晴らしい。

 それから二、三個リンドーが質問を飛ばし、蛇女は出て行った。


「問題児でもなく、サバサバ系。常識もありそうだし、好感触かな。いいんじゃない、このヒトで」


 さっきの筋肉巨漢は、絶対何かやらかす。

 そんな奴を王に戴くより、今の蛇女の方がいいだろう。


「……次」


 三人目。

 笑顔が似合いそうな青年。

 今の所、見た目に特徴なし。

 魔族的特徴を探すが、見当たらない。


「ベードラック王国出身、元勇者のルクスだ。よろしく頼む!」


 どうやら三人目にして、雲行きが怪しくなってきたようだ。


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