11-G 『神の一皿』エピローグ
赤と白を独占したような彩りの神クラリムが、大衆食堂『胃袋の盾』の女将アイギスと別れてすぐ。
アイギスは背負っていたキャリーバッグ程大きな鞄を下ろした。
「行ったよ。そろそろ出てきたらどうだい」
アイギスはそう鞄に語りかけると、鞄のチャックが独りでに開き始め、腕が突き出てきた。
「それにしてもアンクーラの巣で調理させようなんて、よくもまあそんな無茶苦茶なことを思いつくねぇ。ま、それをやってしまう、わたしもわたしだけどねぇ」
「それよか、あの子か。見るからに非力そうな子がアンクーラ相手に時間稼ぎを成し遂げた。そっちの方が驚いたねぇ」
「アンタは、あの子がアンクーラを足止め出来るって本気で思ってたのかい?」
鞄から全身を取り出した、濃紺ローブの男は、アイギスの問いにすぐさま、こう返した。
「クラリムは変わっているからな。どんな事でも、やれると思ったらやりきると思っただけだ」
「アンタがそれを言うのかい……それにしても、雑談で卵取りに行っているって言っただけで、こんなことになるなんてね。こういう無茶な注文は今回だけにしておくれよ。常連さん」
「善処しよう。あと、アイアスにも礼を言っておいてくれ。あの盾を鞄に入れていてくれたのは彼女なのだろう。助かった」
「はいはい。家宝を勝手に鞄に入れておいた事は大目に見てやるよとするよ。ただ、仕事をサボって雑談をしてたってのは許せないがねぇ」
「このまま走って帰るけど、どうする?」
「あぁ、頼む」
濃紺ローブの男は、再度鞄の中へ入ったのだった。
◇
「たっだいまあああああ!」
途中猛スピード女将さんに追い抜かれつつも、なんとか家まで辿り着いた私は、開けっ放しになっていた玄関から家の中へと入った。
本来なら申し訳なそうに入るものかもしれないが、今の私は神の一皿を手に入れた事で、興奮し細かいことまで頭が回っていなかった。
「皆んな聞いて!! 今日のご飯はなんと! あのアンクーラの卵で作った『神の一皿』を……」
意気揚々と語る私の目線はダイニングテーブルの上に乗った、ブツに注目し、言葉が切れた。
何故なのかと言うと。
私が手に抱えているオムレツと同じものが、食卓に並べられていた。
三人が三人とも、私が置いたオムレツの皿を注視する。
「えーと、そのー、おかわりいる?」
この話に教訓があるとするならば、
いくら美味しくても、サプライズで料理を振る舞うなら、定番の料理は外す方がいいということだろう。




