10-G 最初の依頼の報酬
翌日、ウルメラへと向かう帰りの馬車の中。
「結局、アレは妖精でいいの? それとも幽霊? そこのとこどうなんですか? 大事な所でいなかったストーナさん」
「知らねぇよ。リンドーがアタシのとこに来るまでぶっ倒れてたんだからよォ。なんかよ、月が青くなった瞬間眠気が襲ってきやがって、そのまま……逆に何があったんだよ」
「さぁ?」
「オイ、ちゃんと言えやァ」
「そう言われても、あんまし分かってないのよねぇ。でもこれってハッピーエンドってことよね。モーガンもなんか元気になってたし、満足したみたいで、ちゃんと報酬ももらえたし、帰りは馬車賃も奢って貰えた上に、オマケにオレンジも一杯貰ったし」
「これ、ミークの」
「あー、はいはい。ちょっとは分けてね」
不思議な事が起こり、不思議な事同士で解決して大団円。
強いて言うなら。
「……何も出来なかった」
私はストーナが踊っていると思っていたので、嘘を押し通すつもりだったのだが、結局本当に妖精が現れた訳で、嘘を吐く暇もなく、モーガンは勝手に幸せになった。
「はぁ、なんか微妙ね。私達が依頼を受けなくても、きっと妖精は現れたんだろうし……」
「俺はそうは思わない」
隅で本を読んでいたリンドーが呟いた。
「俺だったら、モーガンが倒れた時、安静にさせる為、寝かしつけることしか出来なかった。そうしていれば、きっとあの妖精……いや、モーガンの大切なヒトと再会することも出来なかっただろう。クラリムが嘘でも、モーガンをその気にさせたから、あの奇跡は起こった」
本を閉じ、リンドーは私を見つめる。
「だから、よくやった」
褒め言葉。馴染みのない、その言葉は私のウジウジとした気持ちを吹き飛ばした。
「こわっ、褒めないでよ。柄でもない」
そう強がるのが精一杯。
変に反応すると頭がこんがらがる。
「ま、なら、今回のエムブイピーは私ってことよね。肝心な所でストーナは寝てるし、リンドーはいなくなるし、ミークはミークだし。ということで、この報酬は私の物ね」
モーガンと別れる際、最後にリンドーが受け取っていた箱を抱え込み、そっと蓋を開けた。
「……ナニコレ」
「オレンジの苗だ」
「なんで!」
「モーガンが報酬で提示した金は、モーガンが死ぬ前提で用意されたものだった。モーガンが生き続けることを決めたのなら、受け取ることは出来ない」
「そんなぁぁぁ。私のお金ぇぇぇ〜」
「エムブイピー、帰ったら仕事探せよ」
「オレンジ、一個だけ、あげる」
新しく作ったギルド、その最初の依頼は頬に押し付けられたオレンジいくつかと、苗という物が報酬となった。
ストーナに詰められた私は、結局、近くの果物屋でバイトして、家にお金をいれることとなったのだった。




