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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第2章 果汁100%! パン屋と四天王とワイバーン~至高の一品を求めて~編
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10-E 願いの叶え方

「遅い」


 気付いてからはダッシュでリンドー達の元に帰ったが、いつもより冷ややかな瞳と声で叱られた。平謝りしつつ、水筒に入ったオレンジジュースを手渡し、休憩に入った。


 私は遅くなった言い訳とばかりに、先ほど聞いたばかりの今回の依頼の背景を語る。

 そして、どうしても抑えきれなくなった思いを吐露した。


「で、さ。慈悲の女神的には。やっぱりちゃんと妖精を探してあげたほうが良いかなって思うんだけど……どうかな?」


 作戦を考えたリンドーにも、朝から練習しているストーナにも、一応木を切り倒したミークにも悪いなと思いつつ、正直に自分の思いを伝える。

 彼の心からの願いに、私も誠意を見せたいと思った。嘘の妖精をモーガンに見せるのは嫌になった。彼にもう一度、本物の妖精に会わせてあげたくなったのだ。


 一人ずつに視線を向ける。


「そォだな」


 最初に反応したのはストーナだった。


「アタシもクラリムの意見に賛成だァ。モーガンの気持ちに添うってのもあるがァ、最初っから、妖精がいねぇって決めつけてんのが気にくわねェ。他の誰もが見つけらんねぇかもしれなくても、アタシ達なら見つけられるかもしんねぇだろ」

「……ストーナ」


 力強く、頼りになる言葉に胸が打たれる。

 そうだ。今までの冒険者がなんだ。こっちは、神と変な魔法使いとミミックと騎士団長だ。

 そんじょそこらのパンピーと一緒にされては困る。


「わたしも、妖精、見たい」


 ミークは、ただ感情を流す。

 透き通る良い考えだ。私も見たい。

 多数決ならこれで決まりだが、私は最後の一人に向き合う。

 この男が私の考えを伝えた所で大きく動くとは思わないが、これは気持ちの問題。なんとなく、皆んなの意見が揃わないと見つけられるものも見つからないと思った。


「リンドーは?」


 リンドーはただじっと湖を見つめていた。

 聞いていないのではなく、ただ深く物を考えているように、遠くを眺めている。


「俺は偽りでも実際に妖精を見せ、モーガンの願いを叶える方が良い行いだと考えた。叶わぬ夢を追い続けるのは、精神にも体力的にも疲弊する。今日で諦めると言っているが、ヒトに口に出すほどの願いをそう簡単に忘れることは出来ないだろう」


 抑揚の無い主観的感情が入っていない、機械のような淡々としたセリフだった。


「願いは残りの人生における悪性の腫瘍となり、果てた後も未練となり、モーガンに付き纏う。それは辛いことだと俺は思う。だから、この願いの叶え方が間違っているとは思わない」


 リンドーの結論は変わらない。

 モンスター(ミーク)のようにヒトの気持ちが分からないという訳では無い。

 ただ、リンドーにとってそれが最適解であるから、彼は答えを変えないのだろう。


 この依頼の対処法にはきっと答えがない。いるかも分からない未確認生命体が見つかれば、簡単な話だが。見つからないから未確認生命体なのだ。それが常道の策にはなり得ない。


 だから答えがない。


 リンドーのやり方も、私の感情的な想いも、どちらも間違っていて、どちらも正しい。

 ただ、私にはリンドーのやり方は少し寂しいと思った。


「あのねー、そんな消極的なのはどうかと思うわよ。前の世界に妖精いなかったの? 自分は一度も見たことないから、そんなに及び腰なの? ふーん、アンタ、妖精見たことないんだ。へぇー、そう……()は見たことあるけどね!」


 だから、私は神として言葉を発した。

 この世界にはいるかは分からない。でも、他の世界にはいたのは事実だから。

 リンドーは私の煽りに反応したのか、こちらに振り返る。


「本読むの好きみたいだけど、アンタって本で読む幻想だけで満足するわけ? 今の状況を思い返してみなさいよ。今回、妖精を見たってヒトがいて、妖精が現れるって伝承がある青い月の夜が目の前にある。これってチャンスじゃない? いるかいないかじゃなくて、妖精を見るチャンスなのよ! 自分で手に入れた知識と本で得た知識は別物って知ってた? 知ったかぶりの魔法使いさん」


「…………そうだな。俺も妖精を見てみたい、とは思う」

「なら燻ってないで動きなさいよ。献身って柄じゃないんだから、依頼がどうこうじゃなくて、好きなようにしなさい。依頼はこの慈悲の女神である、私の幸運がなんとかしてくれるわ」


 このリンドーって男はメチャクチャだが、良い奴なのだ。

 モーガンの願いを叶えるのは大前提で、その上で確実な方法を取りたがる。

 だから、彼自身の想いは介入しない。介入出来ない。


 なら、無理矢理抉じ開ける。

 これが絶対に正しいとは思わない。全部上手くいかなくて、リンドーの言うようにしておけば良かったって思うかもしれない。

 ただ、今はこうしたいからするのだ。


「分かった。だが、このプランも捨てる訳ではない。ストーナ、水上での踊り練習は無しだが問題ないか」

「あぁ、やってやんよォ。任しやがれ」


「ミーク、まだ木を食べれるか?」

「うん、よゆー」


「クラリム、紐をちゃんと結べよ」

「分かってるって!」


「なら、さっさと筏を作り切って、妖精探しをするとしよう」


「「「「おーー」」」」


 私達はオレンジジュースを飲みきり、作業に戻るのだった。

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