7-A びっくり? ドッキリ! モンスターハウス(仮)
カンカンカン。
天井から聞こえる金槌の音。家の修繕を行なっている棟梁のものだろう。
まだ、屋根は完全に塞がっておらず、太陽の光が直接部屋の中に降り注ぐ。
この家に住んでから雨が一回も降っていないのが最大の幸運だった。部屋の中は徐々に片付けているものの、雨が振られたら一溜りもない。
つい数日前まで、金策に走っていたのが嘘みたいに平穏だった。
ストーナは仕事。騎士団長なのだ。そりゃあ、忙しいのだろう。例の植物型モンスターを育成していた男や、モンスターを解体出荷していたクソ組織の件やらの後始末に追われているらしい。
一切手伝う気はないので勝手に頑張って欲しい。
もう一人、トラブルをロードロラーで粉砕するような男、リンドーは街の探索をすると言って以来、帰っていない。あんまりちゃんと覚えていないが、もう丸一日は立つだろう。
そう簡単には死なないと思うので放置している。
借金は立て替えただけだから、返済の目処を付ける為、仕事を探せと言われたが面倒なので無視。やる気が出たら、考えることにしている。
「平和って、いいわよね〜」
ということで、今家にいるのは二人だけ。
二人はテーブルを挟みグデっと座っている。机の上には大きい箱も。
赤と白を独占したような印象を持たせる慈悲の女神こと、私。
と。
「おなか、すいた」
世紀の食いしん坊ましーん、ミミックのミーク。
白髪短髪やら金平糖みたいな髪飾りはいつもの通りだが、首に銀のネックレスが見える。大部分は服で隠れているが、どこで拾ってきたのだろうか。
空腹を訴えながらも、ミミック(もう一つの体)はモグモグと口を動かしているのは気のせいだろうか。
ミークねぇ。こう普通に座ってると、普通の女の子なんだけど、ミミックなんだもんねぇ。
なんでミミックが普通にいるんだろう。いや、まぁリンドーの魔法の効果なんだろうが。リンドーの魔法も訳わからないけど。
この手の口下手っ子とコミュニケーションを取るにはメチャクチャ構わないとダメなのよねー。
「ねぇ、ミーク」
「?」
「なにかしたいことある?」
「ごはん、たべたい」
「それは無理。私、料理したことないから。ストーナが帰ってくるのを待って。どうしてもっていうなら、棟梁に作ってもらって。あのヒト、見かけによらずメチャクチャ料理美味しいから」
このまえ、家から持ってきたお弁当を分けてもらったら美味しかった。
包丁捌きが格段に上達して帰ってきた娘さんと一緒に作っているらしい。
「他には?」
「ない」
無いかー、せっかく暇なんだし、なんかすればいいのに。
まぁ、私も無いから聞いてるんだけど。
それにミミックの体じゃなくてヒトの体あるんだし。
「ミークはヒトになりたかったの?」
ふと、思ったから口にだす。
ミークはリンドーに魔法を掛けられた時から、その白髪の少女の体を気に入っていた。その時は物珍さとかで人間形態を維持しようとしたのかなと思ったのだが、それは少し変な気がした。
ヒトを喰うミミックがヒトになりたいと思うものだろうか。
「たぶん」
案の定というか、期待外れというか。
ミークは首を傾げた。
「どうして?」
「こうするのが、好き」
こう、とはなんだ。
その座りながら、クネクネと動かしている運動のことか、それともバタつかせている足のことだろうか?
ダメだー。リンドーとは違う意味で何考えてるか分かんない。
このまま暇つぶしの会話を続けようかなと思っていたが、話を繋げようとしないヒトと無理に話すのはシンドイので、最後に一つだけ疑問を投げることにした。
「ところでさっきから何食べてるの?」
「食べてないよ」
口を広げ歯を見せる人型ミーク。
うん、何も食べてないのは知ってる。こっちじゃない。
「あっちは?」
「肉」
「肉かー…………ちょっとぺってしてみてくれない?」
神としての直感が、ミミックが食べる肉ということで、嫌な想像を容易に連想させたのだ。
テーブルに乗っていたミミックは、私たちの前に来ると、私たちの目の前にソレを吐いた。
ゴロッ。コロコロコロ。
「……」
縦長の球体の下方部に付く円柱。
金色の髪に白のベース、そしてそれを彩るように赤の液体付着している。
眉、瞼、睫毛、鼻、口は、見慣れた位置に配置され。エレガントなチョビヒゲは彼の個性と言わんばかりに張りがあり、型を崩していなかった。
「首首首首首首首首首首首首首ぃぃぃ!!」
椅子を思い切り後ろに倒し、針を踏んだように立ち上がる。
指が勝手に上下し、甲高い声が生まれ出た。
「私、ホラーダメって言ったよね! ちゃんと聞いてた?」
「きいてない」
「そうだった! ソレ聞いてるのリンドーだけじゃん! は? はっ! 首! 生首! 打首じゃん、えっ、首ってことは胴体は……」
「ゲプッ」
「食べたじゃん。もう食べて消化しちゃってるじゃん! 無いよ、首から下無いよ! 首から上残ってたら最早証拠だよ! リバースさせる前に全消化して欲しかったよ」
「クラリム、おちついて」
「落ち着く? このもう殺らかしちゃったYOの状況を見て? モンスターなんで、とりま一回許してくださいって自首する? いやいやモンスターってバレちゃダメじゃん!」
「そうですぞ、ご婦人、過度な大声はその美声を痛めますぞ」
ミークと話していたのに、何かが私とミークの会話に割り込んできた。
ギギギ、と視線を斜め下に下ろす。
血と思われる赤の液体の下、首の瞼が見開いていた。
目と目が合う。
「………………」
ポクポクポク、ちー……生きてる。
血まみれの生首の口が動いている。
「ご安心なされよ。吾輩は生きております故」
私は、喉を壊しかねないほどの大声を上げた。




