6-E 変な魔法使いの集金方法
複数の修道服の男や女が、騎士団員の手で連行されて、外に引っ張られていく。
「やっぱり私(神)の運は伊達じゃないわね。国宝級、いいえ、天界一の至宝なのよ」
「運が良ければ、こんな所には来ないだろう」
「うっ、それはそうだけど。じゃあ、何? アンタが私を助けに来てくれたってこと? こんな、地下まで」
もしそうだとしたら、私が騎士団の屯所を出て消息を断ってから3時間ぐらいで発見するといった、スピード解決。
もはや、最初からマークしていたストーカー並である。ちょっとキモい。
嬉しいけど。
「それは……」
「おーい、リンドーさん。見つけたっす。見つけたっす! やっぱり、コイツらが例のブローカーで間違い無いようっす。ジハルが育てたモンスターを捌いてマニアックな美食家に売り捌いて儲けを出していた上、街の少年少女を攫って人件費を削減していたなんて、とんでもない悪党っすね」
「そうか」
話に割って入ってきたバンダナ騎士と話すリンドー。
ん? 何の話をしているんだろう。
「ところで、クラリムさん。どうしてこんなとこにいるんすか?」
「なんで、ってアンタ達はそれを知って……えっ、リンドー達は私を探しに来たんだよね?」
「違うっすよ。俺たちは前回のジハルの事件に関わっていると思われたブローカーの調査に来たんすよ」
まさか、私を助けに来てくれたんじゃなかったのか。
「そんなことしてたんだ……いや、なんでアンタそんなことしてるのよ」
「ただ、倒したから終わり。ただ解決したから終わりじゃない。どんな物事にも、原因が存在する。その原因を断たなければ、何も改善されない」
えっ、なんか良いことを言った感出してやがる。
「ジハルという男は、明らかに突発的な行動を起こしていた。そうだというのに、街の治安を守る騎士団でも、対処出来ないモンスターを使役していた。これは異常なことだと感じ、この街の事件を調べていたら、ジハルがこの街に来たタイミングと少年少女行方不明事件の時期が一致した」
「それで、そっちの線から調べたんすよね。流石っす。いきなり取り調べを変われって騎士団に入って来たヒトとは思えない冷静な考えっす」
「ほへー」
私の知らないところでそんなことをしているなんて。
ただ、この男は、そんな人助けって柄だろうか。一応探りを入れる。
「本音は?」
「これが俺の借金返済のアテだった。捜査の協力による褒賞……そして、彼女だ。誰か分かるか?」
リンドーが指で差し示したのは、騎士団員に抱きついて泣き喚いている小さな少女。
うん、知らない。全く持って見覚えがない。
「家のリフォームを依頼した棟梁の愛娘だ。行方不明娘を取り戻した場合、リフォームを材料費のみでやってくれるように約束を取り付けておいた」
行方不明者リストに載っていた棟梁の男に掛け合い、これ幸いとばかりにリフォーム代を値切った。弱みに漬け込むのが少々アレだが、実際にちゃんと救出しているので問題ないのだろう。
うん、やっぱり私が知っている訳ないよね。その棟梁すら知らないもん。
「被害補填金6000万は5000万に、リフォーム代2000万は100万にまで削減した。これが俺なりの借金返済方法ということだ。ところで、集金の件だが」
「すごーい、そんな手がアッタナンテー。ジャ、ワタシ、サキニカエルネ」
「ミークとストーナも無事2000万ずつ集めたという話は聞いている。残り1000万程度だが、クラリムはいくら集めた?」
リンドーは私を逃さないとばかりに肩を掴む。
酷い、神の肩をこんなに強く掴むなんて、なんて不敬なの。
「……はい、これ」
私が懐から取り出したのは、私の話を聞いた修道服の女、リッサがくれた金貨の袋。
労働力を確保する為の撒き餌。
「でも凄くない? たった7日で100万よ100万! 伝手無し、元手ゼロで100万ッ」
「あー、これ、リッサが盗んだ財布と同じ麻袋っす。真っ黒な金っすね。押収するっす」
押収された(盗られた)。
「七日あってゼロか。一体何をやっていたんだろうな」
言えない。6日も屯所で菓子食って寝てたなんて言えない。
「なら、残りの時間で死ぬ気で探すしかないな」
「探すって何を?」
「騎士団とは、この組織で押収した金品の一部を得る契約もしている。その契約分の金品の売却額を貸してやる。クラリムが協力し、奴らが隠している金品を沢山見つかれば、分前も増え、残りの負債に充てることが出来るだろう」
「おっしゃおらー、おい、そこの女! ピョンピョン跳ねろ! 隠してるもんだせぇい?」
私は血眼になって教会内を探し回り、ステンドガラスを叩き割って発見した板状の宝石や、教会の椅子に使われていた木材が希少な物であることや、リッサが体の中に隠していた金歯やらやらを押収し貢献した。
リッサは私に向かって慈悲は無いのかと聞いていたが、私は慈悲の女神なので、罰という慈悲を上げてるんだよ。と優しく説くのであった。
そうしてノルマには僅かに届かなかったが、私はリンドーから借り受けることによって、借金は無事完済し、リフォームも行われる運びとなった。
この時、借金の延滞金よりも、リンドーから借り受けた1000万もの大金の利子が暴利であることを、私はまだ知らなかったのだった。




