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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第1章 街での『平穏で優雅な』生活編
32/116

6-B 借金との向き合い方

 何一つ協力を得られなかった私は、冒険者ギルドに来ていた。


 冒険者。

 それは、世界に眠るオタカラを求め、過去の文明人が興した遺跡を発掘したり、秘境とよばれる場所を探索したり、はたまた突然降ってきた謎の塔を登ったり。

 近年はモンスター討伐やら貴人の護衛もやっているということなので、だいたい冒険と呼べる行為なら良いらしく、それらの総称である。

 そういった冒険者達に対し、様々なヒトが仕事を依頼するのだが、それを仲介するのが冒険者ギルドということなのだ。

 一流の冒険者は一日で億を稼ぐ者もいるらしい。


 つまり、神である私ならば、七日もあれば2000万ぐらい稼ぐのは余裕だろう。


「戦士になったのは、つい最近で、討伐経験がスライムのみ」

「はい」


「それで2000万マニエを短期間で集めたいと」

「…………はい」


「他所当たってもらって良いですか?」

「……………………はい」


 私を白い目で見る、冒険者ギルドの受付のお姉さん。

 撃沈の二文字が相応しいほど、私は簡単にあしらわれた。


 冒険者登録した時に、備考欄に神と書いたのが問題だったのだろうか。

 そうだよね。アンケートとかに自己主張を載っけてくる奴の相手したくないよね。面倒くさいよね。癖あると思うよね。


 とは言っても、本当に私、神、なんだけどね。


「まぁ、そんなに上手くいかないわよね〜。でも大丈夫、私は色んな世界を旅してきた神。天界を通じて様々な世界を見て得た知識と、実際の経験で金策するなんて容易よ。この世は武ではなく、知性。知力こそ、人の繁栄の証なのよ!」



 街をブラブラと歩き、目についたのは希少品や珍品を扱っていると看板を掲げた店。

 ここなら、私の天界知識で無双出来るはず。

 所謂、未来知識チートというものだ。


「離れたヒト同士で会話できる物がある……と」

「えぇ、そうよ! この世界にはないテクノロジーで作った便利道具! なんとね、電話だけじゃなくて、メッセージを飛ばしたり、写真を撮ったり、ゲームだって出来ちゃうのよ!」

「ほう。七割くらい言ってることは分からんが……たしかにそんなものがあれば2000万マニエを出して買ってやっても良い」

「でしょでしょ! 貴方はなんて幸運な方なのでしょう。この出会いは神から与えられた慈悲。貴方はアデレネス教を信じ、一生、崇拝することになるでしょう」


 携帯電話、スマートフォン。

 もっと新しいものもあるが、そっちは通じないだろう。

 何にせよ、異世界に確変を齎すものだ。


「で、そのブツは?」

「ないわ。天界規定で持ち込んじゃダメって言われてるもの」


「…………作り方は?」

「そんなの知ってるわけないじゃない! もし知ってても教えられないわね。勝手に文明を変えるなって大神様に怒られちゃうし」


「……………………材料は?」

「えっ? なんか金属の板とか? 分解したことないし知らないわよ」

「冷やかしなら帰ってくれ。こちとら暇じゃねぇんだ!」


 肩を押され、店の外へと押し出された。


「ひゃっ! 何すんのよ! こちとら、神よ! 丁重に扱いなさい!」

「うっせぇ! 神は神だって名乗んねぇんだよ!」

「マジ? 初耳なんですけど」


 そんな馬鹿な。人と形が同じだから、そう言うしかないのに。

 それが仇になるとは……


 パンパンと体についた塵芥を払い、再度歩き始める。


「大丈夫大丈夫。まだ手はある」


 私はめげない。

 何故なら神だから。不死身の肉体と不死身の精神。

 つまり無敵。



「ウルメラに住む皆さん、初めまして、私は神クラリム。世界を崩壊させ天界を攻め滅ぼそうとした魔王を撃つべくして、送られた救世主なのです。私は一人の魔法使いをこの世界に導き、見事、世界を滅ぼそうとした、魔王を討ち果たしたのです」


 ウルメラの街でも、人通りの多い、広場にて。

 わざわざ、ストーナの家に置いておいた神の衣装を身に纏う。


「おかーさん、あれなにー?」

「しっ、見ちゃダメ」


「皆さんが今享受している平穏こそ、私という犠牲の上にあるものと言っても過言ではありません。つまり、皆さんは、私に平和の対価を払わなければなりません。下限は一万マニエ。上限はありません。たった二千人が私に協力してくれるだけでいいのです」

「おぉぉい、婆さんや、儂の前に神がいるそうじゃ、これは天への良い話土産が出来たわい」

「お爺さん。昨日、メニュテラ亭の看板娘を見た時にも同じこと言ってましたよ。何回天へ行くつもりですか?」


「遠慮はいりません。一人一度である必要もないのです。さぁ、ウルメラの人々よ。神への忠誠を示しなさい。今なら私(神)のサインをプレゼント。更に寄付スタンプカードが二十回貯まるごとに、私の髪の毛をプレゼント。ななんと、二千回貯まれば? 私が履いている靴にサインを書いてプレ!」

「あのー、すみません」


 不意に叩かれる肩。


「はい、寄付は一万マニエから、承っております。何回寄付されますか? あっ、今ならスタンプカ」

「私、騎士団の者なんですが、この付近で無断で演説をした上、神を騙るヤバい奴がいるって聞いてきたんですけど、ご存じありませんか? 通報では、赤とピンクと白で大仰な服の女性だと……貴方……失礼ですが、お名前と職業を聞いても……おい、コラ、逃げるな!」



 騎士団屯所。

 馴染み深い取調室。私は手に手錠を装備していた。

 テーブル越しに座っているのも、また馴染み深い荒々しい金髪ポニテの騎士。


「……クラリム」

「はい」

「何してんだァ?」

「いやー、お賽銭貰えるかなって……」

「それで、街中で演説してたのか。テメェ何様のつもりなんだ」

「慈悲の……女神様よ」


「慈悲のカミサマは、賽銭目当てで、街中で叫ぶのか?」

「……ごめんさない。ちょっとやり過ぎたかなとは思ってます」

「次、同じことになってもアタシ助けないからな」

「はい。ストーナも仕事が忙しいのに……ごめんなさい」


 私は、私(神)を捕らえた優秀な騎士のヒトに少し小言を言われ、釈放された。

 屯所を出ると、目の前を色々なヒトが通行していた。


「二千万を私にくれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ————————————————」



 騎士団屯所。

 馴染み深い取調室。私は手に手錠を装備していた。

 今度は足にも枷がしてある。暴れるとでも思っているのだろうか。

 テーブル越しに座っているのも、また馴染み深い荒々しい金髪ポニテの騎士。


 騎士団長と呼ばれている彼女は顔を右手で覆っていた。


「……クラリム」

「はい」

「……クラリム」

「はい」

「……クラリム」

「はい」


「……街中で絶叫したらな、普通に迷惑だろォが」


 そう渋い顔でストーナは溜息と共に苦言を呈した。


「ハイ、スミマセン」


「クラリム、とりあえず、頭冷やせ、な。アタシが言えた義理じゃねぇが、金の事で頭が一杯になってると、シンドイだけだからよォ。一回、パァっと遊んでこいよ。意外と良い案思いつくかもしんねぇぞ」

「ハイ、スミマセン」


「リンドーも鬼じゃねぇんだから、一回相談してみてもいいんじゃねぇか? アイツ無茶は言うけど無茶はさせねぇと思うし」

「ハイ、スミマセン」


「規則で最低でも今日は拘束しなきゃなんねぇんだが、好きなタイミングで出れるようにしとっからよ。落ち着いたら家に帰ってこいよ。アタシからもリンドーに言っといてやっから」

「ハイ、スミマセン」

「…………」


 その後もストーナが心配そうに私に声を掛けたりしていたと思うが、私はあることで頭が一杯でほとんど耳には入っていなかった。


 私はこの二千万問題を解決する秘策を発見したのだ。


 ストーナと変わって、女性騎士が私を留置所へ案内した。

 手錠はそのままだったが、足枷は外され、留置所の部屋に押し込まれた。


「ふふ、ふふふ。作戦成功ね。この屯所の中で、食っちゃ寝してれば、時間が勝手に解決してくれるってもんよ。ふふふ、リンドー、私はアンタの掌の上で踊らないのよ。私は神、神こそがヒト

を転がせる唯一の存在」


 つまり、借金を踏み倒す。これが私の最強の策だった。食事が提供されるこの部屋に引きこもりほとぼりが冷めたら帰り、何気ない感じで日常を過ごす。


 正にこれは私に降りてきた。神の一手。



 借金返済期限、当日の朝。


「待って、待って! あと一日だけ。あと、一日だけでいいのにぃぃぃ!」


 追い出された。


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