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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第1章 街での『平穏で優雅な』生活編
31/116

6-A 神様の集金方法

 前回のあらすじ。


 新たな街! 新たな仲間! 家! 多額の借金!


 終わり。



 壮絶な戦いを終えた、ストーナの屋敷。


 巨大モンスターが暴れ、屋根がくり抜かれ、雑草が散らばる等々、

 半壊の為、現在改修検討中。


 その中、私を含めた四人は壊れたテーブルを囲んで座っていた。


「なんでえええええええええええええ! なんで神である私が借金背負わなきゃなんないのよ!」


 赤と白を独占したような装いに身を包んだ慈悲の女神クラリムこと、私は天井が空いた家の中で叫んだ。


「どんまい」


 そう言って私の肩を叩くのは、宝箱をランドセルのように背負った白い短髪の少女、ミミックのミーク。


「うん、四等分だからね。私だけじゃないからね。ミークもだから」

 

 ピースをして私の言葉に反応するミークだが、本当に分かっているのだろうか。

 モンスター(ミミック)だから、金銭知識に疎いのかもしれない。後でフォローしとこ。


「なんか、すまねェ」


 曖昧に謝ったのは、王国所属の騎士団、『白き星を望む鳥(アナティテラ)』の騎士団長ストーナ。一応、このボロ家の持ち主である。

 もう当分、リンドーと関わらないと思っていたのに、半ば強制的に寄生された、ちょっと可哀想な子。

 ただ、この子絡みで、借金を背負うことになったので、それはそれ。騎士団の有給をきっちりとらせ、この会議に参加させている。


「安心しろ、支払い期日まで七日ある。一人2000万だ」


 そして、この淡々と驚愕の言葉を並べる、濃紺のローブを羽織った変な魔法使いはリンドー。

 私が異世界に滞在することになったことも、無駄な借金を背負うことになったのも、この男の所為。全ての元凶。


 許すまじ。この、いらんことしぃが。


「被害総額、6000万って聞いた気がするんだけど、それだと全部で8000万になるわよね? 増えてない?」

「この家の修繕費も込みだ。一緒に住む以上、ストーナ一人に払わせる訳にはいかないだろう」


「そうだね〜、皆んなの家だもんね。皆んなで協力して借金を返済……」


「……ってなるかぁ! なんで、わざわざ借金増やしてまでここ直すの! お金無いんだったら、この家売って、借金減らした方がいいじゃない!」

「クラリム。ここ、一応アタシの家なんだが……」

「ストーナは黙ってて。もう今はアンタだけの家じゃ無いのよ!」


 まるで悪質な借金取りの言葉のようだが、仕方がない。

 借金の波を乗り切る為には、リンドーを説得するしかない。


「断る。何の為に守ったんだ。売る前提なら、魔法で、あの花のモンスターごと、家を吹き飛ばしていた」

「リンドー、そこまでアタシの家を気に入ってくれてだんだなァ……ん? 吹き飛ばす? 家を? 魔法で?」

「昔と今とじゃ、状況が違うの! お金があればなんでも出来るけど、無ければ何かを捨てないといけないの。ストーナの借金を背負うと決めた以上、四の五の言ってられないでしょ」


 リンドーの不穏な言葉で首を傾げたストーナは放置して、はなしを進める。

 これは正論だ。私は楽をする為なら、ストーナに家を捨てさせるという決断を迫ってでも、正論で武装する。


「なら多数決を取るか?」


 リンドーは私の反骨心を悟ったのか、民主主義的な方法を提案した。


「ええ、良いわよ。でも多数決の内容は『この家を売るかどうかじゃなく』、『一人当たりの借金を減らす為に家を売るか』どうかよ」

「おんなじ? どっか、ちがうの?」

「ミーク、よく考えてみなさい。家を売らなかったら、借金を返す為にトンデモなく頑張らないといけない。けど売ったら、頑張る量が減るの。なら、どうするかは簡単でしょ? ストーナ、アンタも、よぅく考えなさいよ。2000万マニエが大金だって分かるでしょ」


 多数決だろうがなんだろうが、負けるはずがない。


 勝てる。2000万はそう簡単に払える額じゃない。打開策でも無ければ、この正論に乗るしかない。

 それでは、と前置きを置いて、リンドーは言葉を発した。


「家を売るのに賛成のヒト」

「はい!」


 私は勢いよく、腕を挙げる。

 勝ち誇ったように、それぞれの腕を見る。


「んんんんんん?」


 しかし、何度数えても、挙がった腕は一本しか無かった。


「反対多数により、売却案は棄却。各自、返済期日までに金を用意するように、解散」


「ちょっとまてぇぇぇぇぇい!」


 どこかへ去ろうとしたリンドーの襟を掴み、脇に抱える。

 コイツは良い。どうせ、反対すると思っていた。


 問題は他のメンバー。


「ストーナ、どういうこと。ちょっと考えたら分かることじゃない! そりゃあ、この家に思い入れがあるかもしれないけど、お金返せなかったら、どうせ家は売ることになるのよ。それだったらリフォームする前に売った方が、借金の額を抑えられるじゃない! それともお金を返せるアテでもあるわけ?」


 言葉の波を浴びせたが、返ってきたのは意外なもの。


「…………返せるアテは、ある」

「はぁあああああああ!?」

「貯金と、この七日死ぬ気で働けばなんとかならァ。騎士団には誰も手をつけたがらない事件がいくつかあって、それを解決することが出来れば返せなくもないんだよ」


「う、うそでしょ」


 私は、思わず後退りする。

 その申し訳なさそうな顔はなんだ。一人だけ抜け駆けするのが悪いという顔か。


 恐るべし騎士団長。金銭の余裕がありやがる。

 その若さで、欲望のままに金を使い尽くすのではなく、貯蓄に走ってるなんて……私なんて神様で不老不死だけど、天界の報酬なんて、お洒落なご飯とお洒落なドリンクと、ゲームと漫画とアニメに全部持ってかれてるのに。


 ちょっと、説得できる自信が無くなったので、もう一人の反対派に声を掛ける。

 この子は、絶対、返済能力は無い。つまり、付け入る隙はある。


「ミークちゃーん。なんで反対してるのかなー。腕上げるのが面倒くさいなら、私、手伝っちゃうよー」

「お金、食べる物。返す物、じゃない」


 ホワイ。ヘイ、この子はいったい何を惚けているんだ。

 ミークは背中に背負っていたミミックの口を開けると、拳大のゴロっとした石を取り出し私に手渡してきた。


「はい。これで、なんとかなる?」


 ミミックの唾液が付いているのか、ベットベトの石だったが、少し磨くと赤く煌めく宝石が顔を覗かせた。


「そういえば、ミミックは食べたものから、宝石を作るって、どっかの住民が言ってた気が……これがその宝石?」

「ミミックの宝石なんざ、聞いたことがねェが。ほら、見せてみろ……こんだけの大きさとか、その手の奴に売れば2000万なんざ、あっという間に出来やがるんじゃねぇかァ?」


 わぉ、ファンタスジック。

 瓢箪から駒ならぬ、ミミックから宝石。


「……ミーク先生〜? その宝石、実は、今だけ、もう一個、あったりなかったり?」

「ない」


「ですが?! 今だけ、なんと!」


「ない」


 はい。期待してすみませんでした。

 ワンチャン、あるかなって思ったけど、現実はいつも無情。

 神も仏もあったものじゃない……私、神だけど。


「おい、気が済んだか? 他に意見が無ければ、離してほしいんだが」


 甘いヘッドロック決め込んだ、脇からモゴモゴ言っている男。


 そういえば、コイツはコイツでどうやって返済する気なんだ?

 魔法が使えるといっても、あの変な魔法。神様知識的に、恐らくは、生き物の魔力を物に変換し具現化させる魔法のみ。


 今まで見たものも、決戦兵器にミークに本と売れそうなものは一つもないはず。

 決戦兵器は辛うじて売れそうだが、売れたら、それは私の儲けだ。折半してもらおう。


「ところでリンドーはどうするの? アンタも私と同じで、お金ないでしょーが」

「金はなくとも、アテはある」


「それってなに?」

「……言わん。誰か一人でもやれば、他のヒトは出来ん方法だからな」


 本当にそんな当てがあるのだろうか。

 だが、事実だとすれば。


 あれれー。これ、もしかして借金返せないの私だけ?


「百歩譲って、借金が生まれたのは仕方ないわ。この街のヒトの為にも、この慈悲の神である私が人肌脱いであげてもいい。でも、それなら、それで皆んなで協力しない?」


 静まり返る部屋。一瞬の間に誰一人として、部屋には残っていなかった。


「この薄情モノ共おぉぉ! はぁ…………なんか、探そ」

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