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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第1章 街での『平穏で優雅な』生活編
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5-E 家に巣食う種

 色々と準備(ストーナの着替えぐらい)をした、私達はストーナの家に到着した。


 屋根に咲く花は何度も涙を流し、新たな植物型モンスターを生み出す。

 木の根、蔦、葉っぱなどなど、子どもが植物の部位で作った、人形のようなものが大量発生していた。

 方々に散ろうとしていたモンスターを逃さまいと、応戦するのは、ストーナの騎士団員と思しきヒト達。


「まるで戦場ね」


 騎士団員と植物型モンスターの抗争。

 これが、広い平原ならば絵になるような光景だが、なんといってもストーナの家の庭。


 シチュエーション的には蜂の巣駆除とか、そういう感じ。


 モンスターの一体一体は騎士団員に敵わないようで、振り抜かれた剣を前に絶命していくが、永遠と生み出され続けるモンスターを前に、騎士団員達は疲弊の色を見せていた。


 戦況を変えようと、何名かの騎士は弓矢を使い、赤い花自体にも攻撃を行う。

 しかし、赤い花は目への直撃を防ぐ為に、花びらを閉じ、瞬きのように矢を防いでいた。


「外のモンスターは、俺らに任せるっす。団長達は中へ」

「あァ。頼んだぜ、ラクロット」


 バンダナ騎士は私達に襲い掛かろうとした植物型モンスターを切り払うと、今、騎士団員の指揮を執っていると思しき騎士団員に近づき、軽口を叩きながら、騎士団員の統率を行った。


 話し方とか、三下感が凄かったのに、意外とちゃんとしているのかな。


 私達は、そんな戦場を一直線に家に向かう。


 家に着くと、玄関と思しき扉を木や蔦が覆っていた。ドアノブがどこにあるかもわからない程、鬱蒼としている上、荊もあり、体で押すことも出来ない。


「うわー、これどうすんの?」

「どけ」


 私の肩を引っ張り、後ろに下げさせるストーナ。


 そのストーナの肩には、大振りの大剣。

 ストーナは大剣を肩から下ろし、両手で縦に構えた後、ゆっくりと腰に手が来るくらい後ろに引いた。


「ルクメリア剣術」


 押されても決して倒れないくらいの力を左足に集中させる


「剛波烈倒斬」


 それは左足を軸に回転した大剣の振り上げだった。


 大剣の切っ先は地面を僅かに擦るほど近く、その剣速は腕が進む程捻った体により加速し、扉を覆う木に剣の中腹が当たった。

 ほんの一時ひととき、大剣を木が押さえ込んだと思われたが、ストーナの腕にある筋肉の筋が隆起すると大剣は木を豆腐のように軽やかに切り裂いた。

 木を、蔦を、枝を、そして扉をも両断した渾身の一振りは、全てを切り払った後、そのまま、玄関に覆っていた全てを家の中へと吹き飛ばしたのだった。


「これが……街を守る騎士団長」


 ゴクリと生唾を飲み込みながら、そう言葉が漏れた。

 街を守る騎士団の長。

 その肩書きに偽り無し、といわんばかりの技。

 少し残念美女感が増していたが、それを払拭するぐらいの攻撃だった。


「ほう、なかなか」


 腕組みをしながら、ストーナの技に関心するリンドー。

 アレが後方師匠面というものだろうか。

 こうどことなく、イラッとする。

 何もしてない癖にとか、アンタ剣の腕とか分かるのかよ、とかの文句の気持ちは然程ない。

 ただ、なんとなく、イラッとした。


 ミークがリンドーの真似をして、腕を組んでいるのは可愛いのだが。


「行くぞ」


 ストーナはそう言うと、剣を肩に担ぎ直し、自身の家へと入っていった。


 その後に続く。

 目端で木っ端微塵になった木や扉をバクバクと口に放り込む宝箱が見えたが、今は見なかったことにしよう。


 家の中もまた、外と同じく鬱蒼としていた。


 床の至る所に切り株があったり、天井や壁に色とりどりの花や果実が実っている。


「現状、メリットとしては屋根があるくらいか。リフォームが必要だな」

「…………まだ、ちょっと気が早いんじゃない」


 どこが何の部屋か把握するように、リンドーは首を動かしているが、この異常事態が解決しなかれば、何の意味もないのだ。


 奥へ奥へ進むと、広い部屋が現れた。

 おそらく食事を楽しむダイニングであり、団欒するようなリビング。


 その部屋にいたのは、一人の男。


「ジハル」


 ストーナの呟きに反応し、男がこちらに振り返る。


「ロクリス。お客さんのようだ。少しだけ待っていておくれ」


 その男は赤い花が咲いている植木鉢をテーブルの上に置くと、ゆったりとこちらに近づいてくる。


 外から入る光が男に当たり、その姿が露わになる。

 髪に葉っぱや枝が刺さっている奇抜な髪型の男だった。


「久しぶりだね。ストーナ。来るんじゃ無いかと思ってたよ」

「ジハル! テメェ、なんでここにいやがる!」

「久しぶりに会って早々、酷いなぁ、君が家に呼んだんじゃないか?」

「私の留守中に上がって良いっつた覚えはねぇんだが、しかも1日2日付き合った程度で押しかけるたァ良い度胸だなァ!」


 ストーナは葉っぱ頭男、ジハルを警戒しつつ大剣を構える。

 元カレって交際期間2日なんかい。みじか。

 それで、元カノの家を占拠する男。こわ。


「それとも、なんだ? アタシとヨリを戻そうって腹で来やがったんじゃねぇだろうなァ? 残念だが、今のアタシには新しい旦那が——」

「それは違う。出来ることなら、君みたいなヒトはもう見たく無かった」


 間髪入れずに、ジハルはストーナの言葉を切った。


「確かに、君を始めて見た、あの時は間違いなく君のことが欲しかった……そう、あれは雨上がりの夕暮れ……っ、何をするだい」

「テメェ、マジでやめろ! アタシには次があるんだ」


 ジハルとストーナの馴れ初めをリンドーに聞かれたくなかったのだろう。

 ストーナは大剣をジハルの目の前で袈裟斬りに振り下ろした。

 それに慌てたジハルは、先ほど置いた植木鉢にまで身を下がらせた。


「くそくそくそ! やっぱりだ。なんでこんなガサツな女を選んでしまったんだ、僕は!」


 頭を掻き回すジハル。頭からは枝がポロポロと落ちていく。


 あーね、いっときの恋心ね。一目惚れだとかで情熱的に燃え上がったけど、やっぱり趣味じゃなかったとかなのだろうか。


「いくらロクリスを立派にする為とはいえ、こんな女に告白するんじゃなかった」

「ん?」


「騎士団長なんて言うから、さぞ魔力の質が良いんだろうと思って近づいたってのに」


 おや、おやおやおや。これは普通の恋ではない?


「ほら、見てみろよ! 油断した所を後ろからロクリスに噛ませてやったのに、オマエの! オマエのオマエのオマエの魔力が不味すぎて、ロクリスの花びらが一枚落ちてしまったんだぞ!」


 ジハルは、植木鉢を掲げ、こちらに向けてきた。


 赤い花。そして真ん中にある瞳。外の屋根に咲いた花のミニチュア版。

 いや、どちらかというと、あっちがビックサイズなのだが、同種と思しき花が植木鉢で咲いていた。


 ただ、確かに、一枚の花びらが欠けているのか、少し歪だった。


「何かに噛まれたのに、気付かなかったのか?」

「……覚えてねぇ。そう言われば確かに噛まれた気もするが、ある程度の痛みは訓練で慣れてっからなァ」


 リンドーの疑問に少し気まずそうに語るストーナ。


「んで、コレはどういうこった? アタシが気に入らねェなら、わざわざ面を見せに来る理由なんてないだろゥが」

「その花の復讐か?」

「そうだ! 僕の大事なロクリスの恨みだ! こんな風にしたオマエを僕は許さない! この家はロクリスの為に使う僕の家だ! 関係ない奴は出ていけ!」


 暴論が服を着たような奴。


「それは違う。この家は俺達の家だ。お前の物ではない。出て行くのはお前だ。ついでに掃除もしろ。俺の部屋は念入りに埃の一つでもあったら、その花、ミークに食べさせるぞ」


 こっちはこっちで血も涙もないわね。

 

「ふ、ふざけるなぁ! ロクリス、お願いだ、力を貸してくれ!」


 ロクリスと呼ばれた花のモンスターは、外の花と同じように涙を流し、それを床へと落とした。


 外と全く同じ行為。


 そうなると出てくるのは、あの木の根や蔦で出来たような生命体。


「うそ……」


 現れたソレを見て、私は思わず呟いた。


 予想は当たっていた。しかし、違ったのはその大きさ。

 その新たに生まれた植物型モンスターは天井にまで迫ろうかと思える程、巨体であった。外で大量発生しているモンスターの約四倍はあるほどの大きさ。


 それは一直線にリンドーに近づくと、木の幹のように太い触手を振るった。


「危ない! うっぐ」


 咄嗟に動いたのはストーナだった。

 ストーナは大剣の腹で攻撃を受け止めようとしたが、呆気なく壁まで吹き飛ばされた。


「な、なんだとォ。なんつぅ力だ! ただ単にデカいだけじゃねぇってのかァ?!」


「あは、あははは。ざまぁないね、ストーナ! 少しとはいえ、ロクリスはオマエの魔力を食べたんだ。そこから生まれたモンスター(ギギウッド)は、オマエと同じ力を得たのさ! そしてこの巨体! 小さなストーナとは同じ力でも発揮できる力の量が違うんだよ!」


 ストーナは剣を床に突き立て、再度構え直す。


 巨大な植物型モンスターは、触手を振り回したり、何か酸性の液体を吹いたり、明らかな毒っぽいものを投げつけたりし、ストーナと戦っていた。


 それをただ、私達は見守っていた。


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