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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
序章 『変な』魔法使い、異世界へ
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3-D 白の短髪の少女

 魔法使いの男が宝箱から抜き出した、ソレは、人の形をしていた。


 背丈は小さめ、神の信奉する者達の服を、嘲笑うように纏い。

 そこにあった色が無くなったような白の短い髪。紫が混じった黒の瞳。金平糖のような形の緑の髪飾りをつけていた。

 腰を落として驚いたのは私だけのようで、魔法使いの男は少し目線を落とし、謎の少女に話しかける。


「言葉は分かるか?」


 コクリ。


「なら状況は理解していると思うが、あれをなんとかしてくれ」

「なんとか?」


 幼くとも真のある声で少女は骸骨兵達を見つめる。


「この上にある街を壊さない程度で、あの骸骨兵を殲滅すればベストだ」

「わかった」


 白髪の少女は足元に転がっていたミミックの口を開けると、躊躇なく腕を突っ込み何かを取り出した。

 杖。

 装飾が施された高そうな逸品。

 白髪の少女はそれを、仲間が吹き飛ばされ起こったのか総動員で襲いかかろうとする骸骨兵に向けた。


「アルカトラム、ベウレフォース、マゼンタ。神よ、彼女の祈りを聞き届け、その力を同胞に知らしめよ」


 骸骨兵一体一体の足元に現れる白い円陣は、少女の詠唱が進むにつれ苦しみ逃れようとする骸骨兵を封じ込めた。

 円陣は足元から天井までゆっくりと白い光で骸骨兵達を包み込んでいく。


「神聖魔法、生命流轉ミル・エランデ


 骸骨兵を捕らえた光は音がないのが不思議なくらい発光し続けると、耐えきれない眩い光が地下墓を包み込み、私の視界を閉ざさせた。

 一秒の後。

 カラン、と地面に剣が、鎧が、落ちた音が響く。

 目を開けると、もう、骸骨兵の肉体とも言える骨が消失していた。


 正に魔法。


 機械仕掛けの大砲なんかじゃなく、魔法っぽい魔法。

 降り注ぐ光の嵐は、骸骨と共に消え、部屋に静けさを齎した。


 ただ。


「これ、ホントに神聖魔法!? …………嘘、神官プリーストでも、こんな塵も残さないほど完璧な浄化なんて出来ないはず。まさか高位神官ハイプリースト?」


 私は、自分とは違う奇跡を目の当たりにしてそう呟いていた。

 天から降り注いだような、光の柱でモンスターを消滅する魔法。

 どうしよう。なんか私(神)より神っぽいことしてるくね。


「良くやった」

「うん」


 魔法使いの男は骸骨兵が完全に消滅したことを確認すると、白髪の少女の頭に手を乗せる。


「疲れた……もういい?」

「あぁ」

「じゃあ、ばいばい」


 白髪の少女は、眠そうな目を擦りがなら私達に手を振ると、ミミックの口を開き、その中に入って行った。

 ミミックはベロで少女を掴むと、ゴクリと喉を鳴らし飲み込んだ。


「ぃえ゛! た、食べられたああああああ!」


 ミミックは白髪の少女を咀嚼するように、体を上下に揺らしている。

 ショッキングでアメイジングな光景に目を疑う。


「そもそもアレ誰! なんで神聖魔法使えるの? そもそもアンタの魔法って『私から決戦兵器を取り出す魔法』なんじゃ……」

「なんだその欠陥魔法は……とりあえず、ここを出るぞ」


 魔法使いの男はミミックを抱え、出口へと続く階段へと向かった。

 骸骨兵がダッシュで階段を下りたからか、所々火が消えていたが、かなり動揺してマッチを擦る元気も無くなっていた。なんだったら、マッチも無くなっていた。


「私は夢でも見たのかしら。ねぇ、とりあえず一個聞いていい? なんであんなポッと出が神聖魔法なんてスペシャルを使えるのよ! この私(神)でも、この世界のせいで使えないのに!」

「知らん! 本人に聞け。なんで最初の疑問が僻みなんだ」


 それは嫌だ。なんか負けた気になるし。


「んじゃ、あの女の子はなに?」


「魔法だ」


 またか。

 私から機械仕掛けの大砲を抜き出した時もそうだが、ミミックからヒトを取り出す魔法って何? 魔法のようだけど、魔法だとは思えない。


「アンタの魔法はトンデモ兵器を体から出す魔法なんじゃ……もしや、さっきの女の子はミミックが隠し持っていた第二の決戦兵器? うんそれなら、さっきのヤバヤバ神聖魔法も納得が……」

「俺の魔法、トロマ・イポスブリオスはそんなトンチキ魔法じゃない。どうせ丁寧に説明しても耳から耳に流れるだろうから、簡単に言うと、魔力を形にする魔法だ。魔力を何に変えるかは俺には指定できない上に、ある程度決まったものが出てくる。お前は決戦兵器で、ミミックは少女だっただけだ」


 なんか大砲のような性格をしているみたいで嫌なんだけど。

 それはそうとして。


「このミミック、女の子だったんだ……大丈夫かな。数回ぶん投げちゃったんだけど……ご、ごめんね」

「今は寝ているようだ」


 魔法使いの男が抱えるミミックを少し撫でた。

 まぁ、大丈夫か、魔法使いの男なんて紐で縛ってたし。



 階段を登り切り、地下墓を出ると、外は暗くなっていた。

 夜。

 丁度、綺麗な月のような白い太陽が暗闇を照らしている。


「なんと、もう終わられたのですか?」


 入り口を封鎖するように自警団の魔族達が武装して待機していた。

 その中には、私達をここに連れてきたリーダーもいる。

 説明するのも面倒、というか私がよくわかっていないので推定ミミックの少女の存在は伏せ、私の活躍を大盛りにして話した。

 魔法使いの男は茶々を入れなかったが、少し目は冷めていた。


「そうでしたか。貴方が……町の者一同感謝します。ありがとうございました。そういえば、そのミミックの件ですが、知人を当たっていた所、解剖したいというものがおりましてな。そこまで大金にはなりませんが、買い取って良いと言ってましたが」

「なるほど。それなら——」


「ちょーーっと、待った」


 魔法使いの男は当たり前のようにミミックを売ろうとするが、私は魔法使いの男の後ろから抱き着き、口を手で覆った。


「このミミック、売る気はなくなったから。その話はキャンセルで」


 えっ、と言う、待ち時間にわざわざ知り合いを当たってくれた親切な魔族のヒト。

 心遣いには感謝なのだが、少し思うことがあった。

 魔法使いの男の耳を手繰り寄せる。


「天界に帰る目星が付いてないし、このまま街まで旅を続けるとしても身の安全は確保するべきでしょ? あの決戦兵器はバンバン撃てるもんじゃないし、さっきの女の子が、このミミックって言うことなら百人力よ。一時の銭より、常時の安全ってね」

「だからって、このミミックを持ち歩くのも骨だろう。オマエが持つのか?」

「うっ……それは」

「ミミックの食事はどうするんだ。人族魔族を食うと言っていたが、生贄でも集めるのか?」

「悪神かっ、私は」

「……まぁいい。飯の事は後で本人に聞くとして、言い出したんだから面倒を見ろよ」


「もちろんよ! 私は慈悲の女神。天界一の愛で、モンスターだろうが、ミミックだろうが完璧に世話してあげるわよ!」


 何故、この変な魔法使いは私のことをジト目で見るのだろうか。こんな容姿に性格に実力に、三拍子揃った神なんて珍しいのに。


「すまない。どうやら気に入ったようだ」

「いえいえ、大丈夫です。気にしないでください」


 ミミックを気にいるなんて、なんて変人なんだ。と言いたげな魔族の面々。

 うん、その感想きっと私のことね。折角、町の危機を救ったのに、そんな失礼なこと思うなんて、ぶっ飛ばしてやろうかしら。


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