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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第3章 最優秀ギルドアワー編
112/116

16-R リターンマッチ

 黒一色で染められた鎧と細長い槍。

 鎧はストーナ以外は着ることが出来なさそうなくらいピッタリのサイズ感で、槍は全体を通し一直線で黒という事も相まって刃と柄の区別が付かない。

 空から降り注ぐ太陽の光はスポットライトのように、その鎧を艶やかに輝かせていた。


「ギリギリ間に合ったって事でいいんだよなァ?」

「間に合ったは、間に合ってるけど」


 服装が変わっても中身は変わっていないと言わんばかりにストーナが口を開き辺りを見回す。

 私は立ち上がると同時に頭に沸き続ける疑問をぶつけた。


「えっ、と、まず、あの上で飛んでるドラゴン、何?」

「知らねェ。魔法なんじゃねェのかァ?」

「……その鎧と槍は? 家には無かったわよね」

「あぁ、なんか勝手に着替えてた」

「さっき言ってた竜王顕現って何? 急にどうしたの? キャラチェン?」

「ち、違ェよ! アレは頭ン中に急に出てきたから口走っただけだっつの」


 来てくれて嬉しいよりも、何がどうなった感が強すぎる。

 このまま質問攻めにしてもいいのだが、とりあえず。


「リンドー!!」


 まず間違いなく元凶だろう人物を実況席から呼びつけた。


「俺の魔法、トロマ・イポスブリオスで生み出された『最強騎士物語』は全五章で構成された物語。今まで使っていたのが第三章『冥王爆誕』、今の姿は第二章『竜王顕現』によるものだろう」


 ダメだ。説明が説明になっていない。仮に噛み砕いて説明されても、根っこを理解していないと分からない系の説明な気がする。


「その辺の話は理解する気ないし置いといて、リンドーってずっとこっちにいたわよね。なんでストーナが一人で魔法使えるようになってるの?」

「忘れたのか? ミークも一人でミミックから出たり入ったり出来るだろう? ストーナも『最強騎士物語』さえあれば、一人で形態を変えれるだけだ。今回の場合は、こっちで一度魔法を使った時に生み出した『最強騎士物語』を手紙と一緒にウルメラに送っておいたから、こうなったという事だ」

「へぇ魔法って郵送可なんだ……ん? 私は自分で出来ないんですけど!」

「知らん。出来るようになりたいなら努力しろ。自分の体の責任を他者に押し付けるな」


 言ったものの私の場合はあの一都市は破壊出来そうな超危険兵器なので、使い道ないだろうし、いいけど。


「魔法の本を使って色んな姿に変身するって……魔法少女かよ」


 どこか幼女向けのアニメの設定にありそうだな、と思うが残念なことに、ストーナは魔法少女としては武闘派思考かつ柄が悪い。


「詳しい話は後にしようや。奴もお待ちかねみてェだしなァ」


 ストーナの張り詰めた声でハッと我に返る。

 ストーナの見つめる先に怒気を放つ白銀鎧の人物がいた。


「オッキー! あとはよろしく!」


 このまま邪魔をしていると全身鎧の人物から剣を叩き込まれそうな気がしたので、リンドーを掴み全力で実況席に戻った。

 オッキーは突然現れたストーナとドラゴンに驚きつつも、声を上げた。


「お待たせしまーした!! これより第四試合を始めまーす! まずは『黄金の誓い』最後の一人、『元ベラエランデ騎士団』ロットン! 対するはウルメラが誇る騎士団『白き星を望む鳥(アナティテラ)』の騎士団長ストーナ=エル=ヴァルデエランデ! 鎧に身を包んだ騎士同士の決戦となりました!」


 オッキーによる両者の紹介を聞き流しながら、相対する二人を見つめる。


 ストーナが頑張って来てくれた時点で嬉しい限りなのだが、両手を上げるにはまだ早い。

 勝たないと、私のダンジョン斥候強制労働生活が始まってしまうのだ。


「どっちも全身鎧だから攻撃の打ち合いになりそうね。力だけで言ったらロットンの方が強そうだし、やっぱりストーナ、キツイのかな?」

「そうとは限らないだろう。防御力は重厚な鎧を着ているロットンに利があるが、敏捷性は比較的軽い鎧のストーナが勝っている。鎧での防御を活かしカウンター主体で戦うであろうロットンに対し、威力のある攻撃を差し込みつつ、反撃を回避出来る余裕を持ってすればストーナも十分勝てる見込みはある」

「そもそもなんだけどストーナって槍使えるの? 普段使っているのはデッカい剣だし、あの妖精みたいな服の時も細身の剣だったし」

「さぁな。俺もストーナが剣以外を使えるかどうかは知らない。だが、要人警護を生業とする一族が、剣がないから戦えないとは言わないだろう。様々な武器の修練を積んでいても不思議ではない」


 ストーナが一度敗北した相手。

 以前ギルドの訓練場で見せていた戦法は通用しないだろうし、鎧の重さの差を活かした素早さ、だけでは決して勝てないだろう。


 今までの試合のように茶々を入れる事は出来ないと感じ、今は信じることしか出来ないと思った。


「それでは、開始!!」


 オッキーの宣言で最後の戦いが始まった。


 やはりと言うべきか先に動いたのはストーナ。

 槍を構えながらジグザグと動きを付け、接近し剣を構えるロットンへと槍を突き出した。


 鋭い突きは風を切り、白銀の鎧の首筋へと一直線に向かったが、その直前に剣で受け止められた。

 鉄の響く音が闘技場を走り、二人の間に火花が散る。


 ロットンは重厚な鎧を着ても尚、素早く、前回同様、力で勝るロットンは突き付けられた槍を押し返し地面へと叩きつようと剣を振るった。

 そう攻撃にストーナは槍で対抗し踏ん張るのではなく、力を抜いて攻撃範囲から離脱していた。

 恐らく力と力の戦いは分が悪いと悟ったのだろう。

 しかし、躱したはずのストーナの鎧に深々と切れ込みが入り、抉れた跡を残していた。


「とんでもないパワーね」

「それだけではない。剣を止めるという技術も目を見張る。剣を床に叩きつけるのではなく空中で静止させ、次の攻撃に備えている。ストーナに一瞬たりとも隙を与えないという訳か」


 剛力で放たれた凄まじい切れ味。

 まともに喰らったら、鎧や肉体どころか骨まで断ち切れそうな威力だ。


 やはり、ストーナが勝つのは難しそうだ。

 この剛剣を掻い潜り、あの鎧の上から有効的なダメージを与えるなど不可能に近いように思えてくる。

 仮にストーナが大槌を持っていたりケンザブローのような打撃術を持っていればどこへなりとも攻撃を当てれるのだろうが、もちろんそういう訳にもいかない。

 恐らくストーナが狙いたいのは装甲の薄い鎧の継ぎ目。だが、それをロットンも把握しているだろうし、攻撃を防がれてしまう。


「闇雲に槍を振っても鎧に弾かれちゃうだろうし……いったいどうすれば良いって言うの」

「そう、心配するな。自分に力が無いなら、相手の力を利用してやればいい」

「それって……」


 リンドーに疑問を返そうとした瞬間、再度、場が動いた。


 一回目の攻防で距離を取っていたストーナは再度走り出すると、ロットン目掛け跳躍した。

 体重移動だけでは有効なダメージを与えられないと思い重力を味方に付けようと思ったのだろうか。


 空中に上がったストーナは落下速度を増しながら槍をロットンに突き刺した。

 先程と同じように首元へと。


 だが空中にいるという事は何も良いことだけではない。

 ロットンは首筋に放たれた槍を体を動かし肩で受け止め、そしてすぐさま剣を振り上げた。


 ロットンによるカウンター攻撃。

 空中という足場のない状態で、躱すことが出来ないストーナを両断する為に放たれた攻撃。

 槍が鎧で弾かれた反動で仰け反ってしまったストーナは槍で受ける事さえ出来ない。


 当たれば一瞬で決着が付くであろう剛剣。

 正に勝敗を分かつ一撃はストーナに届かなかった。


 ブルンと風を切る音。剣はストーナの体に僅か数ミリ触れることが出来ないまま、ロットンの剣は振り下ろされた。


 何か特異な力や魔法で攻撃を避けた?

 否。そもそも、ストーナは攻撃をしていなかった。

 槍は確かに鎧で弾かれストーナの体は仰け反ったように見えた。だが、そうではない。実際としては槍の穂先を起点としてストーナは後ろに跳ねていた。

 体重を槍の穂先に集中して乗せる事で空中での移動を可能としたのだ。


 押さえつけられたバネのように後ろに跳ねたストーナはこれが狙いだった。

 空中で翻り、体勢をすぐに立て直したストーナはロットンが空振った縦振りをそのまま、鉄の左足で踏み付け、そして槍を薙いだ。


「『竜王閃激』」


 銀の鎧に煌めく黒の一筋。

 地面ではなく、剣を足場として放たれた横薙ぎは両手を塞がれた上に隙を作ってしまったロットンの首元を深々と透過し。

 ロットンの振り下ろされた剣が床にめり込むと同時、カコン、と白銀の兜が床に転がった。

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