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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
序章 『変な』魔法使い、異世界へ
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2-G 未来の気苦労より、今の幸せを

「以上だ」


「…………え? 終わり? これが五人全員が魔王になる理由の回想?」

「あぁ」

「いや、もうちょっとなんか、コレってインパクトのある話があると思ってたから。ほら、五人の面接では分からなかった良い所が見つかって、それが凄すぎて、一人に絞りきれない〜的な……」


 時は戻り現在。面接室。

 事実だけを並べた魔法使いの男の散歩話が終了した。


 なんだろう、宝物庫まで散歩して、なんか迷子になったことしか分からなかった。


「何を聞いていたんだ?」

「そんなエビデンス提示したビジネスマンみたいなこと言われても、こっちには何も伝わってないわよ、ねぇ」


 緑肌の老人に助け舟を求めるが、緑肌の老人は私から顔を逸らした。

 やっぱり、いつの間にか私(神)と魔法使いの男の立場が逆転している気がする。もはや、魔王を倒したのが魔法使いの男の方ってのも分かっているのじゃないだろうか。


「どんな理由であれ、やる気があるならやってみたらいい。出来るか出来ないか見極めるのも大事だが、チャンスは平等に与えられるべきだろう。私利私欲があるのは当たり前。きちんと考えを持って立候補したのだから、枠が一つしか無いからという理由で切り捨てるのは惜しい。それに、五人もいれば互いの短所を補ったり長所を使い合ったり、きっと良い結果になる」


「その結論にさっきの回想いる?」


 長ったらしく、魔王を五人にすることを正当化しているが、もしや選別するの面倒臭かっただけじゃないだろうか。


「本当によろしいので?」

「ペシュッド。これが神使としての意見だ。異論は認めない。俺達はここで待っているから、この結果を五人に伝えてきてくれ」

「……は、かしこまりました」


 従順な犬のように、文句を言わない緑肌の老人は、部屋をそそくさと出ていった。


「ちょ、ちょっと、アンタ、この状況どうするつもりよ。いくらなんでも五人全員はどうかと思うわよ。あと、私達が来た時よりも魔王増やしてどうすんのよ!」


 魔法使いの男は緑肌の老人が閉めた扉に耳を当てていたが、私が近づいていくと、


「脱出するぞ、着いて来い。宝物庫を探している間に、逃走路は確認してきた」

「え?」


 私の腕を掴み、ドアを物音を立てず、忍足で移動を開始した。

 脱出ということは、この魔王城から出るということなのだろうが、突然の出来事に、私は着いて行きながらもコソコソっと魔法使いの耳に疑問を投げる。


「急にどうしたの?」

「これ以上、面倒ごとは御免だ。魔王就任の挨拶に即位式への参列、新たな魔王軍の再編、領主の反対意見への対応。パッと思いつくだけでも、これだけはある。お前が、そういう面倒ごとが好きだと言うなら止めはしないが……」

「うん、それを聞いたら私もすっごく嫌だわ。スピーチなんて聞くのも話すのも大っ嫌いだし、魔王城に長い時間拘束されそうだしね」


 考えただけでゾッとする。

 何を今更感なのだが、帰還用の魔法が使えず、神としての回復の魔法が使えない私にとって、魔王城で滞在するのは、レベル1の冒険者がカンストレベルが犇く迷宮に挑むレベル。


 つまり無謀。


 そんな所で、国王の行事に付き合うとか、心が休まらない。

 いや、ホント今更だけど。魔王の面接官とかしている場合じゃなかったとは思うけど。


「でも、このままでいいの?」

「何がだ」

「揉めるんじゃない?」


 一人で治めていた国を五人で治めるという方針転換。

 五人の意見が食い違えば、国が五つに割れるってことだってある。


「そうならないと思ったから、五人を魔王に推した。何かしらの悲劇が起こったなら、俺の目が節穴だったというだけだ」


 私の疑問に答える魔法使いの男は、歩みを少し遅めて、そう答えた。

 顔は見えない。

 どうせ、無機質な表情なのだろうが、この言葉がどういう意味をしているのかが気になり、彼の顔を見ておきたかったと思った。

 自分とは関係のない他国だから、テキトーにしているという薄情さなのか。

 魔王を決めたのは自分なのだから、全責任は自分にあるという責任感なのか。

 それとも、


「今の奴らが魔王に相応しくないとしても、想いさえ確かなら、きっと良い出会いを導かれると思っている。決して交わることのない今回の出会いもまた、その一環なのだろう」


 少し言葉を交わしただけの相手への信頼なのか。

 その意図は分からない。

 ただ、その私の前を走る背中には、迷いはないように思えた。


「それに、神は一方的に混乱を与えるものだ。試練だと思って頑張ることだ」


 いや、やっぱり普通にクソ野郎なのかもしれない。

 サラッと私が魔王を決めたことにしてるし。


 そんなこんなで、私達の魔王面接は終了した。


 120%頭を抱えているだろう緑肌の老人の心配をしつつ、私は何か問題が起こったとしても、私の仕事を引き継ぐ予定の後輩ちゃんがなんとかしてくれるだろうという思いを胸に気兼ねなく、魔王城を後にするのであった。

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