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正義のミカタ 作りました  作者: すっぱすぎない黒酢サワー
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一章 不忘蔵王と正義のミカタ 3

 

 その少女は、ある意味でのモンスターだった。

 


 もはや人間の領域になんて存在しないであろう生き物だ。写真を撮ろうとしてもその姿は真実を写さない。その姿は神話に出てくる神様さえも凌駕する。


 

 それ自体が光を放っているような眩くきめ細やかな黄金の如きブロンドヘアー。


 腰までありそうなその黄金長髪はポニーテイルに結わえられ、両耳の脇には横髪が長く垂れ下がっている。


 ひとふさお値段おいくらと伺いたくなるそのブロンドを有するのは、一七〇センチはあるだろうスラリとした長身に恐ろしく整った顔立ち。


 極めつけのその二つの瞳は、まるで宝石のようなサファイアを連想させる深く穏やかな青色。美少女、と言うよりも規格外の美人である。

 


 などと、あたしが思いつくばかりの褒め言葉を並べてもなお足らない。


 

 ぶっちゃけて言ってしまえば、女神様と謳われてもなお足りないぐらいのモンスター級の美形少女だった。


 そりゃあ、謎の飛行物体以上に目の前の美人に目を奪われる彼らの気持ちもわかる。目を離すのが惜しいのだ。


 

「んー。んんんー……」

 


 すりすりすりすり。

 

 ああ、なんだかとても幸せ。

 などとトリップしている理由はなんとなくその擬音から察していただけるとありがたいのだが。



「ざおうー。ざおうぅぅーーー」

 


 その世紀末美少女モンスター(ちょっと長いな……)が、あたしにすりすりとほお擦りをかましてくれていた。


 その子の方があたしよりも背が高いため、おのずと上から押し付けられる形になる。



「まてまてびしょ……ではなく美人さん! あたしにそっちの気がなくてもちょっと怪しい感じになるから!」



 しがみついてくる少女を両手で押しのけるあたし。


 

「まずひとつ! いやひとつじゃ足りないんだけどね実際!」


 

 ずびしぃ! と、なおも名残惜しそうにこちらへ擦り寄ってくる少女に向かって人差し指を向ける。


 

「?」

「不思議そうな顔しなぁいっっ! まず! あなたはダレですか! ワッチュアネーイム!」



 頭の中にある得意じゃない英語の辞書から懸命に言葉を探すあたし。


 

「正義? 正義はユイガだよ? ミガサキユイガ!」

 


 うみゅ。元気な回答で大変よろしい。


 

『ミガサキ?』

『神様キタ! これでかつる!』

『ミガサキ ユイガだってよ! 最後の新入生との運命の出会い!?』

『わたしもスリスリしてほしー!』

『外のあれ。もしかして彼女、神災?』

『二次元から次元を超えてアグ様が降臨しましたぞ!』

『足ほっそーい!』

『可愛すぎるだろ。常識的に考えて』

『フワ君の彼女さんだって~』

 


 彼女の名前に反応して、あたし達を遠巻きに見守っていたクラスメイト達から様々な声が上がる。

 

 神ヶ崎ユイガ。ふむ。先ほど若ハゲ先生が呼んでいた名前と同じと言うことは、彼女が本来ならあたしの後ろの席に座っている筈の不登校児である事は間違いないようだ。


 あと玉兎。あたし、女。


 出来ても彼氏だから。……いや、今後の事なんてわかんないけどさ。


 

「よしユイガ。では次の質問。外のアレって何?」


 

 外のアレ。もちろんあの台風を連れてきた、今も校庭を滑空しているあのエイにもサメにも見える透明な空飛ぶ巨大魚の事だ。


 まあアレが何者なのかは何となく予想はつくけど、それでも、やっぱりきっちり答えてもらわないと。


 ……あたしが良くても、みんなを納得させないとね。



 ありがとー。ありがとー。と、廊下(気づけば他のクラスからも野次馬が集まりまくってんじゃん!)の声に反応して手を振るユイガ。


 だから、聞け、人の話を。

 


「んーたいふぉんだよー」


 

 たい、何? おかしら?


 

「たいふぉんー。正義のかみさまー」


 

 ざわざわと、再び教室が喧騒に包まれる。


 

「神様……か。やっぱり。ユイガ。キミ……」

 


 この子、神災だ。


 神を操る人。人を超えた人。人でありながら人に余る過ぎた力で災いを振りまく者。


 五〇〇万人に一人の《神を見つけてしまった人》。



 あたし達を見ていたみんなもその言葉で改めて気づいたのだろう。


 聞こえてくる言葉からは、羨望とも畏怖とも取れる感情が覗き見れる。


 

『かわいーのに! 強いんだよきっと!』

『やはりゴッドですぞー!』

『とりあえずオレはあの娘を射止めるね』

『だが断る!』

『はふぅ……お姉さまぁ』

『むしろあたしの妹ね。これ、決定事項だから』

『フワ君のナイト様~』


 

 羨望とも、畏怖とも……?

 

 いやまあ、このなんとも気の抜けたお嬢様を見て、災いを振りまくと思えないのは解るけど。


 というか、あれだけあのタイフォンにビビって逃げてたみんなが、いつの間にやら彼女を囲んで騒ぎ立ててるし!


 いいよな美人は! 何やったって好かれるんだから!


 

 そしてそれも違うから。玉兎。君付けで呼んでくるのはキミだけなんだから、どれだけ他のみんなに混ざって言ったってバレるんですよ?


 どうせ隠す気なんてないだろーけど。


 

「そーだよー!」


 

 そんなクラスメイトの声に、しかしユイガは呼応するように



「正義はざおーもみんなも、全部を守って悪を倒す正義の味方なんだよーー!!」



 そう、声を張りあげて宣言した。

 ふーん。正義の味方ね。

 

 よし、なら倒してくれ。あたしの胸をタダで揉んだ極悪人を。


 

「で、できればまず先生を助けて欲しいんだが……」

 


 ……あ、起きていらっしゃいましたか。


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