訓練と課題
さんわ
あれから2時間ほど寝たあたりで、メイドさんがやってきて起こしてくれた。どうもこの後みんなで食堂に集まり夕食と、明日についての説明が行われるらしい。
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「お!りく、こっちだこっち!こっちきてからの最初の飯だけど、どんなのなんだろうな!」
そう言って俺を呼んできた俊太。さてさて、こちとら健全な男子高校生だ、そりゃ腹も減るしナンならほとんど飯か女の子しか考えてないお猿さんである。飯と聞いて少しワクワクしていたのは俺も同じというわけだ。
「そういやリク、さっきは結局何か作れたのか?」
「そうだよリクくん。何かナイフとか簡単なものでも作れたの?」
「ん?あぁ、作れた。簡単な銃だけどな」
嘘である。そもそも現代の銃を再現しておいて簡単なんてあり得ない。一応、奪われてもいけないからズボンの後ろ側にベルトで背中と挟んで持ってきているが、まぁ普通に考えて抜くことはないだろう。
「マジか!?すげーな。でも、そのことは秘密にしておけよ?万が一他のやつにバレたら怖がられるかもしれないから」
「あぁ、それはもちろん」
そうこう言っているうちに目の前に料理が並べられていく。どれもうまそうだ。よかった、少なくともこの国の料理は不味そうではない。そう思い、みんなで食べた。そして、、、
「諸君、聞いてくれ、私は諸君らの今後の安全と訓練を任されたアールグド=オースティンである。私としては異世界から諸君らを召喚して我々の問題に関わらせるのは、いささか不本意ではあるが、だからこそ諸君らが死ぬようなことがないように責任を持って鍛え上げていくつもりだ。明日からは各々、使いやすい武器を選び、それにあった戦闘方法を学んでいってもらう。何か質問はあるだろうか?」
「質問なんだが、それぞれに合う武器ってそちらから支給されるのか?」
「ああ、何も明日すぐ決めるわけではないし、明日は訓練用の武器を貸し出すが、いつか君たちには各々専用の武器を支給する予定だ」
「ありがとう」
「他には?」
「じゃ私から、、、」
そんなふうにいろんな質問が飛び交ったが、とりあえず明日の武器は向こうが支給するみたいだ。
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翌朝、昨日と同じメイドさんが起こしにきてくれた。とりあえず軽く寝癖を直して、グロックを腰にしまう。万一に備えて胸ポケットに残り二つのマガジンも入れて訓練場に向かった。
もう生徒の大部分が集まっており、初の武器ということで若干みんな浮かれたように賑やかにしているようだ。
「おはよう諸君。昨日は眠れたか?昨日も言ったように今日は色々な武器に触れてもらうことが目的だ。剣、槍、斧、弓、盾、鞭、それと、それぞれにも色々な種類を用意している。まずは気になったものを手に取ってみてくれ」
そう言われ、各々気になったものを手に取ってゆく。俺は昔ラノベで読んだ知識からなんとなしに槍を手に取ってみる。初心者の場合間合いを取って敵と相対できる槍は扱いやすいらしい。とは言っても長柄武器のため閉鎖的な空間ではどうしても不利になってしまうという特性がある。しかし、基本俺は銃で戦うため、槍はカモフラージュ用でいいだろう。あとは、、、万が一銃が使えなくなった時用に、ナイフも扱えるようになっておきたい。
そんな感じで選んだのは170cmほどの槍と、12cmほどのナイフだ。もちろんほんとに使うものは自分で作るとして、とりあえず練習用としてはこの二つを選んだ。
「さて、それでは各々自分の使う得物を選んだところで訓練に入る。とは言ってもこちらとしてもまだ諸君らの実力を測りきれていない。なのでそれぞれの得物ごとに分かれて、その教官と模擬戦を今日はしてもらう」
そう言って、訓練場に何人かの兵士が入ってくる。それぞれ槍とか斧とか色々持ってるから彼らが教官なのだろう。っと、なんとなしに見ていたが、槍の教官女性か?凄いな、、、
「こんにちはみなさん。私はみなさんに槍の扱いについて教えることになりましたエリーザ=アーキナです。気軽にエリー先生と呼んでください?どうぞよろしく」
やはりこの人が教官らしい。大人の女性って感じだが茶目っ気もあって当たりではないだろうか?しかし、槍の扱い、、、いや、なんでもないぞ?別に変なことは考えてない。うん。本当だ。
「では、早速模擬戦をしてみましょう。とは言っても、まだまだあなたたちと私との間には実力差が大きすぎます。なので、あなたたちは本気できていただいて構いませんよ?」
そう言って槍を振るエリー先生。あの、、、なんでそんな風圧がこっちまできてるんですか?え?もしかして槍って、これくらいできて当たり前な武器だったりする?
「では、まず初めに、、、あら?もしかしてあなたがアマギリくん?生産職っていう」
「え?あ、はい、、、そうですけど何か問題が?」
「いえ、基本的に生産職の方は戦闘に加わる時弓矢を使われるので、、、ですが槍でも構いませんよ。別に何か問題があるわけではないので。では、せっかくなのであなたから模擬戦をしてみましょうか」
「よ、よろしくお願いします」
てな訳で、まずは俺から模擬戦をするべく先生と対峙する。他の生徒もでんなもんなのか気になるためこっちに興味津々だ。
「では、初め!」
「セイッ!」
合図と共にとりあえず槍をぶん回す。槍の長さを生かして先端付近のエネルギーを倍増させているだけなのだが、結構馬鹿にできないはずだ。しかし、、、
「ふふっ」
まるで俺の槍を撫でるかのように自分の槍を当ててくるエリー先生。そしたらまるでそれが当たり前かのように俺の槍は軌道がずれる。理屈はわかるが、それを余裕綽々とするかあの先生!
「受けてみた感じとしては、初めて槍を握ったみたいですね。しかし、考えはとても素晴らしい、力任せ、されど力任せ。あなたができる最大限の攻撃でありましょうそれを一撃目に選ぶのはなかなか難しいことです。しかし、それでは私には届きませんよ?」
「なら!」
そう言ってもう一度同じように槍をぶん回す!しかし、次は重心を手元に持っていきながら加速させてインパクトの瞬間に重心をやりさきに集中させる!理論上、今の俺に出せる最大火力!
「オラァァア!」
「!?」
さっきと同じと思っていた先生は思った以上のエネルギーに一瞬判断を遅らせる。そしてこのチートを前にその遅れは命取りだぜ!
ギャンッ!
「は?」
「凄いですね。正直、甘くみていました。もともと使うつもりのなかったスキルを使ってしまいましたね。本来、教官とは技を教えるべきなのに私としたことが力技でねじ伏せてしまいました、、、」
まじかエリー先生!?あの一瞬で俺のエネルギーを真っ向から相殺して弾き飛ばしやがった!?どんなスキルしてたらそんなことできんだよ!?
「でも、あなたの実力は概ねわかりました。次の方にしましょう。ではそこの君!」
「はい、、、」
まじか〜まじですか〜、、、勝てるとは思ってなかったがまさか技ではなく力で捩じ伏せられるとは思わなかった、、、結構悔しいな、、、
そんなこんなで今日の訓練は終わった。あの後も何回か模擬戦を行い槍の長さを変えてみたり、複数人で先生に立ち向かったりしたが、大体の実力が知れてしまった以上あれ以上の戦績は出せなかった。
だが、課題は分かった。まず何より技が足りない。力については正直スキルを使ったとはいえ今のままでは先生を超えられないことがわかった。ならば今やるべきは、装備だ。技はこの後自分で身につけるとして力の面は装備で補うしかない。今まで実戦で槍を使うつもりはなかったがあれだけ強いなら装備を本気で作っていいかも知れない!
さんわ、、、サンワ、、、サンバ?、、、サンバ!!!