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7話 ドカタだって計算する

 「ユンボ作業は俺がやるから、後の作業は頼んだぞ雄二。じゃ、行ってくる。」

 

 敷地の外側に堀を作るべく日の出と共に起き出し作業を開始する。

 昨日と代わって外堀の作業は社長。敷地内での製作は雄二。

 カズミは明け方に見張り役から解放され熟睡中。

 

 敷地入り口前車が通れるスペースを空けて、その横から掘削を開始。掘削後の土砂は敷地の外側にどんどん山積みにしていく。ちょっとした堤防さながらだ。

 掘削した土砂は土質にもよるが元の体積の1.2~3倍になる。盛り土をするのならここから更に転圧を行い締め固めていくが、公共事業でもないのでかなりテキトーに手を抜いて作業は進んでいく。

 また転圧する人材が今は敷地内で別作業中なのでそのまま放置して進んでいく。

 

 堀の幅は2m程度、深さも2m程度、1m堀を作るとその外側には掘削残土が約5㎥出る計算になり、外側の土手頂上から堀の底までは、土砂をそのまま捨てて、残土の傾斜が45度だったとすると単純計算で土手の高さは約1.2m、約3m程度の落差になる。

 

 まずゾンビは土手を登れないだろう。

 転圧してない掘削残土はフワフワでとても歩けたものじゃない。もしも乗り越えて来たとしても穴蔵の中だ。それすら乗り越えたとしても万能板のお陰で突然襲われる事も無いだろう。ゾンビはおろか、通常の人間でさえ道具も無しに進入する事は難しいと思われる。

 よくあるゾンビ映画で生き残りが同じ人間を襲撃する。そんな被害も一時的には防げるだろう。

 まずは防御を固めて次に頃合いを見計らって街へ繰り出そう。食料・その他物資を回収して回り、出会った人間は自分の気に入った人物、役に立ちそうな人物であれば助けよう。そして男なら一度は夢見るハーレムを・・・

 

 「夢に向かい頑張る姿、女がみたら惚れるだろうな、夢の内容は置いといて。」

 

 社長は独り言を言いながらも作業の手は止めない。

 その時、雑木林の中から一体のゾンビが現れる。

 

 「俺の前に立ちはだかんな!ボケ!」

 

 ユンボのバケットを地面と平行にしてゾンビの頭から垂直にペンッ!と叩きつける。横から見ると、ちょうど空手家が瓦割り試技をする様な格好だ。

 ゾンビは訳もなく潰され、ただの肉塊になった所で、掘削残土と一緒に土手へポイっ。

 

 作業は進む。

 入口正面を残し、一周終わった所で入り口でホーンを鳴らし帰還。

 

 

 「雄二、終わったぞ。頼んでたアレは出来上がったか?」

 「こんな感じっすか?」

 「おぅ、上等上等。そう言えば昨日作業してた時には何体ゾンビ野郎はでてきやがった?」

 「ん?1体だけっっすよ。それも気が付かずキャタに挟まってた例のGさんだけっすよ。」

 「たった1日だけで4倍か。このスピードはヤバイな。」

 「何がどうヤバイんすか?」

 「オマエもドカタなら計算できる様になりやがれ!雄二、スマフォ出して見ろ。電卓昨日で4x4して、出た答えにx4を繰り返して見ろ。10回繰り返すとどうなった?」

 「100万超えたっす。」

 「単純計算でそれだ。もちろん、人口密度や生き残りの抵抗なんかあるからその計算通りにはならないが、近いところはあると思うぜ。

 ちなみにこのF市の人口が約150万だ10日もすれば人口のほとんどがゾンビの仲間になってるってとこだ。だからヤベーんだよ。」

 「マジパネーっすね。早くユニックで入り口塞ぎましょうよ。」

 「そのための作業をお前に頼んでたんだぞ。なんでこの作業を指示出されたのか考えなかったのか?だからお前はいつもまでも半人前なんだぞ。ったく。」

 

 雄二に頼んでた仕事はユニックの運転席側の一面、車輛前方から後方まで一面壁の様に覆う形で5x20の鉄板で壁を作らせる事だった。いわば、移動できる壁・門の役割をユニックにさせるためだった。

 外側の土手が敷地内に出入りするために正面で切れているため、このユニックをまるで稼働する門扉の様に使用するためだ。

 

 ユニックを入り口に停車させ封鎖した後、上空から見るとCの字に掘られている敷地周囲の堀を敷地内側から掘削して、完全な円形に堀を繋げ、残土は敷地内へ。

 通常の出入りは敷鉄板を敷いて通行する。有事の際はこの敷鉄板を敷地内に引きずり込むことで、敷地周囲全て堀に囲まれた状態を作り出す。

 敷鉄板はかなり丈夫でトラックが通行しようと曲がる事はない。

 さすがに端と端に少しだけ掛かってる状態だと曲がるが、中央付近の2m程度では何の支障もない。

 守りを固める構想はヨーロッパの城によくある跳ね橋をイメージしたものだった。

 

 「これで防御は今の所問題ないな。後は攻撃だな。雄二は何か案があるか?」

 「ユンボで叩き潰す。」

 「それはもうやった。燃料切れたらどうするんだ?ここにはドラム缶5本程度しか燃料置いてないぞ。」

 「そっすよねー。」

 「ここは伝統ある竹槍なんてどうだ?」

 「いいっすね、リーチ長いし。でもすぐ折れません?」

 「そこは知恵でカバーだ。雄二も頭を使わないと脳みそ腐って耳から流れ出るぞ。

 先端に金属の槍の穂先みたいなのをつけるんだよ。幸いここにはガスバーナーはあるだろ?いくつか異径鉄筋もあるだろ?それで突き専門の槍を作るんだよ。

 そんで穴ポコへ落ちたゾンビどもを上からぶっ刺せば安全に退治できるだろ?社員の安全を一番に考えてる社長を敬え、奉れ、媚びろ!」

 「社長最後の方が意味わかんなかったけど、サイコーっす。」

 「だろぅ?だったらさっさと竹切ってこい!ホラっ、行った行った、しっしっ。」

 

 犬を追い払う様に手をひらひらさせる。

 

 雄二を竹やりの材料採取に向かわせ、スーパーハウスへ戻る。

 

 「あぁーあ、疲れたなっと。」

 

 布団にゴロッと横たわると柔らかい感触が!

 これはよく働いたご褒美を神様がくれたんだなと、その感触をここぞとばかりに楽しむ。

 「うぅーん」と声が聞こえるが気にしない。

 更に感触を楽しんでいるとだんだん湿り気を帯び始める。おぉ、神様!これで喉の渇きを満たせばいいのですね。わかります、わかります。

 うぅーんが、あぁーんに変化し始めた頃、衝撃が頬に走る。

 

 「テメー何やってんだ。」

 「うっせーゲロ子!ここは俺の布団だ。犯さなかっただけ有難いと思え。」

 「いつまでゲロを引きずってんだよ。しつこい男は嫌われるぞ。さてはHもしつこいと見た。」

 「どうやら夜の見張りがもっとしたいようだな?ゲロ子、業務命令を言い渡す。これから当面夜の見張りを命ずる。」

 「いつ入社したんだよ。」

 「社長に口答えするかぁ!口答えする悪いのは、この口かぁ?それともこのチチかぁ?それともこのシリかぁ?」

 

 そういいながら次々に揉んでいくと、ぐーで殴られた。

 もっと尊敬とか畏敬の念とか持てないもんかね。

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