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6話 小芝居社長

 ボコっ!

 カケヤで叩く音が夕暮れに響く。

 

 「すげーな、痛みを全く感じてないんだな。」

 

 カケヤ、大工の源さんが肩に担いでる木製の大きなハンマーだ。

 カケヤで殴られたGゾンビは5m程吹き飛んだが全く動きを止める気配が無い。

 

 「社長何やってんすか?」

 「ん?せっかく実験体が手に入ったから、いろいろ試してみようと思ってな、敵を知り己を知れば、君子百戦危うからず。って言葉を聞いた事無いか?

 まぁ、お前に聞くだけ無駄だろうが、そういうこった。

 次はウェルダー持ってこい雄二!」

 

 ウェルダーとはアーク溶接ができる簡易的な発電機の事だ。

 100kg近い重さのウェルダーを雄二はうんせうんせと持ってくる。

 

 「オマエアホだろ?あっちのミニユンボで持ってこいよ。

 なんだ?自分の身体を痛めつけるのが好きなのか?

 えへへじゃ無い!

 キショいぞ!次は通電実験だ。

 なにをオマエがはぁはぁしてんだよ、この変態マゾチキンが!」

 

  雄二がテキパキとマイナス端子をGに取り付ける。

 

 「それでは、これより通電試験を行います。カウントダウン5、4、3、2、1、クリア!」

 

  まるでERのドクターの様なセリフを吐きながら社長はノリノリで端子を押し付ける。

  バリバリバリバリ。

  電気が流れ、ゾンビの身体がビクンビクン揺れる。

  バチ~ン

 

 「やっぱ先にブレーカーが落ちたか。でもこれで昇天したんじゃないか?」

 

  しばし動きを止めていたゾンビは何か事も無かったかのように再び動き出す。

 

 「しぶといな、テレビで言った様に頭か首を破壊しないとダメか?次はどの程度、頭が破壊されたら逝くのか実験だな。」

 

 社長はゾンビの腕にバール突き刺し貫通させ地面に縫い付ける。もう一本のバールをわずかに残った右肩に突き刺し同じ様に地面に縫い付け動けなくした。

 

 「はいっ、今日は皆さんにご紹介するのは、このイキがいいGゾンビ。どうですか??奥さん、死に立てのピチピチしたゾンビですよ?、生前は年金をもらって国庫を圧迫するだけの経済活動にも積極的に関わらないお荷物でしか無かった存在がこうして皆さまのお役に立つべく、ゾンビとなりましたぁ。」

 

 突然テレビショッピング口調でノリノリになる社長。

 

 「雄二、サンダー持ってこい。」

 

 サンダーとは小型の円盤状の砥石が高速回転し、鉄や石を削ったり切り落としたりできる小型の工作機械だ。

 もちろん鉄や石より柔らかい人間を切断するのは容易い。

 

 「雄二、こいつの頭を開いてやれ。レクター博士の被害者みたいにな。」

 「えぇ?そこ自分っすか?」

 「オイ、やれよ。そういう下準備は助手がするもんだ。」

 

 仕方なく雄二はサンダーでゾンビの頭部ぐるりと一周切断し、まるで帽子を脱がせるかのごとく頭蓋骨をパカっと開いた。

 

 「まぁーなんてキレイな脳でしょう!」

 

 ノリノリテレビショッピングはまだ続く。

 

 「このスプーンでひと掬い、もうひと掬い、さらにひと掬い、奥さ~ん、今回だけ特別ですよー、番組終了後30分以内にご注文されたお客様には、さらにもうひと掬いしてお値段そのまま!月々の金利分割手数は弊社が負担いたします。

 オペレーターの数を増やして、皆さんからのお電話をお待ちしております。」

 

 大きめのスプーンで4回脳を掬い出されゾンビはその活動を停止した。

 

 「分かったことは、小さめの茶碗一杯分くらい脳を破壊すればこいつらはただの死体に戻るんだな。」

 

 急に普段の口調で話し出す。

 

 「社長、これどうします?」

 「その辺にテキトーに穴掘って埋めとけ、終わったらメシにするぞ。」

 

 そう言い放ちスタスタと事務所兼住居のスーパーハウスに歩き出す。

 

 「お?い、帰ったぞぉ。ってなんだその格好!」

 

 下はパンティのみ上はノーブラにシャツ1枚の、なかなかそそる格好でカズミが出迎える。

 

 「夜活躍してもらうって言ってたから・・・」

 「はいはい、そうだったねぇ?。まっ、活躍してもらうのはメシ食った後だけどな。そろそろ変態マゾチキンが帰ってくるからメシの準備をしてくれ。」

 

 そのままの格好で台所に立つカズミを後ろからニヤニヤしながら眺める。もちろん眺める姿勢はできるだけ低い体勢を維持するのが紳士の嗜みだ。

 

 「お疲れ様でぇーす。ってカズミさん何その格好!」

 「雄二、それもうやったから。」

 

 2時間後。

 

 「アイツ、絶対いつか殺す。」

 

 寒空の下、見張り台と称し設置された4段の足場の天辺で、毛布に包まったカズミは一人ブツブツつぶやき、夜は更けていくのだった。

 


 「オイ、起きろ見張りが寝てちゃイカンだろ?オラ、コーヒーだ。温いうちに飲め。」

 「優しいとこあんじゃん。」

 「じゃぁ、引き続き朝までよろしく。」

 「えぇ?」

 「あぁ?

 だってオマエこの環境で一番役立たずだろ?

 だったら役に立てそうな仕事をやるしかねぇだろ?

 それとも何か?性処理道具になるか?

 その覚悟はあったみたいだが・・・。って事で、朝まで見張り役よろしく。」

 

 とびきりの笑顔をキラッと見せて、そのままクルッと振り返り去っていく。

 

 「マジでいつかあいつぶっころ・・・」

 

 カズミの言葉は夜風に流され社長まで届くことは無かった。

 

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