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58話 米軍現る

 先ほどの爆発は放置車両を撃った様だった。

 

 「扉を開けて出て来なサイ。」

 

 装甲車の拡声器から若干イントネーションのおかしい声が聞こえる。

 

 「三島さんどうします?いきなり発砲するなんて友好的では無いと思います。」

 

 アキコは櫓の銃眼から双眼鏡で見ている三島に無線で尋ねる。

 

 「素直に投降した方が良さそうですね。装備が違いすぎる。」

 

 三島は双眼鏡から目を離さず答える。

 

 「社長と岡さんが心配ですねぇ。投降するにしてももう少し待ちましょう。」

 

 アキコは眉間に皺を寄せ漏らす。

 

 「あれは米軍ですね。多分IWK市にある部隊でしょう。装甲車は自衛隊の物の様ですが、周りにいる兵の装備が自衛隊の物ではありません。あっ!」

 

 その時、交差点を恐ろしいスピードで曲がった車が装甲車に激突した。

 ラジエーターが壊れたのか白い蒸気がモウモウと立ち上がる。

 

 「社長と隊長の車が装甲車に衝突しました。」

 「何ですって?無事ですか?」

 「白い蒸気で見えませんが、二人とも動いていません。」

 

 突然現れた乗用車にオカマを掘られた装甲車。

 周りの米兵も一瞬動けなかったがすぐに手にした小銃を社長達が乗る車に向け警戒しながら近づく。

 社長達は衝突の衝撃で意識を失っているのか動かない。

 米兵が視線で合図を交わし小銃から拳銃に持ち替え、運転席と助手席の両方のドアを同時に開ける。もちろん拳銃を構えたままだ。それでもまだ二人の意識は戻らないのか、動きがない。

 社長と岡はシートベルトを外され車外へ引きずり出される。拳銃を構えていた兵士が素早く生死の確認をし、両手を太い結束バンドで縛り上げた。

 

 「扉を開けて出て来なサイ。」

 

 装甲車からは同じフレーズが繰り返されていた。

 

 

 「アキコさん、どうする?」

 

 カズミとリンダが問いかける。裏口の警戒に行ったメンバー以外はみな不安そうな目でアキコを見ている。

 

 「三島さんからも、闘ってもまず勝てないだろうという意見です。また社長と岡さんは事故を起こしてあの装甲車の集団に捕まってます。ここは無用な戦闘を避けて投降しようと思いますが、皆さんはどうしたいですか?投降した方が良いと思う方は手を挙げて下さい。」

 

 皆はそれぞれ顔を見合わせキョロキョロしているが、アキコが手を挙げると皆そろそろと手を挙げ始めた。

 

 「わかりました。では投降しますが、小銃の半分をもしもの時の反撃の為に隠します。三島さん銃を持って裏口、小学校側の門の杉村さんと合流して小学校に銃を持って隠れてください。

 反撃の時期は状況を見てお知らせします。知らせる方法は今の所未定ですがその時まで捕まらないで下さい。その他の皆は一緒に投降しましょう。」

 

 三島は小銃と弾を受け取ると裏口に向かい走り始めた。三島の姿が見えなくなるのを待ってアキコを先頭に正面の門から投降するため姿を現した。

 

 

 「扉を開けて出て来なサイ。」

 

 相変わらず装甲車は同じフレーズを繰り返している。

 アキコ達の姿が見えると米兵は一斉に小銃を構えて警戒する。

 

 「銃をすてなサイ。」

 

 装甲車がそう言うと大人しく小銃を所持しているメンバーは、小銃をその場に置く。ジリジリと米兵が小銃を構えながら近づき小銃を回収する。英語で何か言っているが誰にも判らなかった。

 

 「膝をつきなサイ。頭の後ろで手を組みなサイ。」

 

 装甲車のハッチが開きマイクを片手に持った米兵が言うとアキコ達は素直に従う。

 米兵は1人1人近づき結束バンドで後手に拘束する。全員拘束し終わったところで、装甲車から呼びかけていた米兵が近づいてきた。

 

 「あなたたちのリーダーはどこでスカ?」

 「ぶつかったあの車に乗っていた人です。二人は無事ですか?」

 「大丈夫デス。意識がありませんが、怪我はないデス。」

 「あぁ、良かった。」

 「これで全員デスか?」

 「はい、全員です。」

 

 アキコがそう答えると米兵は人数を数え始めた。

 

 「オヤおかしですね。報告の人数と違いマス。あとの5人はどこへ行ったのデスか?」

 「ペストにかかり亡くなりました。」

 

 ペストというワードが出ると米兵の顔が歪む。何やら米兵どうしで英語で早口に相談しはじめた。そこへ無線が入る。スクールがどうこう言っているのがアキコには聞こえた。無線を切ると日本語が話せる米兵がクルっとアキコに振り返る。

 

 「あなた、ウソはいけナーイ。あなたの仲間を小学校で捕まえまシタ。」

 

 そう言うと腰の拳銃をスラッと抜きアキコに向けた。

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