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55話 気分は・・・

 これで良い。これで良いんだ。危険は排除だ。

 そう自分に何度も言い聞かせる。

 手に持ったガソリンの携行缶を何度も上下させガソリンを振りかける。

 少し離れマッチで火をつけ死体を焼いた。折り重なる様に積まれた3体の死体はゴーゴー音立てて燃えていた。

 

 

 「よーし、朝風呂も入ったし城に向かってレッツラゴーだ!」

 

 社長はマイクロバスの鍵を温泉宿の事務所で見つけた、温泉上がりで上気した頬を緩ませ上機嫌で出発した。窓を開けるとそよぐ風が心地よく鼻歌混じりに走っていた。

 マイクロバスで1時間程トコトコ走り、そろそろ城が見えてきそうな時に空に昇る黒煙が見えた。

 

 「なんか嫌ぁーな予感がするな。」

 

 アクセルをグッと踏み込む社長だった。

 

 

 アキコと杉村は黒煙を吐きながら燃え上がる炎を見ていた。

 今更火を消したところで生き返る訳でもなく、すでに亡くなっているため、また火葬しなくてはならず、そのまま燃やした方が良いと判断したためだった。

 しばらく二人で眺めていたが、杉村は切り替えが早いのか、患者が気になるのか戻った。

 一人残ったアキコは『絶対に許さない』そう心に誓うのだった。

 

 

 コンッココン

 城門をリズム良く叩く。門が開く気配が無い。

 

 「ん?誰もいないのか?」

 

 社長は首を傾げそう呟くと石垣を登り進入出来そうな所を探し始め何とか塀を乗り越え城内に進入する。気分は忍者だ。

 

 

 炎を見つめるアキコが見えた。

 

 「はぁ?、あの人どこで何してるんだろう?」

 「ん?俺のことか?」

 「ひゃぁ!」

 「すまんすまんビックリさせたな。」

 「あああ貴方、おかえりなさい。」

 「ただいま。寂しかったか?」

 「もぅ、心配しましたよ!それとやっぱり貴方が居ないと寂しくて心細かったです。」

 「すまん。アキコを置いて死なんから心配せんでもいいぞ。わははは!それより何を焼いてるんだ?」

 

 アキコは社長が不在中に起こった事を説明した。

 

 「それは大変だったなぁ。何となくこんな事をした犯人は判る。ちょっと話をしてみよう。」

 

 そう言うと社長はスタスタ歩き始めた。気分は探偵だ。

 

 

 畑ではカズミとリンダがマイロを連れて農作業をしていた。

 マイロは畑の横で寝そべって目を閉じていたが耳がピクッと動くとバッと起き上がり一声ヒャンと鳴くと尻尾を千切れんばかりに振り回しながら走り去った。

 突然走り去ったマイロを二人は唖然とし見ていたが何事も無かったかの様に農作業に戻る。

 すぐに聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 「おぉマイロぉ。そうかそうか嬉しいか?おいちゃんも嬉しいぞ。」

 

 二人は道具を放り投げると同時にマイロが走り去った方へ駆け出した。

 

 「「社長?」」

 「おう!コラコラ二人ともそんなに抱きつくとマイロが潰れる。」

 「心配かけさせた社長が悪いんだよ。」

 

 カズミが甘えて言う。

 

 「そうだそうだ罰として今日はあたしと一緒に寝るんだからね。」

 「リンダずるぅーい!順番はどうしたの?」

 

 女同士の争いに発展しそうだったので、そろ~っと離れ、後ろを向いた瞬間に社長は二人に襟首を掴まれる。

 

 「「待ちなさい」」

 「く首が・・・、しま締まって・・、逝き、息が!ぬぉぉー!離さんかい!はぁはぁはぁ。ちょっと人を探してるから、また後でな。」

 

 まだ言い争っている二人を尻目にマイロを抱いた社長は城内をスタスタ歩く。気分は殿様だ。

 

 

 「ハイ王手飛車取り。」

 「三島、さっきのナシ。ナシな?」

 

 三島に向かって拝む岡。

 

 「ダメですよ。何回目のナシなんですか?」

 「血も涙も無い奴だなぁ。」

 「コラ!男どもはこんな所で油売ってやがって!お前ら晩メシ抜き!」

 「おぉ!社長!無事だったか!」

 

 岡は立ち上がる時にわざと将棋盤を引っ掛けた。

 

 「あー!隊長、今のわざとでしょ?」

 「あぁ?事故だよ事故!」

 「そんな感じだからどんどん求心力が落ちていくんですよ。」

 「うっせー、コレが地なんだよ。」

 「はぁお前ら平和だな。山形かイチロー見なかったか?」

 「さぁな。城内に居なかったら小学校じゃねーか?新しく小学校を農場としてゾンビから解放したからそっちじゃねーか?」

 「そうか、分かった。ところで君達は女子供に作業させて恥ずかしくないのかい?子供達は大人を見て成長します。子供達に立派な大人になってもらうためにも、手本となる様な行動を取らないとイカンぞ!」

 

 怒られちゃったじゃないですかーとかナントカ言い合ってる岡達を尻目に社長は小学校に向かってスタスタ歩く。気分は先生だ。

 

 

 小学校では山形とイチローが農作業をしていた。

 

 「おーい!休憩しないか?」

 

 冷えたコーラを両手に掲げ声を掛ける社長。

 

 「いつ戻って来たんですか?」

 

 嬉しそうにイチローが走ってくる。

 

 「ん。ついさっきだ。ホレ。」

 

 コーラをイチローに投げる。イチローは難なくキャッチすると

 

 「コーラは投げないで下さいよぉ。」

 「山形もホレ。」

 

 社長が投げるモーションに入ると山形は慌てて走り寄り、手渡してもらう。

 

 「俺がいない間、大変だったみたいだな。二人は体調は良いのか?」

 「はい、杉村さんか感染する病気だから手洗いうがいをしっかりして、患者に近づくなって言われてるんで、何ともないです。」

 「そうか、今はちょっとの病気も命取りだからな。縄文人の死因ナンバー1は何か知ってるか?」

 「風邪ですか?」

 「ブッブー、虫歯だ。そんなので死ぬ?とか思うかも知れんが、以前なら当たり前の事が出来ない今は虫歯程度でも縄文人と同じ様に死ぬ可能性もある。虫歯は専門外だろうが、その他の病気は幸いにも俺たちには杉村センセがいるからある程度対処は出来る。実際今病気にかかってる仲間も全員助かるそうだ。」

 

 ここまで言って社長は二人の反応を見る。

 イチローは無表情、山形は頬を緩めほっとした表情をしてる。

 

 「そこで悲しい事実だが、治らないと見限った誰かが、一番症状が重そうな仲間を3人殺して焼いたそうだ。」

 

 イチローは無表情、山形は驚愕の表情をしている。

 社長は相手の反応を見ながら話す。気分は刑事だ。

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