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51話 久しぶりの一人

 社長はちらっとエコカーの燃料計を見る。燃料はまだ満タン近い。

 

 「コイツラは何で群れるかねぇ。しかも絶妙なタイミングで邪魔しにかかる。今回は早めに察知出来て良かったぜ。」

 

 窓は全開で音楽を最大ボリュームで鳴らしている。唇にあっかんべぇのマークで有名な洋楽がかかっている。

 ナビを操作し、太平洋側の綺麗なビーチで有名なK浜を指定した。距離は現在地から128km。今の速度だと24時間以上かかる様だ。世界は壊れてしまったが、軌道上にあるGPSが無傷で今も使えるのは幸いだった。

 タフな社長と言えども、大群を率いて道に迷えば死が確定する。

 曲が変わりアメリカ大統領、共和党の変な髪型した親父が演壇に登場する時に使ってた曲が流れてきた。社長も若い頃に良く聴いていた曲だ。

 “俺をスタートさせろ!スタートしたら止まらんぜ。

 俺をその気にさせろ!その気にさせたら止まらんぜ。”

 そんな内容の歌詞だった。社長もノリノリで大声で歌いながら進む、ゾンビの大群を率いて。

 

 「しかし、あの過激な発言をしてた親父も大企業の社長やってて給料だって2億ドル以上稼いでるのに、何故この曲を許可なく使ってたんだろうな?金をバンバン積めば大手を振って使えたろうに、金持ちの金の使い方が分からん。まぁ、もう死んでるだろうがな。」

 

 独り言を大声で話しながら進む。

 

 

 その頃、城ではアキコが報せを聞きブスっとしていた。

 

 「あの人の事ですから食事中に何事もなかったかの様にひょこっと帰ってきてて、いつの間にかご飯食べてそうだけどねぇ。でもちょっと心配ですね。」

 「んー、まぁそうだな。あいつはなかなか死なない星に生まれてそうだよな。そんで死ぬ時は、えぇ?こんな死に方?みたいな間抜けな死に方っぽいよな。」

 

 岡が笑いながらそう言うと

 

 「あはは、確かにそんなキャラクターですね。さぁー、あの人の事は置いといて、皆さん作業に戻りましょう!」

 

 岡の冗談でアキコに笑顔が戻るのだった。

 

 

 「小便小便小便!」

 社長は少しスピード出してゾンビの大群を引き離し立ち小便をしていると藪の中からゾンビが現れた。

 

 「ったく、小便くらいゆっくりさせろボケェ」

 

 社長は3本目の脚をズボンにしまわず腰の鉄筋を手に取り、現れたゾンビの頭部を破壊する。

 

 「あぁ!なるほど!音楽プラス小便の臭いでこっちに来たのか。って事はどこかで人糞を手に入れて車に塗りたくって高速に車を乗せてギアをドライブに入れておけばそれを追っかけて行かないか?我ながらナイスアイデアだ!でもどこで人糞を手に入れる?」

 

 

 数分後

 

 「分かってる。ちゃんと頭じゃ分かってる。

 今お手軽に手に入る人糞はコレしかないよなぁ。

 あぁ分かってる。でもなぁ。」

 

 まっすぐな道で、ドライブにギアを入れっぱなしにして、クリープ現象でゆっくり進む車の屋根に社長は登り、ズボンを下ろし、尻を出してしゃがんだ状態で独り言を言っていた。

 その後ろには、社長の白い尻を目掛けてゾンビの集団がウーアー言いながら追従しているのだった。

 

 

 城内の畑は先日手に入れたトラクターの活躍で牧場から持ち帰った堆肥を漉き込み、すでに完全な畑になっていた。

 

 「岡さん、ちょっと畑の面積が狭い感じがするのよねぇ。どこか近場に安全な土地は無いものですかねぇ?」

 「うぅーん、見当もつかんなぁ?」

 「それなら、城を出てすぐに小学校がありますよ。」

 

 山形がアキコと岡のやり取りが聞こえたようで話に入る。

 

 「小学校かぁ!いいな。広いグランドを畑に出来る。校舎の中でキノコの栽培なんかもいいんじゃ無いか?」

 

 岡が興奮気味に話す。

 

 「ただ、そこは僕も最初に避難してた所なんですが、コミュニティーが崩壊して今はゾンビだらけだと思うんですが。」

 

 山形が残念そうに話す。

 

 「なんだ、そんな事か。おぉーい!皆んな!近くの小学校を新たな農地にしたいが、ゾンビを掃討しなくちゃならん。今から行くが5名程ボランティアで来てくれないか?」

 

 パラパラと手が挙がる。

 

 「よーし!10分後出発だ!」

 

 

 その頃、ゾンビの大群を率いていた社長は一人呟いていた。

 

 「どうやって群れを誘導したか絶対言えないな。しかし、ゾンビの熱い視線を受けながらの脱糞は世界広しと言えども、俺だけだろうな。」

 

 ブツブツ言いながら高速道路を目指し進む社長だった。屋根の上の尻を拭いた後のトイレペーパーが風を受けてゆらゆらなびいていた。

 

 

 全員透明マントを着用したところで岡が号令をかける。

 「よし、野郎ども。作戦はさっき話した通りだ。行くぞ!」

 小学校に向かうと思いきや近所の模型店へ向かい岡が何やら箱を持ち出してきた。その足で小学校のグランドに向かい拡声器で呼びかけ始めた。

 

 「おぉーい!小学校にまだ生き残ってる奴はいるかぁ?おーい!居たら何かしら合図をくれー!おーい!」

 

 岡の呼びかけで小学校に居るゾンビはぞろぞろグランドに向かい始める。

 岡は全く気にもとめず呼びかける。

 

 「岡さん準備出来ました。」

 「よし、ギリギリまで引きつけてなるべく全部を外に出すぞ。」

 

 そう言いながら岡はマントを脱ぎだした。皆は岡に続きマントを脱ぎだす。

 学校からワラワラ出てきたゾンビによる包囲網がジワジワ狭まる。岡は気にせず呼びかけ続ける。依然生き残りからの応答は無い。

 ゾンビとの距離が残り5mと狭まった所で岡達はマントを着込み、準備した物を発進させた。

 ギュィィィィと音を立てて走るラジコンカー。

 

 「人糞塗れのラジコンだ。発想が社長っぽいが効果テキメンだな。」

 

 ゾンビはラジコンに目標を変え追い求める。

 ゾンビと付かず離れずの距離を保ちながら右に左に進路を変えラジコンは走りそのまま校門の外へ出る。ゾンビもふらふら後をついて行く。

 グランドに出ていた最後のゾンビが校門を出るのを確認し岡達は校門を閉めるのだった。

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