3話 族ッキー?
「とうとう国会議事堂前にまで暴徒の波が押し寄せてきました!」
テレビではアナウンサーがどこかのビルの屋上から実況を行っている。
TV画面の中では、波と言う表現以外に言い表せない異様な黒いカタマリが国会議事堂へ続く。国会議事堂からは蜂の巣を突いた様に次々にヘリコプターが離陸する。国会議事堂の正面玄関には戦車の姿も見える。次の瞬間、戦車から伸びる触覚が一瞬ピカっと光ったのが見えた。
砲撃だ。波が縦に一瞬裂ける。カタマリに向かって砲撃したのだった。
それでも黒いカタマリは進撃のスピードを緩めずゆっくりウネリながら国会議事堂に前進を続ける。
初めて映画以外で戦車が砲撃したところを見たな。って言うか、あのカタマリって人だよなぁ。天安門事件を彷彿させる光景だな。
画面越しで見てるとかなり他人事感がある。
日本も終わったな。一党独裁のチャイニーズと同じ事してちゃダメだろう。
次に画面は時の内閣総理大臣を写す。
いつもTVで見かける会見場ではなく、だいぶ狭い部屋での会見の様だ。
「日本国民の皆さん、今、我々は試されています。国民一人一人の忍耐を。
今こそ手を取り合い相互扶助の精神でこの困難に立ち向かう時です。
現在原因は不明ですが、死者が蘇り、生者に襲いかかるという事象が世界各地で起こっています。当初、暴動と思われた暴徒は蘇った死者です。彼らに襲われ噛まれると、個人差はありますがおよそ早いもので数分、遅くとも2日以内に全て死亡し蘇ります。
これは最前線で治安維持行動を行って犠牲となった自衛隊からもたらされた確かな情報です。
早い段階でその情報が官邸にもたらされた事は今となっては幸福なのかも知れません。深刻な被害をもたらす前に非常事態宣言を出せ、避難又は自宅待機を国民の皆様に広く告知できた事は被害を拡大させる原因の一つを抑制できたと私は考えます。
一部マスコミが大げさに戒厳令と報道した事も今となっては結果的に良い相乗効果を発揮したと思われます。
しかし、脅威は未だ去ってはおりません。治安維持活動を行う自衛隊並びに警察の戦力では日本全国の死者を眠らせるには未だ時間がかかります。
それまでの間に国民の皆様には過去に体験した事の無い忍耐を強いられる事は想像に難しくありません。しかし、必ず救助に向かいます。それまでは戸締りをしっかりと行い、出歩かないで下さい。しかしどうしても外出しなければならない際は充分な警戒を怠らないで下さい。」
ここで軍服を着た自衛官に会見は切り替わる。
「死者に対峙した場合は頭部及び頸部を破壊する事で眠らせる事が出来ます。死者一体に対し・・・・」
そんな重要な会見を生中継しているのにも関わらずテレビの前には誰もいない。
「帰れって、車通れないじゃない!早く退けてよ。」
「あ?、いちいちうるさいなオマエ。ブルで轢き潰すぞ!ホラっ、さっさと通りやがれ。」
ブルを退け、寝ゲロネーちゃんの軽自動車が通れるスペースを作る。
その時遠くからブリブリバリバリ下品極まりない乗用車の音が近づいてきて、4・50km/hくらいのスピードで敷地内に進入、ゲロネーちゃんの車にぶつかりそうになりながらも、タイヤを鳴らしつつ何とか避けるが、今度はブルと正面衝突。
衝突の衝撃でブルが少し後退する。ブルの自重は約20t、対して乗用車の自重はせいぜい2t程度、それが少し後退するとはその衝撃の強さたるや。
ブルは排土板が少し変形した程度だったが、乗用車の方は大破、再起不能の状態。
「てめーコラ雄二!あれだけ暴走族は辞めますって言いながら、なに暴走してやがんだ!」
運転席のドアハンドルに手をかけ開けようとするも全く開く素振りは無い。ボンネットはもとより運転席のドアまで歪んでいるから開くはずも無い。
「おーい、雄二生きてるか?」
ピクリとも動かない雄二に少しだけ心配そうにする社長だった。