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桜髪の乙女は貴族令嬢兄上様、弟を愛するために魔女、悪役令嬢へと堕落す。  作者: 水銀✿党員
聖なる母、道を示す父は堕ち、極悪な令嬢で火を粉を振り撒く
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裁判


 私は面白い所に来た。王宮の奥に鉄の箱で逃げられないように馬車で連れられる。手錠足枷は変わらず。ただ、運ばれて行く。目の前の騎士は装備が重々しく、ただ異常に警戒をされていた。しかし、怖いのだろう。鎧の下で汗を掻いている。


「そこまで緊張せずとも……とって喰ったりしない」


「……」


「喋ることも禁止なのね」


 静かな時間はすぐに終わりを迎える。馬車が止まり、降りろと剣の鞘で指図される。そのまま降り、私は小さく『ホゥ』と息が漏れた。神聖な空気と共に立つ荘厳な建物に教会のような装飾が太陽に照らされており、私はここが聖域だと気が付く。


「魔法を使えないような力場……そして……」


 私はこの空気を味わった事がある。そう、あの懺悔室にこのような空気、魔力……神力を覚えている。


「ほら、行け」


「ごめんなさい。見とれてしまって」


 噂では聞いていた。王宮の隠れた場所。隠された聖域を。王族のみが入ることの許された場所だ。魔法術式は絶対王権と言う強制力の縛りだろう。


「お前もここでは力を失うだろう。さぁ歩け」


「ええ、そうですね」


 だが、私には利き目が薄い気がする。どちらかと言えば……身が癒される気がする。そんな事を考えながら入るとそこは玉座だった。王の椅子、そして横どなりに椅子が並べられ机と共に多くの騎士団長らしき面々と知った顔が並び私はその子に微笑む。元気そうで何よりだ。


「さぁ、座れ」


「はい」


 赤い絨毯の上に私は座る。周りを見渡すと2階にも観衆のように騎士が並びヒナト等の面々が剣を携えて睨んでいた。厳重である。そして……ピリッとした空気が漂った瞬間に一人の男性が声をあげる。


「王の謁見である」


 そう、声を上げた瞬間に一人の成人した男性が顔を出した。初めて見る顔に彼がこの国の王だと納得する。豪華なマントに剛剣を携えており。如何にも強そうな風貌である。髭はついてない故に若く感じた。


「……」


 私は王と目が会う。吸い込まれるような綺麗な緑色の瞳にグリーンライトの家を思い浮かべた。ライト家はそういえば王族系だと思い出す。


「……お主が。エルヴィス・ヴェニスか」


「はい」


「罪人であるのに堂々とし、そして……笑みを溢す理由は?」


「はい、こんなに美しい聖域。罪人である私がこのような場所に来られる事さえ僥倖です。それに、お初にお目にかかれた事を幸運と思います」


「ふむ。悪びれもせずに楽しむか?」


「私が悪く。罪を知り。さも、裁かれるのはわかっています。何を焦る必要がございますでしょうか?」


「陛下!! この無礼者をお斬りください!!」


 側面の観衆の中から、シルバーライトの家長が顔を出す。そして……剣を突きつけて指図する。


「我が騎士をこの雌に斬られた仇。忘れはせぬぞ!!」


「あら? 私が斬ったのは騎士だったのですか? おかしいですね。無抵抗で背中を見せて逃げる衛兵、一般人かと思いました」


「何を!!」


「控えろ」


「くっ……」


 シルバーライトの激昂に王はいさめるが私はそれが演技だと見抜く。シルバーライトが私の悪を印象付けるためにだ。家の代表として敵視することも見せている。


「では、エルヴィス・ヴェニスの裁判を始める。では、発言を許可しよう」


「では、シルバーライトは処刑を所望します。多くの同士の仇です」


「ふむ。では……次にエルヴィス。動機を聞こう」


「動機なぞ、聞かぬでよろしいではないでしょうか?」


「黙れ。私はエルヴィスに聞いている」


 この王様の威圧感でシルバーライトの家長は黙る。強い強制力が働いていた。それは魔法のような物に感じる。


「発言をさせていただきます。まず、私は可愛い妹が拉致されました。名をルビア・ヴェニス。私の義理の妹です。彼女が城に拉致されたのを知り、そして……拷問されている事も嗅ぎ付け。助けるために結託し、反乱を起こしました。私はこの行為に誇りを持ち、そして……私の魔法、脅し、命令で全ての生娘操りました」


「……嘘を言っているな」


 私は黙秘する。


「喋ろ、嘘なく」


「こやつの言葉は全て嘘です。王」


「……」


 私は笑みを浮かべながら……舌を噛み千切ろうとして横に吹っ飛ばされる。唐突の鋭い打撃に驚き。そちらを見ると……メグルちゃんとロナちゃんが立っており、メグルちゃんの一撃で横に倒された事を知る。


「……姉様。申し訳ありません。ここであなたの舌を消し去るのはダメなのです」


「……」


「そうです。メグルの言うとおりです。例え、王の言葉が聞かないのでしょう姉様」


「……」


 場は騒然とし、私はぬらりと立ち上がる。二人が王の前で堂々とし。私は怒ろうかと考えた。だが……先手は王が打つ。


「その二人を救いたくば正直話すがよい。エルヴィス」


「……畜生。私に聞かないからって二人を命令させるなんてね」


「……いいや。その二人の怒りが勝手にしたことだぞ。もう少し庇うのなら……情を捨てさせなければなかったな」


「……はぁ」


 私は大きいため息を吐き、嘘だった部分を正直言う。


「有志を募り、この二人含めて皆で行いました」


「よろしい。以上が真実だ皆の者」


 王が手を叩き大きく笑う。


「仲間を拷問されているのを見捨てなかった。以上が真実だ」


 私はこの王が少し恐ろしくなる。そして……シルバーライトを見たが、彼は狼狽えていない。しかし、顔は硬い。


「私がお留守の間に多くの出来事があったようだ。拷問を見せ物としていた事もある。これに関して追々追及だ。そして……罪人は処刑とする。異議あるものは?」


「……私が……いいえ私達が異議があります」


 一人の令嬢が私の後ろから姿を見せる。小指にかわいい指輪をはめた令嬢。それもこの場にふさわしい『聖女』の姿がそこにはあった。


「……私は処刑を考えていただきたいと思います」


「『聖女』が罪人を庇うのか?」


「罪を償う機会を与えてもよろしいかと思います」


「償わせるとな?」


「元々の凶行はそこの家の独断での拉致拷問、処刑未遂です。その行為、反乱はライト家々に対する不信からの行為。国民の代表のような発言だったと思われます。弱き者を護る騎士様がこんな非道をしていたことが信じられません」


「……しかし、無罪放免にしては過剰だったと思うがな?」


「そこで、私から提示します。首都の永久追放。エーデンベルグの国境最前線への島流しを提案します」


 エーデンベルグ領とは、聖女の故郷だ。


「娘の言葉にワシも賛成だ。王よ」


 野太い声が響き、2階の場所にいる大男が立ち上がる。


「我が領土からの出禁。故郷の首都追放。最前線の場所で生活してもらおう。令嬢がそんな場所で我慢するのは非常にストレスだろう」


「ふむ。エーデンベルグ公が引き取ると?」


「ああ」


 何やら変な雲行きだ。そして……シルバーライト家の家長が口を開く。


「我が家は処刑を所望します。また反乱の余地があります。戦力も」


「だから、エーデンベルグ公へ島流しなのだろう? 危ない奴は私の城から追放だ」


「……しかし、死んだ者に顔向けできぬ」


「拷問の行為について何も思っていないのか?」


「申し訳ないですが。私の知らぬ場所の事です。この後に調査を行い事実確認をします」


「……ほう」


 なんとも、慣れた言い訳だ。私はその堂々とした姿から嘘だと思えないなと信じさせる力がある。


「処刑に拘る声に答えてあげたいが。今回は処罰とする。罪状は反乱。島流しだ」


「陛下!?」


「残念ながら。他の家は処刑反対であり、処罰で手打ちとする。以上」


 王が立ち上がり、そのまま何事もなかったように私に指を突きつけて答えた。呆気ない終わりに私は笑みを溢す。


「わかったか? さぁ、立ち、去れ」


「ええ、恩赦ありがとうございます」


 私は手枷、足枷を燃やす。周りが驚いて立ち上がり剣の束に手を置き。私に視線を寄越す。ドロドロに焼け落ちた足枷と手枷に封じらていた私の紋章が浮かび上がる。緊張が最高潮に達し、私はそのまま立ち上がって踵を返す。三人の令嬢を連れて堂々と。


 私の背中ではざわつき、王に追撃や処刑実行を行うべきではと言う声が多く出されたが既に遅く。そして……誰も王の命令なくしては動かなかった。


「……処刑するなら勝手にすれば良かったのに意気地がない」


 教会のような玉座の扉をロナとメグルは開ける。するとそこには私の妹君がおり、頭を下げる。


「「「「「姉様、お帰りなさいませ!!」」」」」


 大きい声の送り迎えに私は答える。


「ただいま。あなたたち。私は故郷を去ります」


 もう何も言わない。何故なら……


「お供します」


 一人の令嬢が代表で集まった令嬢の言葉を私に伝える。決まっていたのだ。既に私が追放される事を。逆に処刑を回避させた手腕に驚く。


「では、エルヴィス様こちらです」


 聖女のエミーリアが私に馬車を案内してくれる。そして……そのまま長旅になることを私に伝える。


「エミーリア……あなたの母親はいいの?」


「……今度は姉様に乗り換えます」


「不義理ね」


「幸せになりたいですから。早く離れましょう。勇気が騎士の心に芽生える前に……短時間で裁判終わって良かったです」


 皆にみられている中で私は馬車へと乗り込み……故郷を後にした。そして、あの王とエーデンベルグ公を思い出す。


「あなたのお父さんはどんな人?」


「甘いようで……怖い人です」


 私はどうやら。エーデンベルグ公に買われたようだ。少し、不安になりながら私揺れる馬車で欠伸をし目を閉じるのだった。きっとこれからも大変なのだと察して。





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