陛下からの来客
私の来客は減ることがなく。早いもので一月が経とうとしていた。鈍る体をどうにかしたいが……来客ばかりでどうも椅子に座っている事が多い。なので、目の前の騎士に文句を言う。
「腐ってしまいます。どうにか出来ないのですか?」
「申し訳ないですが今一度我慢を。王による判決までお待ち下さい。あと3日です」
「あら、決まったの?」
「はい、王の執務時間が決まりました。それをお伝えに来たのですが?」
「……なら椅子に座ってお茶を嗜むのはどうかしらね」
「いえいえ、都合のいいサボりが出来るので重宝してます」
私の目の前に座る。王の親衛隊である若い騎士はヘラヘラと話をする。名前はシゼルと言い、親衛隊と言いつつ。王の直属の諜報者であり。私を見定めに来たのが出会いの始まりだった。
「エルヴィス嬢、私に冷たくして在らぬ事を告げ口されてしまいますよ?」
「……偽りを語る事を王の前で出来る不忠が出来るのならすればいいのじゃない」
「これは……手厳しい」
ニコニコと目の前に居る男は笑い、頭を掻く。そう、諜報に嘘はいらない。知り得たものそのものをしっかりと報告する義務があり。それをしない者を雇うのは愚かである。この国の皇帝の若い姿の肖像画でしか見たことがないが非常に匂い立つ上に立つ者の大きさが見て取れた。逆に……騎士の腐敗がよけいに目立つ。
「……親衛隊ってどのぐらい居るの?」
「秘密事項です」
「親衛隊活動は……全部、陛下は知っている?」
「……いいえ。全て報告できないのが現状です。陛下も人の子です」
「親衛隊にも幹部がいるわけね。参謀も……」
「エルヴィス嬢……エルヴィス嬢は聡明であり思慮深い。組織の構図などイメージが出来てしまっている。あまり言い振らさないように」
「……親衛隊は噂は凄く多いし、知られてる物よ」
「……噂のままならいいですが。エルヴィス嬢がこれが真実だと言ったとき。どれだけ多くの国民を騙す事が出来るかを気を付けてください。釘を刺します」
「発言力ね。あーあ、本当に私は大きくなちゃって。身動き取りづらいじゃない」
「取りづらいですね。王も同じです。王の発言は絶対ですので……最後の決断だけ声を出すわけです」
「……騎士の腐敗を見逃してた王とは思えませんね」
「親衛隊に銀髪の騎士が居るのですよ」
「……あら、不忠ね」
「そうです。お気づかれましたでしょう? 何故一月も勾留された理由が」
「3日後ね……3日後」
「はい、3日後です。そして……そこで多くの事を暴かれるでしょう」
「……わかったわ。ありがとう教えてくれて。褒美は?」
「王からいただきます」
「本当に忠誠心が高いわね」
「そういうのが騎士でしょう」
シゼルはそのままソファーへ移動し、横になって居眠りをする。私はため息を吐き、騎士らしさねとつくづく呆れながら。メリハリをしっかりしている所に好感を持ち、静かにサボりを許容するのだった。




