自首生活3
私の元に何故か多くの人が顔を出し、私に話を伺う。そんな頻繁に城に入って罪人と謁見することが出来るこの状況に私は複雑な気持ちだった。なので……
「バーティス……どう思う?」
忙しい親友を呼びつけて聞くことにした。私の組織は解散せずに残り続けており、私の自首で事なきを得たらしい。多くの尽力の結果。私の生活も穏やかで暇である。しかし、それ故に状況が見えて来ない。
「どう思うとは……全く何も知らないと言う事ね」
「その通り、情報が全くないわ。案外、自首してもすぐに斬られるわけではないようね」
「王家預かりになったからよ」
「王家預かり?」
「あなたの行為を裁くのは皇帝になったの。国家反逆罪としてね。シルバーライト家もゴタゴタしてて今は棚上げされてるわ。逆に時間稼げて私たちは動きやすい。死刑を回避させるわ」
「……せっかく罪を全部引き受けるのよ。肩代わりさせる気はないわ」
「あなたに死なれては困るの。今は私が代理トップとして組織をまとめてるけど……あなたがいないと解散し、そのまま……抗争が始まる」
「えっ……抗争?」
「私は解散派で皆が令嬢として生きる道を。メグルは組織存続後、ロナの元で再建。あなたが助けたルビアはシルバーライトを滅するために独立する言ってる。そして各々が有権者を取り込む動きも見せており……今の状況を作った。結論、私達はあなたが育ててくれたお陰で個々が強くなりすぎたの」
「……仲良くしなさいよ」
「志が一緒なら……仲良くするわ。あなたが死んだら。爆発するだけよ」
頭を抑える。血の気が多い令嬢に育てた弊害を見た。分裂後、そこに漬け込みもっと違う勢力が戦いに参加し泥沼化するのは目に見えている。失念していた……皆が仲良くしているものかと勘違いしていたのだ。
「……理解したわ。あなたたちは腹黒いわね」
「我が強くて大変よ。まず、あなたに会うのにも喧嘩して……ブラックジャックで勝負したわ」
「でっあなたが勝ったと」
「もちろん、絶対に勝つわ。最初から仕組んだもの。カードを切るディーラーは私の妹分。それも腕のいい」
「……ひどい話ね」
「バレなければイカサマではないのよ。ここを出たらポケットの中を賭けてやる? 強いわよ? 多くの賭博場潰したから」
「あなたにそんな才能あるなんてね……驚きよ」
「私たちは爪隠すのはお得意でしょう?」
「いかにも」
二人で口元を押さえて笑う。非常に悪い笑いだと私は思う。そして……一つ。
「私は死ねないのね」
「そう、死なないで。絶対に死刑だけは避けてやるんだから」
「……期待せず。待ってるわ」
私の掌を越えて……変わって行くことに満足する。私は必要とされている事にも喜べるが妹分の成長にも喜べるのだ。
*
幹部室にバーディスは帰ってくる。既に太陽は沈み魔女の時間へと変わった世界に彼女は帰り、お迎えに他の令嬢が既に椅子に座って待っていた。
「おかえり、バーディスお姉ちゃん」
代表でルビアが挨拶をし、皆が口々に挨拶をする。そして開口一番に皆が口を揃える。
「「「エルヴィス姉は?」」」
「大丈夫、死ぬつもりなのを留める事は出来たわ。本当に困るわ……人を生かすために死ぬ騎士道精神なんて……糞喰らえよ」
「バーディス姉さん。お口が悪うございます」
「あら、ごめんなさい。そうね……汚い言葉、シルバーライトの家に取っておきます」
バーディスはそのまま自分の席へと進み、深く腰かける。座った時、末席のメグルが声を出す。
「にしても、あの姉上をよく留めさせる事ができましたね?」
「そうね。貴女たち。エルヴィス帰って来たらお叱りよ」
「……何を言ったんですかバーディス姉貴」
皆の表情が曇り、恨めしい声でメグルが問う。
「私が皆、喧嘩してる事にした。個人ごと勢力拡大のためにね。エルヴィスはすぐに信じたわ。本当に私たちっって信用ないわね」
「バーディス姉貴……あなたはなんと黒い人だ」
「知らなかった? エルヴィスが目立ってるけど。悪役らしい悪女なのは演技するエルヴィスと違い本物よ。ふふふ。さぁ、何処へ堕ちるかしらね……『新たなる夜』は」
バーディスは満足そうに微笑み。そして……会議を初めるのだった。エルヴィスのために。今後のために。




