自首生活2
自首した私は拷問もされずただただ部屋に閉じ込められる。衣食住はしっかりとしており、不満のない時間を過ごす。ただ、暇であるだけであり。妖精の遊び相手としてトランプをするぐらいであった。そんな暇な時間、ノックの音ともに男性が顔を出す。よく知った顔に慌てて立ち上がった。
「ヒナト……」
「一昨日ぶりですね。兄上……いいえ。姉上ですか? それともエルヴィスですか?」
どれも甘美な呼び方だ。悩む私はそのまま紅茶を用意する。
「拘束されているように見えないね。自由がある」
「本当にね。優遇されているわ」
「……聖女のお陰ですよ。妹の口添えがあるからこそです。お客様としては何人目ですか?」
「二人目よ」
「そうですか。妹も来ると思います。怖がらせないでください」
「……嫌よ。悪戯しちゃう」
「……兄上」
「わかった。わかった」
兄上と言われれば……恥ずかしい事はできない。
「ヒナトもどうして……肩を持つのよ」
「仲直りしましたからね。むくれないでください」
「……」
「まぁ、色々と姉上の妹君たちが暗躍しておりますので今しばらくお待ちください」
「暗躍ねぇ……別に私はもう。満足よ。ヒナトを取り戻せたし」
「……死を恐れない?」
「恐れるわ。ただ、恐れても必ず等しく来るもの」
潔く、逃げず罰を受け入れるつもり。
「エルヴィス嬢の考えはわかりました。それよりも少し……昔話をしませんか兄上?」
「……呼び方統一しない?」
「好きに呼び方を変えたいです。それよりも……兄上は兄上でした」
「何を言いたいの?」
「昔から変わってないです。昔から、私よりも素晴らしく。必ず上に立てると思ってました。逆に……兄上の足枷になっているんじゃないのかと心苦しい時もございました」
「足枷……足枷……いいじゃない!! 足枷!!」
「満面の笑みで喜ばないでください。それに……勝手に婚約者作ったりと困りものでした。友人を政略で落とす事も視野になど。心中穏やかではなかったです」
「……それは……今さら」
「ただ、二人が潔く引いたの面白かったです。兄上を受け止める器。姉上が上になるプライド。エルヴィス嬢の破天荒な行動。全てを受け入れるには少し……重たかったようです」
「重たい? まぁ、重たいわよね……うん。女性らしく生きてれば良かったかしら?」
「まさか……そのお陰で僕の元へ帰って来たんです。姉上の器に僕を受け入れてね」
「それは男としては……」
「兄上のが上です」
「……」
「まぁ、気にしないでください……それよりも今夜は泊まっても?」
ヒナトは昔のように私を慕う笑みを向け。部屋の鍵を閉める。その行動に自分は逃げられないことを悟った。
「……ヒナト。少し不謹慎では?」
「不謹慎だからこそ楽しいのです」
「ここで私が抵抗できないの知ってて襲うの?」
「エルヴィス嬢を襲うのは楽しいです」
「けだもの」
私は諦めて彼に体を委ねたのだった。




