新たな協力者
私は父上とともに城の前へ向かう。父上の集金に付き添いによって入場する事が出来た。
「エルヴィス……鎧を着ていくのか」
「ええ、父上。私はやる気ですから」
「……妻によく似てる」
「母上の子ですから」
「血を色濃く継いだな」
「はい」
「……」
父上は城の衛兵に入場許可証を見せ、城門を潜る。兜も着けず軽装の彼らは低級の衛兵だと思われた。知っている私には落ちこぼれである事も耳に入っており。衛兵落ちと言う言葉を思い浮かべる。
故に……対応は非常に素っ気なくぶっきらぼうだ。だが、私は愚痴を言わず。そのまま城に入れた。
「……エルヴィス。他へは行くなよ」
「わかっております。父上……」
私は城の中を覚えていく。父上の背中に付き従いながら、前もって手に入れた情報と照らし合わせ。静かに偵察する。すると……父上が止まり、私も同じように止まった。目の前にだれかが立ち塞がり父上を拒んでいるようだ。
「……どちら様ですか」
父上の質問にその白い衣装の少女は答える。
「エミーリア・エーデンベルグと申します」
その問いに私は父上の前へと踊り出た。
*
城の一室。私は父上とはぐれてエミーリアの背中に付き従い。彼女の言われるままに空室へと導かれる。空室には椅子と机、それも簡素な物だけ置かれていた。
「人払いを済ませています。何もご用意できないことをお許しください。エルヴィス嬢」
「いえいえ、何の風の吹きまわしか……わからないですけど。その表情見るに……冗談でもないのでしょ」
「……」
父上の前に現れた彼女は『相談したい』と申し、私は何を相談するのか気になり彼女についていったのだ。罠だろうが……切り抜ける自信はある。
「相談ごと……は……私は『敗北宣言』を出します……」
「敗北?」
「エルヴィス嬢に私は……敗けを認め……大人しく家に帰ります」
なんとも偉い発言だと私は舌を巻く。これは思った以上に厄介である。
「なるほど。敗北者を痛める趣味はないから……手打ちと……中々考えたわね」
「えっと……そんな事は考えていないです。ただ……私はシルバーライトの家を『裏切る』つもりです」
「……庇護下でしょう?」
「監視され、自由恋愛を許されないの嫌なんです。エルヴィス嬢……エルヴィス嬢が私を暴いた時……私は多いに悩みました。振り向いてくれない男を追うのを止めます。だけど……私は自由はなく。何も始められないのです」
「……それが令嬢に生まれた者の人生では?」
「エルヴィス嬢にはそんな物がないように見えます」
「令嬢の落ちこぼれのための場所を作ったのだから……そうね。まぁ、実際は人材発掘も目的としてるけど」
「……私には自由が眩しく思えます」
「ちやほやされる人生も悪くないわよ? 『聖女』さま」
「……偽りを止めます。私は……私のやり方で変わって行きたいです。だけど……どうしたらいいかわからない。どうしたらいいと思いますか?」
「それ、私に聞くの……私に聞いてもねぇ……」
「それならば何故。この指輪をお渡しになったかを教えてください」
「それは私と言う者の圧力行為です」
「……小指に嵌めてしまってもよろしいでしょうか?」
「え、と……一番下から始まるわよ。それに……なんと言えばいいか……」
「覚悟します。姉を違えたと思う私に……力を貸してください」
「……メリットないわ」
「囚われている彼女と……ヒナト義兄さんの事は諦めます」
「場所……ルビアちゃんの居る場所ね」
「はい。この紙に残しています。それと……彼女は殺されてしまう。私には救う事はできません……」
「……やっぱりそうね。まぁいいわ。奪うまでよ」
私は彼女から紙を貰う。
「奪う……やはり、風の噂は本当ですか?」
「噂は本当かは、終わってから確認するといいわ。メリットないわよ。あなたにとって……悪事だから」
「……ないと言うのは私の事だったんですか?」
「ええ、そうよ。正直、私たちは私たちで悪を行う。それに噛むのはよろしくないわよ」
「……私は遅かったのでしょうか?」
「ふん、私が生きていれば話を聞いてあげるわ。それまでこの情報代でこの指輪をあげるわ」
紙を取り、小さく丸めてポケットに隠す。朗報な情報に私のつけていた白金の指輪を一個置く。彼女はそれを受け取り……頷いた。
「……何をするかわかった。わかったからこそ……私はあなたに恩を売れることを考えるわ。その時……お返しをお願いします」
「……ええ、わかった」
私はただ静かに。頷き部屋を出る。そのまま父上とはぐれたと言い訳を使い。城の中をふらふらと歩き回ったのだった。




