拐われた銀髪の妹
早朝、私はバーディスにお呼ばれする。何かなと思い顔を出した時に部屋がドロッとした空気が含み。背筋がピンッとなる。
ただらならい妹分の表情にこの前の女神の話で参っているのかもしれないと思い優しく声をかける。
「何かしら?」
「姉さま!! ルビア姉さまが浚われたようです!!」
口を開いたのはロナであり、バーディスが『落ち着きなさい』と言い、私に事の顛末を説明する。メグルは目を閉じ続けていた。
「昨日、あなたの家にルビアは帰ってないわよね」
「今は別の家です。襲撃に備えて……家を与えたわ。魔法街に」
「並ば……ルビアが拐われたのはあなたの一手ではなく。シルバーライト家の独断ね」
「……見えてこないけど。シルバーライト家にルビアちゃんが拐われたの?」
「ええ、他の会が所有する酒場の店主が伝えてくれたわ。シルバーライト家の騎士が睡眠薬で眠らせてそのまま。情報屋は見てるだけで城につれていった所までみたそうよ」
私は深いため息を吐く。一人で何をと思うが……
「軽率な行動したルビアちゃんが悪いけど。それを連れ去ろうとするなんて……一体何を考えてるのかしら……」
「エルヴィス。私はルビアの情報に恐怖したのだと思うわ。シルバーライトの家出娘よ、元々魔法街に逃げ込んでたらしいじゃない。それは表へ出てきたのよ」
「バーディスはそう考えると。私は……そうね。ルビアがシルバーライト家の者である宣言すると。シルバーライト家を裏切る者がでるかもしれませんね」
「そう、予想しか立てれないけど。逆に多くの不利益をシルバーライト家が抱える事になるでしょうね」
「故に今のうちに始末したと?」
「……」
バーディスは口を閉じた。そう、私は最悪な展開を予想する。口封じなら殺すと。
「……エルヴィス姉貴。確認出来る方法ないかな?」
「焦るな。まだ死んだ訳ではないわ。冗談よ」
「……姉貴?」
「私なら……拷問して吐かせる。その後に殺す。または餌になるまで頭以外ミンチにして……知り合いか誰かに見せる方法も考える。『あそこで動物が食べてる餌ってなんだと思う』ってね」
「「「ひえ……」」」
「あなたたち。冗談なんだから笑いなさいよ」
「エルヴィス……笑えないわよ。図太いわね……あなた」
妹分全員が身震いをし、私を見つめた。人の血を見てきただろうにびびっちゃって情けない。
「まぁいいわ。でっ……あなたたちは私に相談と……」
「ええ、エルヴィス。ここは満場一致ではないの。私は……今は事を構える訳にはいけないと思う。今は監視もある」
「メグルは?」
「妹分が拐われたのを黙ってるのは……嫌です」
「メグルに同じ」
「ふむ。満場一致ではないのね」
私は彼女らの意見を聞き、そして判断を任される。
「エルヴィス、メグル、ロナ、あなたたちは私の意見に異議はないわけね」
「ええ」
「姉貴を信じてる」
「右に同じ、左に同じ、ロナ・アウルムライトとして」
3人が私を射ぬくような鋭い眼差しで言葉を待つ。私は私で大きく大きくため息を吐く。天秤にかけるのは今の状況と一人の妹。事を出せば今の聖女もどきとの攻勢に陰りが生まれ、騎士に睨まれ。同業者の約束を破る。逆に今動けないからこそ、拐われたとも考えた。
「軽率な行動なルビアの過失ね」
「姉貴は……そういう判断ですか……」
メグルが悔しそうな顔をする。全く何に残念がっているのかわからないが私は続ける。
「だけど、ルビアを拐う事を奴らは知らないと思わない?」
「どういう事でしょか? エルヴィス姉さん」
「ロナ……あなたならわかるでしょう? メグルを拐ったあなたは誰に怯えていた?」
「エルヴィス姉さん!? もしや!?」
「姉貴!!」
「エルヴィス!?」
皆が私の言葉に察して立ち上がる。
「私は如何なる時も妹分を見捨てない。あなた達は誰についてきた!! 私に必ず護ってもらえる!! その信頼によってここまでついてきて大きくなったのでしょう!!」
言葉に熱を込めて私の意見、もとより決定を言い渡す。私が言えば、白は黒となるのだ。
「私の名前はエルヴィス・ヴェニス!! ここで動かずしてこの名前を張れないわ!!」
「……はぁ、エルヴィス。いいのね……茨の道よ?」
「ならば私が茨を全て焼き付くし道を作ってやるわ!! あなたたちに問うのは……ついてくるか去るかよ」
「もう、エルヴィス。行くわよ!!」
「姉貴……あねきぃ……」
「姉さん……」
「さぁ、決まったわ。では、これからはルビアが生きてるという前提で奪回作戦を考える。城に居ることは確定ね?」
「確定なはずよ。エルヴィス」
「では、私の金庫開くわ……喜びなさい。血の抗争よ」
私はそういい放った。
*
鞭が叩かれる音と悲鳴が聞こえる。母上の怒声に俺は……一人。拷問室を見張った。
聖女らしき者とそれの母親だろう女性が顔を出し、俺の守る拷問室へ入りルビアを癒す。
死なないように回復する祝詞を謳う。
だが、それは……逆にどれだけ痛めようと死なず回復出来る事を意味し、死なないように手加減をする必要が無いことを意味していた。
故に……俺の親族全員の前でルビアは痛めつけられる。
俺の弟をずっと痛め続けるのだ。
「アルベルト、見に行かないのか?」
部屋の中へ、見に来た親族が声をかけてくる。
「……趣味じゃない」
「拐っておきながら。言うねぇ。ここに居るのもそれが理由じゃないのか?」
「ただの衛兵だ。死なないように注意するためのな」
「そうか、まぁいい。俺は好きにさせてもらうぜ」
「……」
中の拷問室は非常に広い。異常なほど。そして……それは見世物でもあるということだ。
「……」
俺は下品な笑いの声に悪態をつき、その場を離れる。拐って改心するかと思った弟は……強情にも耐え続けることに心を乱されながら。




