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桜髪の乙女は貴族令嬢兄上様、弟を愛するために魔女、悪役令嬢へと堕落す。  作者: 水銀✿党員
聖なる母、道を示す父は堕ち、極悪な令嬢で火を粉を振り撒く
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聖女の役目


 エミーリアは多くの騎士に護られながら首都中心にそびえ立つ権力の象徴の中へと導かれた。彼女は兄上であるヒナトも一緒にと思ったが彼に断られ一人だけで迎えられる。


「聖女様、馬車でお疲れはございませんか?」


「いいえ、お気遣いありがとうございます。騎士様」


 エミーリアは微笑み、姫のように扱っていただける今を非常に嬉しく思う。生前と比較し、何も変わらない人生よりも遥かに輝かしい今に酔いしれた。


「今日、お越しいただきありがとうございます」


「いえ、こちらこそ」


 聖女は社交辞令をのべて、騎士たちの機嫌を伺う。そうする中で一人。銀髪ではっきりした顔つきの美男子が城から護衛も持たず歩いて聖女の前で頭を下げる。若く見える彼は深々と頭を下げる。


「ようこそ、聖女様。ガネット・シルバーライトともうします」


「こんにちは。エミーリア・エーデンベルグです。お呼びいただきありがとうございます」


「どうぞ、聖女様こちらへ」


「はい」


 シルバーライトと言う名家の彼についていき、エミーリアは豪華な庭園のガセボへと導かれそこでお茶の用意を待ち。世間話をする。呼んだ彼はその話の中で自分がどの位置かを説明する。そう、家長候補であることをエミーリアに伝えたのだ。そして、お茶の支度後落ち着いた時にシルバーライトが呼んだ理由を伝えた。


「聖女様、実は……お呼びした理由は二つございます」


「はい、なんでしょうか?」


「私の婚約者になっていただけませんか?」


「え!?」


 エミーリアは驚く素振りを見せる。だが、彼女はそんなことだろうと思っていたのだ。断る理由を彼女は色々と考える。


「もちろん、お断りしてもよろしいです。こればかりはお願いをするだけでございます。いきなりの事でしょう……時間をお取りします」


「……は、はい……その……えっと」


「エーデンベルグ公には許しが出ております。いいえ、聖女様に対して婚約者候補は多いと聞いております」


「そ、そうですね。その……まだ若く。そのわからないのです……」


 エミーリアは嘘をつく。結婚と言う意味を、しかし……彼女は知らない。結婚で起きる事案の数々を。


「懇意にしている方が居るのでしょう。そうですね……最近兄上となった方でしょうか? 非常に仲のよい兄弟だと言うことを聞いています。しかし……そろそろお決めにならなければいけないと思います」


「……はい……」


「シルバーライト家はあなたに多くも投資をし、あなたもそれに見合う行いをしていただいております。負傷兵の治療お見事です」


 エミーリアは身振りをする。圧迫された言葉と共に、お断りするには厳しい雰囲気を感じながら。活躍は多くの方の耳に入り、そして……多くの人に権力を借りているエミーリアは今さっきの酔いが覚めていく。


「実はエーデンベルグ公から、お話をいただきました」


「父上はなんと?」


「婚約者をエーデンベルグ公。そして、エリーゼ令嬢がお決めになるそうです。今、多くの方々があの領地へと旅立っておいでです」


「……」


 エミーリアは来てしまったと感じる。父上と母上が選ぶ結婚。自由のない結婚に不満を貯める。生前は身分関係のない恋愛は許されていたと。


「……私は兄上と」


「エミーリア姫の兄上に非常に愛を向ける令嬢がいらっしゃるでしょう」


「そんな令嬢は……」


「エルヴィス・ヴェニス。多くの男装した令嬢を連れ……『ガンツ』と言う商品郡を立ち上げている武器、服商人」


 エミーリアは息を飲む。聞きたくない名前であり、目障りな名前だった。最近では、聖女と悪女として対比され評価される。そして……聖女に悪感情がある者の陰口には必ずやエルヴィスの名前がある。『エルヴィス嬢よりも』として。今まで、皆が褒めちぎってくれていた事が変わってしまったゆえに。


「……憎々しいですか。彼女が」


「それは……もちろん。兄上を苛めていた家の娘です」


「『エルヴィス日記』と言う本では……売られた弟を助けるいい姉であると書かれています」


「それは……彼女が書いた本で主観ではないです」


「あなたのお話も主観ではないでしょう」


「くっ……なんなんですか!! 私をイライラさせて!! なんなんですか!!」


「それがあなたの本心ですね。わかります。目障りですよね。彼女が」


 ガネットは紅茶を飲み干し、そして……腕を組んで話を始める。それを見つめるエミーリアはハッとして気を落ちつかせる。聖女らしくないと。


「エルヴィス嬢は異常に早く。権力を手にしてしまってます。彼女に荷担する者が多い事もあり、なんとあのアウルムライトの令嬢さえ彼女に対し怪我をさせられて下しており……その行為は目に余ります」


「……」


「行為に目が余りますが、彼女に対して全く何も出来ないのが現状です。それも……うまく立ち回られており。あの傍若無人の令嬢が本当に邪魔なのです」


「シルバーライト家の人達はあの方々を嫌いなのですか?」


「嫌いです。エルヴィス嬢の妹……ルビア・ヴェニスが特に邪魔です。あの令嬢はエルヴィス嬢に護られている安全地帯で我々に対する悪噂を流しております」


「私に何をさせようとするの?」


「エルヴィス嬢のバックには何が居るかわかりません。故に私たちはそれに敵対出来る方を支援をしようと思っています。そう……あなたに対して。婚約理由は正統性を出すために必要と思うのです。婚約したくないと言うのであれば手伝っていただけないでしょうか? 兄上も綺麗のままがいいでしょう? 綺麗なシルバーライトの令嬢がいっぱいいますので」


 エミーリアはこの時になり感じる。断わる事が出来ないと。


「どうですか?」


「……兄上は私のです」


「エルヴィス嬢。エーデンベルグ公に婚約者候補で名前が上がるそうです」


「!?」


 初耳にエミーリアは立ち上がる。あの糞令嬢がと悪態をつきながら。


「エーデンベルグ公の耳にも入り、近々……クライン・エーデンベルグの婚約者決めもすると話がありました。あなたのついでですがどうもその動きも活発でして……敵対国の令嬢も入ってくると言う噂です。これを仕込んだのもエルヴィス嬢とも……」


「そんな……そんな……」


「そろそろ、現実を見たほうがいいかもしれません。聖女様」


 エミーリアは苦渋の表情で言葉を溢す。


「なんで……くぅ。エルヴィス」


「その姿で私たちは共通の敵を持つことがわかりました。聖女様……エルヴィス嬢の学園内。色々と手を回しますので頑張ってください。令嬢、騎士をお好きに使えるようにします」


「……ありがとうございます」


「いえいえ、同じ敵を持つのでね」


 シルバーライトのガネットはそう言い。席を立ち、エミーリアを置いて離れる。聖女を置いて行く行為を咎める者は誰一人もおらず。そして……エミーリアも決断する。エルヴィス嬢と戦うことを。




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