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学校へ行きましょう兄上


 登校日、短いなれないスカートにあたふたしながら弟の背中を追う。


「本当にいかないといけないのか? そんな、お金はないだろう。父上が事業失敗したからな」


「兄上。私は特待生制度で無償になりましたし、それに父上は持ち直しておりますし、問題ございま……制服似合ってます」


「最後まで言い切ってほめろ。あと気持ち悪い……ほめるな。ぶつぞ」


「どうぞ」


「ぐっ、簡単に頬を出すな!!」


 俺は足を軽くふんずけるだけに止める。少しイライラはするが……いや。学園行く必要ない。今、思えばなぜノコノコついて来たのか。


「引きこもりになり……人生を閉じよう」


「今の一瞬で兄上の頭の中で何があったかわかりませんが、簀巻きにしてでも連れていきますよ」


「簀巻き……そこまでか」


「はい、そこまでです」


 ヒナトの圧でやってきたものの。男でない姿に困惑する。というよりスカートは歩きづらいし不満しかない。


「兄上、そんなむすっとしないでください。笑顔大事ですよ。学園では姉上といいますし、私の立場もございます。お分かりですね?」


 釘を刺すヒナト。意味はもちろん、迷惑かけてはいけないと思うが俺は男に戻りたい。それはできぬ相談だ。


「そうだな。笑顔が大切だ。だが、俺だって意地はある。お前らが女としては無理だと諦めさせるため努力する。迷惑をかけるだろう。すまないな……いや、謝る必要ないのでは?」


「まぁ私が悪いですからね。友達出来るといいですね」


「……友達か……」


 出来たこと無かったな……どうしてだ?


「なんで友達出来なかったのだろうなぁ」


「……」(知ってるけど黙っていたい)


「どう思う?」


「わかりません」


「そうか……ヒナト。お前の友達は?」


「多くはありませんが。親友はいます」


「そっか!! それは良いことだ!!」


 俺は頷きながらよかったよかったと思うのだった。一人でなく苛められてもいないのは良いことだ。


「……」


「ヒナトどうした?」


「いいえなんでもございません」(はぁ、全く……危ない危ない)


 ヒナトがぺちぺち頬を叩いていた。気合いを入れている。同じように気合いを入れる。


「……まぁ、俺も友達ぐらいできればいいなぁ」


「兄上ならすぐです。本当に……」


「買い被るな。そんな簡単にはいかないものだ」


「……」


 ヒナトの後ろをついていき。俺は何故か……女でありながらも。学園の地を少しだけ。少しだけ気になるのだった。ヒナトの学園に興味があるのだ。


「これが……ヒナトが通っている学園の景色と空気かなるほどなるほど……いい場所だ。いい教育も出来ているのだろう」


(兄上……そこ、興味が自分主体じゃぁないんでしょうね)


「……ふむ」


 俺は満足し帰ろうとするが、それに気づいたヒナトにそのまま担がれて無抵抗のまま連行されるのだった。





 多くの令嬢が俺を見る中で疑問を持っただろう。そう、腕を後ろで縛られているのだ。そして口には轡をつけられており。完全に罪人の姿をさせられていた。もちろん、逃げようとした結果とヒナトに対しての罵声が煩かったためである。


「すいません……このクラスに置いてやってください」


「もご……」


「逃げないでください。ここでしっかりと令嬢教育を行ってくださいね。私は特別教室へ向かいます。それでは……私が離れたときに外してください。先生」


「ええ、もちろん」


「もご……」


 お仕置き鞭を腰につけた令嬢が俺の口の紐を取る。もちろん廊下に向かって叫ぶ。


「ヒナトオオオオオ!!」


 ベシ!!


「つぅ!!」


 そしてわかっていた。躾棒によって叩かれる事を……


「淑女たるものそんな大声で叫ばない」


「くぅ……」


「中々の暴れじゃじゃ馬なようですね。これからこのクラスでしっかりと素養教育を受けてもらいます」


「……」


「返事は!!」


「はい」


「よろしい。ではあの空いてる席へ」


「その前にこの紐をお願いします」


 俺は自由な身となった手で鞄をもち、中で堂々と机に座った。視線を向けられるが気にせずそのままふんぞり返るのだった。きっと近寄り難いと思われてる事だろう。






「ヒナトオオオオオ!!」


 膨大兄上の声が廊下まで響き背中に染み渡る。昔からの怒られた時の声だった。満面の笑みで歩きながら特待生用の別室に向かった。すでに別室には二人、特待生の方々がいらっしゃるのだ。


 学園に選ばれた3人。多くの理由でここに入れられる3人は皆、ライバルであり敵同士な事が多い。喧嘩をする文化であり、よく争われてきたのだ。


 だが、今期。入学したばかりの彼らはそうはならなかった。一人のせいで。


「やぁ、遅かったな。ヒナト」


「ヒナトさん、廊下であなたの名前を叫ぶ人がいましたね。知り合いですか?」


「……兄上ですよ」


「「ぶ!?」」


 眼鏡をかけた涼しい表情だったセシルと我が強そうなハルトが紅茶を少し吹き出し、ハルトがセシルにハンカチを投げる。セシルはそれで口元を拭き、ハルトは別のハンカチを使う。


 私は言っていたのだ。彼らに……兄上女体化計画の旨を。


「やると言う事は本当に……」


「マジかよ。ホモだったのかよ……」


「引かれて結構です」


「うぁ満面の笑みだ」


「……申し訳ないですが。距離を取ってください」


「そんな寂しい事を言わないでください。驚いてるのはこっちなのです。今年の特待生はイケメンだと驚きました。眼鏡の君に野生身もある君。なかなか楽しい学園生活になると思っているのです」


「「……」」


 セシルとハルトは今年入って来たことを後悔し始める。狂犬と一緒の部屋に入れられる事を。


「安心してください。興味はありません……兄上は別ですけど」


「……お前の兄上がどんなのか気になるな。後で会ってこよう。ヒナト、呼んでこいよ」


「たぶんですが。来ると思います。それも……怒った状態でね。期待しているといいです。兄上は、本当に綺麗な姉上でもありますから。令嬢教育なんかいりませんよ」


「……おい。セシル」


「僕に振らないでくれハルト。本に逃げさせてくれ……神の奇跡である事は気になりますが関わりたくない」


「セシルどの、ハルトどの。我々は友達ですよね?」


「「絶交!!」」


 今年の選ばれた3人は本当に仲がいいのだった。












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