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回想・兄弟の日々①


 私の第一、男性恐怖症の弟と仲良くなろう女装作戦で一月がたった。予想よりも大きな大きな功を残す。何故なら……そのままベットに一緒に入れるぐらいに仲良くなったのだ。


 女装がバレる恐れがあったがなんとか、貴族令嬢御用達の促進剤なども使用し地毛の髪の毛も伸ばす。なんとか肩に当たるまで伸びたのでカツラを使う事もしなくて良くなった。

 

 夜な夜なカツラの手入れは手間であり、臭いも出るし、外れての男バレも怖かったが。これでなんとかその怖い事は避けられる。


 そしてカツラを外して今夜、初めて弟と一緒に眠れるのである。弟は髪色変わった事を驚いていたがもとからそんな髪色で染めていたことを伝えると納得してくれる。


 鵜呑みする弟は本当に可愛らしく感じた。逆になんでも信じる怖さもあり。しっかりと物事を教えていかないといけないと思う。そんな事を思いながら私は鼻歌を歌う。


「ふふ~ん♪」


「ニイちゃん? どうして鼻歌?」


「今日、初めて一緒に眠れるのよ? ワクワクしない?」


「……ちょっとだけ」


「ええ~まぁうん。大人げないかなぁ確かに」


「……」


「でも、ほら!! ふかふか!! 早く寝ましょ」


 私はベッドに入り、布団を上げて弟を誘う。もちろん弟は何も疑いなく入り。私と顔を向き合う。弟の表情は不安げであり、目も何処か力が込もっていないが。その瞳にはしっかりと私が写る。可愛い弟の頭を撫で撫でし、弟はそれを受け止めてくれる。


 そう、私の事をずっと受け止めてくれる。


「ふふ、ちょっとまだ眠くないね」


「……うん。ニイちゃん。聞いてもいい?」


「なぁ~に?」


「……ニイちゃん。なんで化粧しないの?」


「!?」


 背筋が凍えたように温度を感じなくなり。冷や汗をかく。驚き、暑くもないのに少し発汗する。男と今はバレる訳にはいかない。


「えっとねぇ。どうしてそう思うの?」


 頭を全力で回し、言葉を濁して理由を探す。化粧をしないのは化粧とか全く気にしてなかったからだ。


「……えっとねぇ~女性ってこう……化粧する生き物だって……色んな人がしてるから。不思議に思ったの」


 理解、弟の母上は娼婦。化粧をしっかりとしていたのだろう。この家にいる、メイドや女性使用人は化粧を確かにしている。なら……女性と思われている私がしないのは変だと思うのだ。知識を捻り出す。


「化粧はね……家の中では私はしないの。外で舞踏会や男と会うときに綺麗に見せるためにするの。それに化粧ばかりしてると肌が荒れたりもするから。肌を休み休みさせないといけないのです。もちろん、時と場所で私も化粧して外に出ます」


 私は嘘を重ねる。弟に嘘をつくという心苦しい行為だが。仲良くする事を優先するために私は重ね続ける。いつか言える日が来るはずだと思う。その時はきっと弟は男に対して少し耐性を持つようになっていると信じる。


「ふ~ん、わかった」


「偉い~わかるよね?」


「……うん」


「……」


「……」


 沈黙。何を話そうかと悩み、本でも読もうかと思ったが全部売りに出してしまった。新しい本はまだ届いていない。何もする事のない布団の中で……ふと弟の手が私の手に触れる。怯えるようなその手を私は繋ぐ。


「……おやすみ、クライン」


「……怖い……眠れない……」


「怖い?」


「怖いの……目を閉じたら。男の人がいっぱい笑ってる……」


 私は言葉を聞き、強く下唇を噛む。そして……そのまま弟の頭を掴み自分の胸に押し付ける。


「ニイちゃん?」


「目を閉じて。想像して、考えて……私のことを、ずっとずっと。ここにいるから」


「……うん」


 弟は目を閉じ、私はその弟を抱きしめ続ける。すると静かな寝息が聞こえ……安心しゆっくりと手を離した。私の服を弟の手が強く掴み。離さないように私を繋ぎ止める。


「おやすみ……」


 私は離れることをせず、そのまま弟を抱いて目を閉じた。次に起きた時にまた笑顔でと思いながら……弟との未来を夢見る。






 

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