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回想・兄として私は……


 父上から、全てを聞いた。父上は二人の女性と関係を持ち……そして母上がそれに勝ち。結婚したのだ。その時のいざこざは使用人の内緒話を盗み聞きして聞いていた。ただ……その負けた女性にも子供が出来ているなんてのは初めて聞いたのである。


 隠されていたと言うより、父上がそれを見ないようにしていたのだろう。大人は都合のいい事は見えなくなる。そして、それを聞き、考える。


 もしも、私の母上が負けていた時はあの怯える少年と立場が逆転していた。しかし、そのもしもは起きず。私は幸せを謳歌し、少年はそれを失ってしまった。


 その結果が今であり。そして……私はショックとともにある決心が生まれる。与えられた部屋で、それ言葉にし、紙に書き。心に刻んだ。


「幸せな家に生まれたなら……それを使い。弟を幸せにするのが私の使命です」


 だからこそ。


「……笑わせて……一緒に楽しんで私より絶対に幸せにする!!」


 それが兄として私の役目と信じる。尊敬する騎士の方々、剣の女神の信念。多くの情報で私は心を固める。決めたらとにかくすぐに行動を移さないといけない。


「とにかく逃げられないようにしなくちゃ」


 今日も医者が来ており、暴れていたらしい。暴れる元気があるので健康は良くなって来ている。だけど……怯える理由を確定させてない。今あっても怯えるだけだ。


「先生に聞こ!!」


 だからこそ、知る人。わかっている人に聞く。私は……知識のない子供であり。わからない若者なのだから。







「あのちょっとお願いがあります!!」


 医者から話を聞いた私は次の行動に移す。今日の事にならないだろうから、今日はその下準備である。私は廊下を走り目的の男性を探して見つけ出し、お願いをする。必要な物をメモに書いて。


 その男はアントニオと言い、父上の部下である。アントニオと言う男は『えっ、自分に!?』と声を出して私の手紙を手にしてくれる。眉を歪ませる。それはそうだ。そんな物を頼んでいる。


「えっと、エルヴィス様。こんなものが欲しいのですか?」


「ええ、もちろん明日までに用意して欲しい!! 意図は弟のためです!! 医者曰く『今のままでは会わせる事は出来ません』を突破するための方法です」


 熱意を向けて、アントニオにお願いする。彼は父上に負けた強敵の商売人だったらしいが今では仕事仲間で、父上に相談と報告によく上がってくるし。人柄もよく、私はこの人はまたいつか自立すると思っている。借金持ちの信頼を置ける商人だ。


「父上から、弟のためにならとメモの予算をもらいました。『弟のためなら出そう』とここに約束も書いてます」


「エルヴィス様は用意周到ですね。わかりました。納期はちょっと難しいですが。3日後に必ずや、お届けします」


「ありがとう!! おじさん!! やはり納期はかかるか」


「ええ。私の力でもそこまでです。あるものでご用意させていただきます。お買い上げありがとうございます」


 そう、この人は非常に小さな商品も届けてくれるのだ。嫌な顔をせずに。だから……この人にした。


「この恩は忘れません」


「いえいえ、恩を返してる所ですよ。エルヴィス様の父上には借金してますしね」


「返すつもりのない借金の事ですか? 父上は返済しなく(?)てもいいと思ってますでしょうに」


「返済したら縁が残りません。次、いつ金が必要かわからないので増額用に用意してるんです。それに守ってくれるんですよ。借金を返さない場合」


「そうですよね。借金返せなくなったら困るの父上ですもんね」


「ええ、これもあの方を動かす方法です」


 そう言いながら彼は色々とメリットを言う。だが私は知っている。父上の人柄に憧れて返してないことを。借金を返し終えたら本当に放逐であるのだ。自由であるが、それが彼にとってさみしい物であるらしい。父上もそれを知っており、口では『返せよ』と言うが。ただの挨拶程度である。


「えっと、よろしくお願いします」


「はい、エルヴィス様。ご贔屓ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」


「宣誓書いる?」


「いいえ、子供の約束なら……これでどうですか?」


 男性は小指を差し出す。私はそれに自分の小指を絡めた。


「知ってる知ってる!! 娼婦が惚れた人に指を送り、愛を誓うのよね!! それが……転じて約束をするになったんだよね?」


「エルヴィス様のその通りです。よく勉強されてますね」


「はい、知る事は悪いことではないです。いつか自分も贈られてみたいものです」


「今はそんな事しませんよ。では、あの方に報告書と打ち合わせが終わりましたら、急いで準備します」


「はい!! そういえばお店の名前は決まりましたか?」


「アントニオ倉庫商会です」


「覚えておきます!!」


 私はお辞儀をし、そのままアントニオさんから離れ、廊下を走る。とにかく……メイドに弟の状況を聞くために食堂へ向かった。そこではクリーミーな匂いがし、シチューを作っているのがわかり、料理場へ顔を出す。


「エルヴィス様? どうされました?」


 修行中のコック見習いが現れて私に問いかけてくれる。


「弟は料理を食べましたか?」


「ええ、お残しはなかったです」


「わかりました。教えてくれてありがとう」


「いえ。それよりも、今日はおやつは控えてくださいね。エルヴィス様」


「わかってる!!」


 コックに注意され、安心し、私の部屋へ戻る。戻ったときに、ベットに飛び込み枕を抱き締めて高鳴る鼓動を抑えようと必死にもがいた。アントニオに頼んだ物が届くまで私は弟に会えないと思いつつ。早く早く会いたいと欲がつのるのだった。





 僕は……部屋で籠り。ずっと窓をみていた。途中、女性の人が食器を下げ。それから何も考えず。何も思わず。過ごす。


「お母さん……」


 泣きつかれた僕はずっとお母さんを思い出して……そして自身の悪い所を何度も何度も思い出して……悲しくなる。


 『お母さんに捨てられた』その事だけがずっと頭に自分の声で木霊する。


「どうして……僕は……生まれたの?」


 自分自身に問いかける。だけど、答えは何処からもやってくる事はなかったのだった。






 







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