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実家への顔出し


 俺は学校を休み久しぶりに帰って来た。今住んでいる家より幾分か立派な一軒家である。ただこれ以上大きい家に父上住めないだろう。出世街道を母上と結婚し外れてしまったために。


「ただいま」


 久しぶりの家に俺は胸がざわつく。


「お、おぼちゃま!?」


「ああ、ミスタさん。ただいま。母さんはいるかな?」


 俺は恰幅のいいメイドの使用人に挨拶をし、母上を呼ぶことをお願いする。メイドはすぐさまといい、母上の名前を呼びながら歩いていく。


 待つ間にゆっくりと過ごした家を眺め……懐かしい気持ちになる。非常に穏やかな心で物事が見えた。成長したのかもしれない。


「ハルト!? ハルト!!」


 待っていると部屋の奥から母上が顔を出して駆け寄って来る。若く、赤い長い髪はバーディス嬢と同じであり。赤みが少し薄い。


「母上、ただいま帰りました」


「は、ハルト!? どうしたの!? 学校は!?」


「……ちょっと整理をつけたい事があって帰って来たんです。お母さん。話をしたい」


「はぁ……待ちなさい覚悟する。うん!! よいしょ!! 大丈夫」


「何が大丈夫なんだよ」


「何でも来い」


「母ちゃん……上がっていい?」


「あなたのお家よ。なに遠慮してるの……ほら」


「ああ、はい」


 ちょっと恥ずかしいなと俺は思いつつ家に上がり、リビングへと向かう。メイドさんにお茶を淹れてと母上が頼み。対面に座って畏まる母に俺は言う。


「今回は問題起こして帰って来たわけじゃない」


「……はぁ~安心した。また、謝りに行かないとねっと思ったわ」


「……本当にごめん」


「あら? ハルト……どうしたの。そんな素直になって」


「あっいや……学校で出会った令嬢にちょっと色々。こう……なんかあって。家でまぁ。整理をしたいと」


「まぁあ!? 女の子!? ハルトいい人いたのね!! お父さんを騎士団から呼び寄せないと!! えっと魔法陣魔法陣……」


 女の勘か満面の笑みで恋愛であろうこと見破られて俺は狼狽える。いや、今はそうではない。


「お母さん待ってくれ!! ああ、もう!! 悩んでるのが馬鹿馬鹿しい!! 教えて欲しい!! もう、昔の事で曖昧であまり興味も無かったから」


「ああ、はい。教えましょう。教えましょう」


「母はなぜ。グリーンライトの家に嫁ぎ。父上は何故、母上を選んだのかを知りたい。髪の事で色々とあった筈だ。俺だってそれで虐めを受けた。だが……母はそんな事を気にした素振りがない。どうしてだ?」


 俺は母上を真正面から見つめる。一人暮らしを認めてくれる母上に俺は逃げずに声を受け取ろうと身構える。


「愛しているから。この世で一番」


「……」


 俺は母上の言葉を静かに聞く。若い母上は頬を当てて艶ぽく。まだ、恋人のように甘い声音で語る。


「お父さんはあまりこういう話は苦手で……話したがらないけど。結構、大変だったのよ。一緒になるのは」


「……大変だった? 政略結婚では? 家同士の」


「それもある。でも、わざわざする必要もなかった。今は大分柔らかくなった両家だけど昔はもっといがみ合ってたわ」


 俺の母上が懐かしそうに話を始める。それをおれは茶化さずにお茶を飲みながら聞く。


「恥ずかしいから息子に言わないでとお父さんから言われてたけど。どこから話そうかしら?」


「……わっかんね」


「あっ!! なりそめから行きましょう」


 母が手を叩き嬉しそうに俺に話をしてくれる。


「昔に私とお父さんは同じ学校で育ったの。最初はやはり、いがみ合いが多かった。若いから親の教育そのままに睨むわ、罵声を浴びせるわで毎日毎日、喧嘩ばっかりしてたわ」


「……は?」


 俺は喧嘩をしているのを見たことあるがそれが日常茶飯事ではなく。本当に1年1回だけだった。


「驚く? そう、昔はとにかく嫌いだったの。でもね……まぁたまに悪いことが重なって心が弱った時にお父さんの罵声で泣いてしまったのよね。その時にお父さんがあたふたして。でっ何したと思う?」


「逃げた」


「逃げたら、あなたは生まれてない。私を抱き締めて撫でてくれたんですよ。驚きますよね。でっ、ぶっきらぼうに話を聞いてやるとかそんな事を言ってた気がします。それからでした」


「……」


 確かにあの騎士団で仕事する厳格な父を思うとちょっと甘い話だなと思う。


「お父さん。レッドライト家を全く嫌いにならなくなったのは……逆にグリーンライトにちょっと嫌気を出してましたね。お父さんは私を抱き締めて初めて同じ人間、同じ人で柔らかかかったと言い。毎日一緒に居るようになりましたね」


「同じ人間、同じ人……」


「ええ、髪色で険悪するのが馬鹿馬鹿しくなるっていつも愚痴ってました。レッドライトの男の子に殴られても抱きついて同じだといい続けて次第に気に入られましたね。グリーンライトには嫌われて喧嘩しても何故かレッドライトの男の子が庇ったりしましたね」


 今さら気が付く。父上の底知れる器の大きさに。何も自慢しない父上だが。そんなに素晴らしい人だとは知らなかった。


「あと、そうですね。告白も強かったです。赤い髪が好きだ、だから……一緒になろう。卒業後結婚しようとかの求愛が凄かったです。もちろん婚約者になってからもでしたけどね。お父さん、若かったなぁ~。だから政略結婚より、恋愛結婚なんですよ。実はね」


「ありがとう。お母さん。なるほどなぁ……グリーンライト家の男がなんで懇親会や舞踏会に参加してたかわかった」


「ふふ、そうね。同じ色の髪の女の子より。違う方がいいとか思う方も、出世街道外されて劣等感持ってる方は自身の髪を嫌う方も居ますね両家に」


「……俺も嫌ってました。この前までは」


「えっ……? ハルトそうだったの?」


 俺は今まで我慢していたことを打ち明ける。


「はい、劣等感。グリーンライトの中でそれが強くあった。ただ、母上や父上はそんな事を言わず。いい色とお世辞と受け取っていました。周りの多くのグリーンライトが赤を嫌うから。だけど、母上父上はそう言うので黙って喜んでました」


「……ごめんなさい」


 母上が謝り、泣きそうな表情をする。俺は首を振って否定する。


「この前まではといいました。それも先日から!!」


「……ハルト?」


「お母さん。家に帰らせてください!! もう、髪で悩むのが馬鹿馬鹿しくなりました。引っ越ししたいので部屋空いてない? 今まで多大なご迷惑をおかけしました!! これからは心を入れ換えて頑張るのでよろしくお願いします!!」


「ハルト……空いてる。子供部屋空いてる。ごめん……おかえりなさい」


 なかないで欲しかったがお母さんは泣き出した。俺は困る中で、泣きながら抱きついてくる母上に一つお願いをする。


「婚約者……欲しいです」


 そう、俺は……清算し。女遊びをやめたのだ。





「……ハルト。何とか上手くいったみたいですね」


「ああ、お前。学校は?」


「剣の相手になるやつがいないとゴネまして。抜けてきました。家は留守で使用人がここにいることを教えてくださいました。実家に謝ると」


「ああ、そうだぞ。俺……ちょっと色々あってな」


 屋敷から出ると、玄関でヒナトが待っており俺は驚く。金色の高貴な雰囲気の彼に俺は近付き肩を叩く。


「ちょうどいい。身支度を手伝え」


「引っ越し?」


「家に帰る。女遊びはやめた」


「……昨日、兄上と何かありました?」


 俺はにやっとして、ヒナトに言う。ヒナトの目は真剣その物で張り付けた空気を感じる。


「あったが、俺は秘密交換で言えない。すまないが俺も恥ずかしい事を言ってるから勘弁してくれ」


 冗談ぽく言いながらも本当の事を伝える。


「……わかった。兄上が昨日。ハルトと出会い、喜んでましたので」


「そうか……喜べるか?」


「私は喜びます。大好きですから」


「……そうだよな。気持ちがわかる」


 空気が凍りつく。ヒナトの表情が驚きに染まった。


「えっ、同性愛者ですか?」


「あのなぁ……俺が会ったときには既に綺麗な令嬢だった」


「ライバルですか。剣以外でも」


「……認めてくれるのか?」


「選ぶのは兄上です。誰を選んでも兄上の選択は絶対に応援しないといけない。女にしてしまったのは私ですし、文句は言えませんよ。それよりもなんかスッキリした顔をしていますし。部屋に呼んでから遠からず予想出来てましたよ」


「ごめんな、ヒナト……お前の気持ちを知りながらも……」


「いいえ。それだけ兄上は魅力的で家族として鼻が高いです。では、気を付けて行きましょう。ライバルです。負けません」


「お、おう……お前、すごいな」


「……すごいですか?」


「ああ、怒るもんかと思った」


「表に出てないだけですよ。ははは……今はすごく焦りを感じてます」


「くくく、安心した。人間ぽくないからな変におまえ」


 俺は笑いながらもふと……思う。エルヴィスの事で弟に対する異常な執着心が気になり出したのだ。そして、ヒナトの執着心も気になり出す。


「ヒナト……何故そこまでエルヴィスに拘る?」


「親友に話せる時期が来ましたらお話します。今は兄上との秘密です」


「おまえ……異種返しか?」


「はい」


 ヒナトはそういうだけだった。


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