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おかいもの


 エルヴィスは買い物のために先に帰る事となり、残った3人で話し合いをする。話し合いをすると言うよりもハルトとセシルからヒナトへの質問攻めである事はヒナトもわかっており、すぐには帰らなかった。


「さぁ、聞きたい事をどうぞ」


「……エルヴィスさん。手慣れてますが令嬢教育を?」


「ああ、驚いた。ヴェニス家は男に令嬢教育をするのか?」


「兄上が令嬢ぽく見えるのは昔から、あの物腰だったからです。非常に大人びた雰囲気でした。昔から……」


「……神童」


「なるほどなぁ。生まれながらにして高貴か。ああいう生き物いるんだなぁ~」


「勘違いされてるようですけど。中身は違いますよ。外行きの仮面です。本当の兄上は男らしいですが、私のせいです。ちょっと変わった生き方をさせてしまったんです」


「お前のせいでなのか? 変な話だな。それともお前の勘違いじゃないのか? 弟として溺愛されてるから変に勘違いをするとか?」


「ハルト、そんなことはないよ。まぁそうですね。理由は話せば長くなるので今日は帰ります。兄上の買い物付き合わないと行けませんので。それでは二人ともさようなら」


「……さようなら。兄上に再度お礼を言っておいてください」


「じゃぁな。明日、ゆっくり聞かせてくれよ」


「……兄上がいない時間なら……ですね」


「楽しみしとくぜ」


 ヒナトは席を立ち、走って兄上を追いかける。残された二人は各々、感想を漏らした。


「……なんだろうな。ああも兄弟愛が強いと羨ましく感じるのは」


「ハルト、僕もその気持ちわかるよ……だって僕たちにはろくでもない兄弟、従兄弟しかいないもんね」


「そうだな。家の人もな」


「……本当に名家に生まれる事は幸せなんだろうかな?」


「わっかんね……帰ろうぜ。なんか食べてく?」


「……飲み物だけでいいかな」


「せっかく奢るのにな」


「……じゃぁ、本を一冊買ってほしい」


「ははは、いいぜ!!」


 二人も席を立ち、そして部屋から出る。何も他の令嬢を呼ぶこともせずに。





 帰宅道の途中、ヒナトは息を荒げながら歩いているエルヴィスの背中を見つける。スッとしっかりと伸ばした背に桜色の長い髪が風に撫でられてフワッと翼のように舞った。それをエルヴィスは手で優しく押さえる。


 その姿にドキッとしながら胸を押さえるヒナトはその場に止まり一回深呼吸をしてエルヴィスの背中に呼び掛けた。


「兄上!!」


「……ん? ヒナト? 買い物付き合ってくれるのか? 話はいいのか?」


 振り向いたエルヴィスの笑みに耐えてヒナトを真っ直ぐ見つめる。


「もちろんです!! あっ……えっと……だから俺は……あっいや。私は走って来ました」


 その姿に緊張し、声が上擦って反応してしまったヒナト。間を開けていつもの表情を思い出す。そう、ヒナトが考える。王子ならこうかなと思う表情を。


「兄上……荷物持ちぐらい手伝います」


「では、頼むとしようか? 最近肩が凝って仕方ないんだ。引っ張る重りがな……あっいや。なんでもない」


 エルヴィスは自身の胸に触れて愚痴るがヒナトの教育に悪いと思い直す。


「兄上……大きくなりましたね」


「言うな……恥ずかしい事だと今、気が付いた」


 エルヴィスはちょっとうつむき。ヒナトは横に並んで歩

く。端から見える人々は初々しいエルヴィスにまだ馴れてない恋人同士かなと勘違いをする。ゆっくり、恥ずかしさが引いたエルヴィスはメモを取り出した。


「……」


「……」


「兄上、何故買い物を? 使用人がいるでしょう?」


「使用人からのメモだ。一人だけなんだ。買い出しも重労働さ」


「今日の晩御飯なんですか?」


 その問いにエルヴィスはヒナトの前に出て一回転し満面の笑みで答える。


「カレー!!」


 その答えにのけぞり、顔を背けるヒナト。


「……どうした? 嬉しくないのか? 子供ぽいと恥ずかしがる事でもないだろう? 大人でも人気だぞ」


「……いいえ、嬉しいですよ……すごく」


 ヒナトはエルヴィスが何故、満面の笑みで料理名を口にしたのかをわかっていた。そう、ヒナトの好きな料理であり……エルヴィスは嬉しがるだろうと考えて満面の笑みで答えたのだ。その事をヒナトは感じとり……嬉しくも気恥ずかしさをエルヴィスに隠すのだった。

 


 

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