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7話 宿、風呂無し食事無し

「はい、依頼分にプラスしておきます」


 採ってきた薬草をギルドに受け渡し、報酬を受け取った。お金を稼ぐのは当分こんな感じでいこうと思っている。


「日も暮れてきたし、宿を探さないと!」

「そうした方がいいかもなー」


 拠点の方も当分宿になるだろう。気になるのは一泊二人でいくらするかだ。


               ―― 宿 ――


「いらっしゃい!そこのカップルさん!今日は混んでるから早くした方がいいよ!」

「私たちのこと?」

「そうそう。もう残り一部屋だよ!」

「じゃあ、二人で」

「えぇぇぇ!?」


 うわっ!?ビックリしたぁ~。何だ?急に大声出してこの宿がお気に召さなかったのかな・・・・・・


「あわあわ、あわあわ、新君と同じ部屋・・・・・・」


 あぁ、一人一部屋だと思ってたのか。美咲には悪いけど節約のため、と他を探すのが面倒だから妥協して欲しい。


「一緒に寝る訳じゃないんだし、そんなに気にすることじゃないよ」

「気にするよっ!」

「そ、そっか・・・・・・」


 一応、年頃の男子と女子だもんな。俺の精神年齢が90歳を超えているとはいえ、そこら辺の配慮はしないとな。


「おやぁ~?」

「あ、あ、あ、あ、新君・・・・・・べべべ、ベットが一つしかありませんけども!?」

「まあ、大きいし?」

「無理無理無理!」


 一緒のベットで寝るのはまだ早すぎるよ~、同じ部屋ってだけでも心臓がドキドキするのに一緒に寝られるわけないじゃん!


「俺は床で寝るから、良いよ」

「ううん、私が床で寝るから!さっき、寝ちゃったお詫び!」


 それを引き合いに出すのはずるいと思うんだけど・・・・・・女の子を床で寝かせるわけにはいかんよな。


「ダメだよ!何を言われようと私は下で寝るから!」

「わかった。お言葉に甘えさせてもらうよ」


 まったくもう!自分ばかり、良いところみせて!これじゃあ、私が一方的に好きの気持ちが大きくなるだよ!


(何か、お怒りのようですし、取りあえずはベッドで寝させてもらおうかな)


 美咲が寝たのを確認したら変わってあげれば良いしな。


「あれ?お風呂がないよ?」

「ここは泊まるためだけの場所だから、食事とお風呂は外に行かないと」


 いや、風呂ってあるのかこの世界・・・・・・


「すんすん、すんすん・・・・・・今すぐお風呂に行くよ!」

「お、おう」


 これで「お風呂はありませんでした~」ってなったらどうしよう?やばっ、変な汗かいてきた。


「お風呂どこ?」

「もうちょい先じゃないっすかね~」


 あぁ、もうすぐで街の端っこまで行ってしまう。逃げるルートを確認しておくか・・・・・・


「・・・」


 あっ、終わった。美咲は行き止まりの壁を見つめて微動だにしない。いや、まだ諦めてはならない!


 俺は近くを通りかかった人にお風呂が無いか聞いてみた。


「それなら、東の宿の裏にあるよ」

「あっ、どうも」


 東の宿って俺たちが泊まってる宿じゃん!裏にあったのか・・・・・・全然気が付かなかった。まさに、灯台もと暮らし。


「美咲!朗報だぞ!」

「ねぇ新君、私って匂うよね?気にしてないように振る舞ってくれてるだけだよね?」


 うっわ!目が死んでる!


「落ち着け!お風呂あったぞ!」

「ホントに!?嘘付いたら針千本飲ーますっ!」

「今日が命日では無いことを祈ってるよ」


 通行人に教えてもらったとおり、お風呂屋は俺たちが泊まってる宿の裏にあった。


(ふぅ~、助かった~)


 美咲もお風呂屋を見た瞬間、生気を取り戻したように目に光が灯った。ボソッと「もし、お風呂なかったら新君と心中だったな~」と聞こえた。いや、聞き間違いの可能性も疑ったが、確かにそう言っていた。例え、お風呂が無くても体を洗い流すことは出来るのだし、そこまで気に病む必要はないと思うんだけど・・・・・・


 恐らく日本人からすれば、お風呂はシャワーに湯船がイメージされるのだろう。流石に、ここのお風呂にはシャワーはないけど暖かいお湯が用意されているし、湯船もある。石けんも買ったし、きっと美咲も満足してくれているはずだ。そうでなくては困る。


「俺の元いた世界に美咲を連れて行ったら世界を滅ぼされるんじゃないだろうか。暖かいお湯を使う文化は無かったからなー」


 その所為か、長くお風呂に浸かっていられない俺は早めに上がることにした。


             ―― 1時間半後 ――


 美咲に何かあったのか?全然お風呂から出てこない。でも、女湯だし入って確認するわけにもいかない。


 透明化の魔法を使えば・・・・・・いやいやいや、ダメでしょそれは!前に日本男子の夢とクラスメイトが語っていたけど、そんなことをしたら罪悪感に苛まれそうだ。


「あっ、新君!お待たせ~」

「美咲!大丈夫だった?」

「え、何のこと?」

「中々出てこないから・・・・・・」

「い、いや!そんなことないよっ!?」

「一時間半も掛かったのに?」


 嘘ぉ~、一時間半もお風呂入ってたの私ぃ!?念入りに体洗ってたら・・・・・・だって、同じ部屋に泊まるんだもん。間違いが起こらないとも限らないじゃん!


「そう!女の子のお風呂は長いの!」

「それなら先に教えて欲しかった・・・・・・」

「ごめんなさい、次からは気をつけます・・・・・・」


 少し遅めの夕飯を済ませて、俺たちは宿へと戻った。


 その後の美咲が眠ったかを確認してベットに移す作戦は、寝たふりをしていた美咲によって看破されてしまった。まさか、見透かされていたとは・・・・・・


(えーっと、寝ているところを襲ってくれるかと期待してただけなんだけどね・・・・・・)


 美咲から「また私をベットに移そうとしたら、本気で怒るからね」と釘を刺されてしまったので、諦めることにした。


 自分のためにそう言ってくれるのは嬉しかった新だが、どうも落ち着かないのであった。

日本人=お風呂みたいな所ありますよね。自分は全然お風呂は好きではないですけど・・・・・・

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