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2話 早くも王都脱出

 昨日は日本では見ないようなご馳走を振る舞われ、今日はここルーベル王国の国王から詳細な説明を受けた。


 大体想像がついたが、簡単に説明すると魔王の所為で世界がやばいと言うことだ。


 詳細な説明を聞いたクラスメイトは死の危険性があると知って少し戸惑っている。だが、俺からすればそんなことよりも帰る方法が今のところないという点に憤りを感じている。


「呼んでおいて帰る方法がないとかあり得ないだろ!」

「だよな~」

「ねぇ、これからどうしよう?」


 国王も無理に協力して欲しいとは言わず、帰る方法が見つかるまでは王城でゆっくりしていて良いと言っている。正直、俺はここを抜け出して帰るための魔法を組む準備をしたい。


 そもそも、転移魔法は日本の端から端まで位の距離なら一瞬で展開できるが、余りにも長い距離を移動しようとすると、術式を組み上げて長々と魔法陣を作らなければならない。前は30年かかって組み上げたが、今回は2回目だし半分の15年ぐらいで完成する気がする。距離にもよるけど・・・・・・


 まずは日本との位置関係を調べないと。


「俺はこの世界のために戦おうと思う」


 やること多いなーと思っていたら、クラスのまとめ役の橘が相変わらず世界を救う気でいる。


「賢也が戦うなら俺も」

「私も」


 自然とリーダーぽくなっている橘に続く者は多い。クラスの7割ぐらいは賛同している。


 橘は良い奴だし、人望も厚い。もう少し考えて行動出来れば完璧なんだけどなー。


「死なない程度にな、ちょっとトイレ行ってくる」


 半年弱とはいえ一緒に過ごした友達なので死なれるのはちょっと嫌だし。


「しかし、俺はここから抜け出す」


 戦うのはごめんだからな。


 俺はトイレには行かずにそのまま王城を出た。別に王城から出るのは禁止されてないしな。王都から出でちゃいけないだけでね・・・・・・


「今日のうちにどっか遠くに行くのもありっちゃありだなー」

「どこか遠くってどこ?」

「ん、そうだなー。ここから数百㎞ぐらい離れたところに――」


 ん?俺は誰と喋って・・・・・・


 振り返るとそこにはクラスメイトの藤村、藤村~、藤村が不思議そうな顔で立っていた。


 藤村とは特別仲が良いと言うわけではないが、学校にいる女子の中では一番交流があるかもしれない。


 どんな子かって?ん~、可愛らしい女の子だな。髪がこうフワフワとしてて、手足なんか細っこくて、ちょっと強い風が吹いたら飛んで行っちゃいそうだ。周りをよく気にかけていることから一部からは聖母様と呼ばれていると聞いたことがある。


「どうして藤村がここに?」

「美咲、私の下の名前」

「忘れていた訳では・・・・・・すみません」

「それで、藤村は何でここに?」

「美咲って呼んで、やり直し」

「藤村はてっきり橘とかと一緒にいるものかと」

「美咲って呼んで、やり直し」

「ん?藤村ってさ~」

「美咲って呼んで、やり直し」


 あー、これ美咲って呼ばないと話が進まないやつだー。ゲームやってた時に見たわ。娘が洞窟に行ってしまって助けてきて欲しいと頼まれて「は?何で俺が」と思って断ると先に進まないんだよ。


「――美咲はどうしてここに?」

「トイレに行くって言ったのに、お城から出て行ったから」

「俺の後をつけてたの?」

「うん!じゃなくて、私もトイレに行こうと・・・・・・うぅ~」

「あぁ、そう・・・・・・」


 そんなに顔を赤らめてモジモジされても困る。トイレに行きたいなら早く行っトイレ。


 ・・・・・・でも、困ったなー。美咲が一緒だと、王都から出ようにも出ることが出来なさそうだ。


「ねぇ、ねぇ、新君は彼女とか居るの?」


 えぇ?このタイミングでその質問?これからどうするつもりだったのか聞いたりしないのか?


「ゴホン、居ないけど」

「そっか」


 本当にそれだけなの?!なんかよく分からずに歩いてるけど、俺について来ちゃっていいのか?


 しばらく、二人して歩いていると王都の出口に来てしまった。


「新君、二人でここから出ちゃお!」

「マジで?」

「ちょっとドキドキしない?知らない世界に二人っきり・・・・・・えへへ」


 この子、割とマジで言ってる。いや、俺からすればありがたい事この上ないけど、美咲は一般人だよな?魔法も使えなければ武器も使えない。


「魔物に襲われたらどうするつもりなんだ?」

「逃げる?」


 美咲先輩半端ねぇー。死ぬのが怖くないのか、それとも現実味がなさ過ぎて何も考えてないのか・・・・・・


「王様から貰ったお金を使えば近くの街ぐらいまでなら馬車で行けるんじゃないかな?」

「まあ、行けるかもな」

「そうと決まれば!新君、行こっ!」


 何も決まってはいないが、美咲に手を引っ張られた俺はそのまま馬車を借りて近くの街、もしくは村まで行くことになった。ここまで急速に事が進むとは思っていなかった俺はしばらく呆気にとられていた。


「近くないか?」

「そうかな?」


 馬車は4人で乗ってもゆったり出来るぐらいの広さなのに、美咲は俺の隣で密着してきている。その所為で俺はドア越しまで追いやられて窮屈なんだが・・・・・・まさか、嫌がらせ!?


「クラスのみんなどう思うかな?」

「普通に心配するだろうなー」

「いけないことしてる気分だね!」

「その割には随分と上機嫌だな」


 車なんかとは比べものにならないぐらい乗り心地の悪い馬車に揺られること数時間、俺たちは目的の街へと着いた。





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