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Color  作者: 九尾 蜥蜴
9/9

最終話『白き死神は静かに嘲笑う。』

これが、この物語の真実です。

俺は幸せの絶頂にあった…


浮遊感にも似た高揚感を覚えて…



サクヤ「……あれ?」



今までに感じたことのない感覚……


俺はその感覚の正体にすぐに気がついた……











……本当に身体が浮き始めていたのだ。



サクヤ(ど……どうなってんだ…これ?)



どんどん身体が地面から離れていく……



サクヤ(や、やべえ…!!)

サクヤ「イロハ!!」




__________!!












え…………何で……何でだよ…………




















何で……そんな顔をするんだよ……






イロハから笑顔はとうに消え、眼には一切の光が無く、その瞳を見ているだけで奈落の闇に吸い込まれそうになった……そして、その生気が感じられない双眸そうぼうで、ただ呆然と、無感情に、上昇し続ける俺を眺めているのだった。




サクヤ「!……」



気付けば、もともと少しだけ透けていた俺の身体が、みるみる真の透明に近づいていっていた…完全に見えなくなった部分は、感覚がなくなっている……どうやら本当に消滅していっているようだ。





そして……身体が少しずつ崩れていくにつれて……



俺は……いや……



“自分” は…………段々と思い出してきた……









サクヤ「……そうか。……自分は……愛情を受けたことが無かった……孤独で……理不尽で……残酷で……そんな世界を……自分は《途中で投げ出した》んだ……」







???「それに…自分の名前はサクヤじゃない……自分にはちゃんと名前があった……もっと……《忌々(いまいま)しい名前》が……」









???「自分の…………名前は………………」




























……そして、自分は完全に消滅した。























ツクヨミ「……やれやれ。やっと終わりましたか……いやあ……今回の《ボっちゃん》はなかなか骨が折れましたねぇ……」


イロハ「………………………………」


ツクヨミ「何を与えても満足されなかったのに、まさか色仕掛けが効くとは…こんな操り人形に容易たやすく惑わされるなんて、思春期の少年というのは、案外単純なものですね。」


ツクヨミ「さて…君の役目はもう終わりです……さあ、闇にかえりなさい。」



(ズズズズズズズズ……)



イロハ“だったもの”は、おぞましい真っ黒い塊となって、徐々に地面の中へと消えていった……



ツクヨミ「【死神】は影を結い、幻影を作り出す……初めての試みでしたが、ここまで上手くいくとは思いませんでした。この方法を使い回せば、この《仕事》の更なる効率化に繋がりそうですね……一刻も早く、次のボっちゃんを《満足》させないと……未練を残した彷徨さまよえる憐れな子羊たちを救い、導くことが、我々の使命なのですから……」



ツクヨミは頭部に掛かったローブを取る……するとそこから、堅牢けんろうな頭蓋骨がその姿をあらわにした……



ツクヨミ「次のボっちゃんは、一体どれだけ時間がかかるでしょうか……」




(……スンッ!!!)




ツクヨミ「……おや、もう次が来たのですか…もう少し休ませてくれても良いのに……コホン…初めまして。私、本日より貴方の執事を勤めさせていただくツクヨミと申します…貴方を満足させる為なら何だっていたしますので…これからよろしくお願いしますね?」






























ツクヨミ「亡霊の………っちゃん?」











ー完ー


おまけ【登場人物紹介】



サクヤ


生前に自殺した、愛を求めて彷徨う亡霊。

イロハから擬似的な愛を享受し、未練が無くなった彼は、自身の過去と、真名も思い出し、最終的に成仏した。




イロハ


サクヤを成仏させるために用意した、ツクヨミが影から作り出した幻影。その言動や行動はツクヨミが完全にコントロールしており、無事サクヤを満足させることに成功した。




ツクヨミ


現世に彷徨う亡霊を成仏させる事を使命とする死神。亡霊を総じて「っちゃん」と呼び、その未練を晴らすことに日々腐心している。

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