第6話『無より出づるは、深なる藍。』
……恋だね。
サクヤ「…………」
サクヤ「……?」
ツクヨミ(……ヌゥ…)
サクヤ「うわっ!?!?ツクヨミ!?」
ツクヨミ「やっとお目覚めですか…おはようございます、ボっちゃん。」
サクヤ「あれ…?イロハは…!?」
ツクヨミ「5時間ほど前から起床なさっております…現在の時刻は……午後1時でございます。」
サクヤ「んなっ!?やべえ!寝すぎたッ!」
ツクヨミ「ボっちゃん、走ると危n」
サクヤ「うおあっ!?」
ゴチーーーン!!!
サクヤ「い……痛ってえぇ…一体何g...ああっ!」
イロハ「………………」
サクヤ「わ、悪い!!イロハ!!しっかりしろ!!!」
イロハ「あ……あいたたた……おはようございます……サクヤさん。」
サクヤ「おう、おはよう……じゃねえよ!大丈夫なのか!?」
イロハ「はい、まだクラクラしますけどなんとか…それより……あの……」
イロハ「顔……近いです。」
サクヤ「はっ…す、すまん……」
ツクヨミ「………」
サクヤ「な、何だよ…」
ツクヨミ「いやあ…同じベッドで一夜明かすだけで、こんなにも進展するもんなのですなぁと…」
サクヤ「べ…別に何も変わってねえって…」
ツクヨミ「そうですか?…随分と親しくなられているように思いますが…昨晩はベッドの中で、一体何をなさっていたのですかぁ?」
サクヤ「何もしてねえよ!!な、イロハ!?」
イロハ「……///」
ツクヨミ「あら^〜」
サクヤ「な、何でそんな顔すんだよ!?誤解が酷くなる一方だろうが!!」
サクヤ「くそっ……あ、そうだ!!お前、ちゃんと俺の部屋元に戻しとけよ!!…俺のコレクションも…全て元の位置に閉まっておけ。」
ツクヨミ「はいはい…分かってますよ。」
イロハ「あの…気になってたんですけど…サクヤさんって一体何をコレクションされてるんですか?」
サクヤ「えっ!?…あの……それは……」
ツクヨミ「ボっちゃんはトミカを収集していらっしゃるのです。」
サクヤ「お、おい!!!言うなって!!!」
イロハ「トミカって…あの小さい車のおもちゃのことですよね…?」
サクヤ「…ああそうだよ。笑いたきゃ笑えよ…」
イロハ「え…?別に何も可笑しくないですけど…」
サクヤ「いや、だって……この歳になってミニカーなんて…餓鬼っぽくないか?」
イロハ「全然気にすることないと思いますよ?大人でも集めてる方はいらっしゃると聞きますし…」
サクヤ「そ、そうなのか…?」
イロハ「よかったら見せて下さいよ!サクヤさんのとっておきを!」
サクヤ「しょ…しょうがねえな…部屋が元に戻ったら、な。」
イロハ「はい!」
ツクヨミ「ええでは…午後の予定も決まったことですし、私めは昼食の準備でもしますかね…」
サクヤ「そういえばもう昼だったな…腹が減った…」
イロハ「お昼にしましょう!!」
昨日と同じ……楽しい食卓……
イロハと過ごした……楽しい時間……
時間はあっという間に過ぎていった……
その日の晩……
ツクヨミ「ボっちゃん、お風呂は入られましたか?」
サクヤ「……おう。」
ツクヨミ「歯は磨かれましたか?」
サクヤ「……おう。」
ツクヨミ「寝巻きには着替えましたか?」
サクヤ「……おう…てか見たらわかるだろ。」
ツクヨミ「随分とお疲れのようですね。」
サクヤ「一日中イロハと話してたからな…実際かなり疲れた……」
ツクヨミ「そうですか…お部屋の準備は整っておりますので…ゆっくりとお休みなさい。」
サクヤ「ああ…イロハの部屋はどうした?」
ツクヨミ「少し増築いたしまして…新たな部屋を作りました。」
サクヤ「そうか……ならいい。おやすみ。」
ツクヨミ「はい…お休みなさいませ。」
(バタン……)
吸い込まれるようにベッドに潜り込む……
今日は本当に疲れた…
サクヤ「………」
……俺は今、あいつの好きだったやつ「の代わり」をやってるんだよな。
サクヤ「………」
……まただ…また……あの変な気持ちだ。
……モヤモヤする……何かが気にくわない。
サクヤ「………………ハァ。」
……この感情の正体がさっぱりわからない。
……このモヤモヤの理由も皆目見当が付かん。
サクヤ「イロハは好きな奴の話ばかり…」
***「本当は俺“自身”をもっと見て欲しいのに……」
サクヤ「誰かに相談しようにもなあ…」
***「どう伝えればいいのかわからないし…」
サクヤ「イロハ本人に聞くのも…」
***「絶対あり得ないし…」
サクヤ「俺は…」
***「一体…」
サクヤ&***「どうしたら……」
サクヤ「…………?」
サクヤ「う、うわあああああッッッ!?つ、ツクヨミ!?!?いつから居たんだよ!?」
ツクヨミ「いえ、追加の寝具を置き忘れておりまして届けに今入って来たところですが……何かお悩みのようですね。」
サクヤ「べ…別に……」
ツクヨミ「ボっちゃん、最近様子が変です…どこか上の空になることが良くありますし…今日のお昼なんかもあまりご飯をお召し上がりにならなかったじゃないですか。」
サクヤ「あれは…食欲が無かっただけだ。俺は何も…」
ツクヨミ「ボっちゃん…」
サクヤ「……何だよ。」
ツクヨミ「覚えてらっしゃいますか?私めが読心術を使えるようになったというのは…」
サクヤ「…まぁ、覚えてるぞ…信じてないけど…」
ツクヨミ「ボっちゃんが抱いておられるのは、恐らく『嫉妬心』です。…イロハ様が好いていた男性への。」
サクヤ「し、嫉妬…?ってかあの会話、全部聞いてたのかよ!?」
ツクヨミ「ボっちゃんは…自分自身を「サクヤ」としてみて欲しいのですよね?「私が好きな人に似てる人」ではなく……」
サクヤ「そ、それは…………」
ツクヨミ「これはもう間違いありませんね…ボっちゃん……」
ツクヨミ「それは……『恋』ですよ。」
サクヤ「……は?…はああ!?お、俺がアイツに!?そんなバカな話あるか!!!」
ツクヨミ「常にその人のことばかり考えて上の空…食事も喉を通らず、気づいたら溜息ばかり…恋をしている人間のあまりにもベタな症状です。」
サクヤ「あ、ありえねえ…そんな訳……」
ツクヨミ「……。」
ツクヨミ「……ボっちゃん。話そうかどうか迷ってはいたのですが……やっぱり話すことにします。」
サクヤ「な、なんだよ…急に改まって……」
ツクヨミ「ボっちゃん……昨晩、イロハ様がボっちゃんに話されていた話……」
あれは………………