第4話『漆黒の初夜に少年はかく語りき。』
素敵な夜を。
サクヤ「ええええええええ!?」
ツクヨミ「ああ、ボっちゃん、お待ちしておりました…」
サクヤ「つ、ツクヨミ!?何なんだその変な格好は!?」
ツクヨミ「まあまあ…寝室でイロハ様がお待ちになっております…どうぞこちらへ……」
サクヤ「どうぞって…こっちは俺の部屋だろ…?」
(ガチャ…)
サクヤ「えッ……な……なな…………」
サクヤ「何だこれはあああああ!?!?」
ツクヨミ「ボっちゃんがお風呂に入っている間に、お部屋を少しばかり改造いたしました…ここでイロハ様との有意義な夜をお楽しみください!」
サクヤ「ベッド以外何も無ぇじゃねえか!!俺のコレクションどこにやりやがった!!ってか照明暗すぎだろ!?豆球しかねえのかよ!?」
ツクヨミ「これは豆球ではなくムーディーかつシャレオツな間接照明でありまして……」
サクヤ「すべこべ言ってねえで!!さっさと元に戻しやがれ!!!」
イロハ「あ、あのう…」
サクヤ「お、お前…居たのかよ!?」
イロハ「ここ、サクヤさんのお部屋だったんですね…お気遣いは感謝しますが…いくらなんでもサクヤさんのご迷惑になりますし…戻してあげて下さい…ツクヨミさん。」
ツクヨミ「ううむ…分かりました。しかし、戻すことは考慮しておりませんでしたので…準備に明日までかかりまして…今夜はどうかこのままで…」
サクヤ「ほ、本当に元に戻るんだな!?」
イロハ「ごめんなさいサクヤさん…私が気を遣わせてしまったせいで…」
サクヤ「お、お前は何も悪くねえよ…こいつのお節介が過ぎるだけだ……それよりお前は良いのか?こんな怪しげな部屋で......ベッドも一つしかねえんだぞ?」
ツクヨミ「その点は御安心を!!このベッドは一つで二人用ですよ!!」
サクヤ「な、なんで会って初めての夜にベッドを共有しなきゃならねえんだよ!!」
イロハ「だ、大丈夫ですよサクヤさん…私、床でも寝れます……」
サクヤ「そ、それは…風邪引くだろ、いいよ、俺が床で寝る……」
ツクヨミ「いやいや…なんでそうなるんですか……今夜は冷え込みますし…ここは無理せず……」
サクヤ「もうツクヨミはいいから戻れ!!お前はメイン部屋の片付けでもしてろ!歯はもう磨いた!!」
ツクヨミ「はいはい…では失礼します…良い夜を…」
(バタン……)
サクヤ「……ハァ……とんでもないことになっちまったな……」
イロハ「え、えっと…なんかすみません。…私、明日ツクヨミさんに言ってこの家を出ます…これ以上はサクヤさんにご迷惑をおかけすることができません。」
サクヤ「えっ……そ、それは……」
サクヤ「…………」
サクヤ「それは……いいよ。」
イロハ「…え?」
サクヤ「た、確かにお前をもてなそうとするツクヨミのお節介は迷惑だが……俺はお前を一度も煙たく思った事はない…それに……」
イロハ「……それに?」
サクヤ「…さっきの夕飯の時も……疲れたけど…楽しかったしな…ちょっとだけ。」
イロハ「…サクヤさん…」
サクヤ「俺も、ツクヨミこそ居るが、アイツを家族と思うには無理があるし…誰にも見えない俺にとって、こういう状況は初めてなんだ。…なんだろ…一家団欒って、こういうのをいうのかなって…正直、案外悪くないもんだと思ってる……」
イロハ「わ、私もです……こんな風に笑えることなんて……私一人では到底ありえないから……」
サクヤ「だからもし…もしお前がそれで良いのなら……その…」
サクヤ「あ…明日も、一緒に居てくれないか…?」
イロハ「!……勿論です!」
(ガシッ!)
イロハは俺の右手を両手で取り、強く…そして優しく握った…
そこには、【確かな温かみ】があった。
サクヤ「…良かった。…フゥ。」
思わず安堵の溜息が漏れる…だが何故…何故俺はこいつを引き留めたんだ……「こいつと居たい」……俺は何故そう思ったんだろう………
イロハ「えっと……どうしましょう…夜も遅いですし、そろそろ寝ましょうか…?」
サクヤ「え、、、あ、おう…」
イロハ「では…私は歯を磨いて来るので…やっぱりベッドはサクヤさんが使って下さい!私は床で寝るのは慣れてますし…サクヤさんも今日は一段と疲れたでしょう?」
サクヤ「そ、そうか……悪いな。暗いから足元に気をつけろよ。」
イロハ「はい、では失礼しますね…」
(バタン…)
サクヤ(……さて、寝るか…イロハには悪いが、あのベッドを使わせてもらうとするか……)
サクヤ(…また変な気分だ。)
妙なカーテンのようなものが付いた、明らかに異質なベッドに横になると、俺は途端に睡魔に襲われ、夢の世界へと誘われた……
……
………………
…………………………?
再び意識を取り戻す…まだ夜は開けていない。
…そして、足元に何かが触れる感覚が…これは…
……足?
そのままゆっくり顔を上げると……
(!!?!!??!??!?)
(イ……イロハアアァァァァア!?!?!?)