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第二十六話 偽りのモノ

久しぶりすぎて致命的なミスをしてしまったらいつも通りでした。

「…………おはようございます」


「おはよう、ぐっすりだったな」


 いつの間にかシスターは眠っており、気づけば朝陽が昇っていた。

 その間、リクトは一睡もせず寝ずの番をやっていたのだろう。

 それでも疲れは一切見せず研ぎ澄まされた警戒を常に行っていることこそ彼が優秀であるということの証であった。


「どうでしたか?その、お仲間の襲撃は」

「ああ、一度会ったけど何とか追い返した」


 当たり前のことのように言っているがシスターはちょっとのことですぐ起きることができるよう訓練してあった。

 これはシスターになる前の訓練や夜這いに対して即座に対応できるようにしているのだ。

 故に、それは無音で戦いをしていたということにほかならない。


 その事実に気づいたシスターは頼もしく、何よりも恐ろしく感じてしまった。

 勇者とは最前線で戦う者の称号と今までは考えていた。

 物音を一切立てず戦うのは、どちらかというと暗殺者。

 つまり、やろうと思えば暗殺だって簡単にして見せるといってのけるものだ。


 やろうと思えば(・・・・・・・)何でもやれる(・・・・・・)


 それがどれほど恐ろしい相手になるのか、想像すらつかない。

 どうしても欲しがるわけだとシスターは納得した。


「じゃ、そろそろ行くとするか」


 キャンプ用品を片付けつつリクトは言った。

 シスターもその手伝いをして小物などをまとめてリクトに背負ってもらった。


「やっぱり小さく畳めるのはいいな。これ本当に次の行商で売ってみようかな」

「そうですね、これがあればあの頃も…………いえ、過ぎた事は忘れましょう」

「何かあったのか?」

「ああ、いえ…………」


 シスターははぐらかし、リクトは頭にはてなマークを浮かべて何のことか分からないといった風になっていた。

 だが、それは今はどうでもいいので頭からきっぱりと切り離して進むことに集中させる。


 前にシスター、後ろにリクトといった隊列で片付けを終えた二人は街道を進んでいく。

 どうしてこのような配置になっているのかというと、リクトはほとんどの存在を感知できるというが、シスターを背にして背後からシスターを奇襲されたら対応できるか怪しいと言ったからである。

 故に、前にシスターを立たせておけば隙は大きくなくなる、というのが本人の弁である。


 シスターは勇者である彼の事を信じた。

 彼であるならば可能であると。

 そう安心して後ろを任せた。


 そうして歩いていき、あとどれくらいだとシスターが考えた時だった。


「おっらあ!」

「な、あっ!?」


 後ろにいるはず(・・・・・・・)リクトが前から突然現れ、シスターに斬りかかった。

 突然のことでシスターは動けなかった。

 何故リクトが前から現れたのか?

 後のリクトは何をしているのか?

 何故リクトは二人いるのか?


 この剣が振りきられると思われた刹那に多くの考えが頭に浮かび、死を予感させた。


 だが、その剣はシスターの体に届かなかった。


「…………なあ、何故助けなかった(・・・・・・)?」

「は、え?」


 シスターは何を言っているのか分からなかった。


「今のお前は元とはいえ勇者なんだろ?何故動かなかった?」


 よく見たら今目の前にいるリクトは服にも体の見える部分の肌にも細かい怪我がたくさんついていた。

 まるでぶっつづけで戦闘をしてきたと思わせるほどの様子と気迫を持っていた。


 一方でシスターの後にいたリクトは無表情で動かなかった。

 襲い掛かったリクトに突き刺さる視線で見つめるだけで何もしなかった。


「なあ、お前が俺なら何をするか分かるだろ?」

「……………………」

「俺が何してたか知っているならな。自分でいうのも何だが、なんやかんやで困ってる人に手を出すんだよ。特に、命に係わる人にはな」

「……………………なんで」


 ぎり、と後ろにいたリクトが歯ぎしりをする。

 前にいたリクトはシスターの腕を引き、自分の後ろに、守るように回された。


「なあ、わざわざシスターが寝ている間に俺をおびき寄せて、仕込みまくってた罠で足止めして、俺と入れ替わって、何がしたかった?」

「………………さい」

「後ろから殺そうとしたか?それとも当たり障りのないように逃がそうとしたか?」

「…………うるさい」

「答えろシーラ!お前は何がしたいか、何になりたいか(・・・・・・・)言ってみろ!」

「うるさいうるさいうるさい!」


 その声はリクトのものではなく少女のものとなっていた。


「化けの皮が剥がれたな。お前はあの4人の中では冷静そうに見えて激情家だった。そして私情でよく動くこともあった」

「私は、私は…………っ!」

「『勇者のようになりたかった』、か?」

「…………!!!」


 リクトの顔をした暗殺者が目を見開く。

 このことは誰にも喋っていないはずだという顔だった。


 何故リクトが『ユメ』を知っているのか。


 答えはリクトしか知らない、ループしているからだ。


 一体何があったのか、それは全て彼女の過去に起因するのだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] おや?途中から話が繰り返されてる?
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