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第二十四話 動くな

「っ!?な、なに、を…………」

「動くな、死にたくなければ決して」


 突然、俺に首を絞めら(・・・・・)れたようになる(・・・・・・・)宣教師が苦悶の声を漏らす。


「絶対に動くな。手が、いや指もずれたらあんたの首は飛ぶ。だから動かないでくれ」

「…………っ」


 宣教師の生唾を飲み込む音が嫌なほど響く。

 俺の顔は真剣そのものだが殺気はないと理解してくれたのだろう。

 そして今、自分がかなり危ない状況になっているということも理解してくれた筈だ。


 今の状況を正しく把握してる俺が説明すると『宣教師が暗殺されかけている』。

 目に見えないくらいの細い糸を首に回し、キュッと絞めたら首が切れる暗器を使われているのだ。

 幸いにも俺が、糸が締まる直前に気づいたため見た目は首を絞める形になってしまったが首が今すぐ飛ぶということは回避できた。


「今、あんたの首に暗殺用の糸がかかりかけた。それを外すから顔のどこかが欠けたくなければ動くなよ」

「……………………」


 頷きそうになっているが、顔を動かしてはいけないので瞼を閉じ覚悟を決めたようだ。

 それを見て俺はゆっくりと糸がずれないように慎重に手を広げていき、首輪を上に抜くように上げて行く。

 時折ギュッと糸が締まる感触があるが、俺の手が少し切れるくらいで滑ったりする心配がなくなるため問題ない。


 そして少し時間がかかったが糸を取り外すことができた。

 が、外した瞬間に糸はするりと俺の手から逃げて入ってきたらしい外へ出ていった。


「そこだ!」


 こういう糸の操作は術者が近くにいなければ精密に行うことはできない。それはどんな凄腕の暗殺者であってもだ。

 素早くアイテムポーチから剣(市販で上質なもの)を取り出し馬車の天井を滅多刺しにする。

 剣の手ごたえは天井のものしかなく、天井だけが破壊され青空だけが見える状態になった。

 要するに、糸を外された瞬間に撤退を決め込んだという訳だ、忌々しいことに気配は感じない。


「逃げられたか、怪我はないか?」

「え、ええ。しかし、今のは一体どこの暗殺者でしょうか」

「さあな、心当たりはないね」


 心当たりがないというのは嘘だ。今ここで正直に話したところでどうしようもないし。

 まず、第一候補にシーラ…………かつての仲間が候補に出るってのは悲しいことだが可能性は非常に高い。

 ループ知識だと俺に接触してきた女性を悉く暗殺してきた奴だ、宣教師を殺しにかかってもおかしくはない。


 第二候補は敵対宗教、あの街ではタリナ教団もいたしもしかしたら別の宗教団体があってもおかしくはない。

 宣教師と言ったら割と位が高いはずなので暗殺すれば敵の戦力を削れると見たのかもしれない。


 そして第三候補はあの皇帝の刺客、俺に濡れ衣を被せようとする輩だ。

 あいつ、俺嫌い。俺、あいつ嫌い。

 これ以上単純な理由があるか?


 まだ確証はないが、これは非常にまずい状況だ。


 と、考えていたら馬車の様子がおかしくなってきた。

 まるで暴走しているような、というか暴走しちゃってる。


「なんだか馬車が早く動いてませんか!?」

「あー、あっ…………」

「な、何が見えましたか?嫌な予感がします」

「…………運転手の首無し死体」

「あっ…………」


 既に馬車を運転する従者は始末されており手綱を握る者が居なくなっていた。

 それだけでなく、馬も妙に興奮していてかなりの速度で走っていた。

 一応、俺はは馬を扱う心得はあるものの。今から手綱を握ろうとも暴走がすぐ止まるわけじゃない。


 止められないなら後にくるそれ(・・)に備えるしかない。


「衝撃に備えろ!多分ぶつかって転倒するぞ!」

「えっ、そんな…………」

「あ、ぶつかるぞ!」

「もうですか!?」


 荒事には慣れてないのか、というか慣れてる自分(・・・・・・)の方がおかしいだけで、ショック体勢を取れていなかった。

 馬が木にぶつかって大変なことになることは秒で分かるので宣教師を抱え俺をクッションとして守る!


「ぐっ、かはっ…………いってぇ!」

「きゃあっ!だ、大丈夫ですか?」

「これくらいなんともない、昔はよくあったし慣れてる」

「いえ、慣れるという問題では…………」


 大きな衝撃で一瞬やばいと思ったが、宣教師が下級とはいえ回復の魔法を使えたようで少しずつ痛みが和らいでいく。


 仕方なかったとはいえ、この密着してる状態どうにかならないか?

 見る人が見たら勘違いしそうだし殺しにかかってきそうだ。

 しかし、近くで見たらもっと美人が目立つが、何か身体に違和感があるような…………


「とにかく、一刻も早くここを離れなければなりませんね」

「馬は転倒して使い物にならなくなってる。これは薬物、興奮剤を使用した跡がある」

「えっと、なぜ分かるのです?」

「昔の知り合いにそれを使う奴が居たんだ。仕方ない、ここからは自分の足で行くぞ」


 戦力、元勇者1人とルメシー教団宣教師1人のみ。

 敵、勢力戦力ともに不明。かつての仲間の可能性もあり。


 俺たちは非常に、非常に不利な戦いをこれから数時間から数日にかけて行われるということを悟ることとなった。



忘れられてると思うけど現在の追いかけレース順位


一位、暗殺者シーラ

二位、騎士アリエル

三位、聖女ジャンヌ

脱落、魔法使いメリル


薬物使いの暗殺者は不眠不休で動けるのです。


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