第二十話 思いつかないなら観光しよう
仕入れに悩んで早三日、買いたい物が半分くらいしかそろわず悩んでいた。
うむむ、鉄製品が多すぎてどれを選べばいいのやら分からなくなってきた。
話を聞く限り、最近ではこの町の商品が割と広くこの大陸に流通していると言うことだ。
ぐぬぬ、ここで買っても安く売らなければならなさそうだ。
そのせいで考えていた予定をどんどん過ぎていく。
しかたない、ここは気晴らしに観光とでも行くか。
しばらく見ないうちにガッチガチの街になったな。
記憶が正しければここは割と多くの襲撃があったような気がする。
帝国領の中では五番目くらいかな?
それが今じゃこんなに発達するためのいい街になるなんて、世界を救った甲斐があったもんだ!
「お兄さん、今日も買い物かい?」
「あー、どれ仕入れるかずるずる悩んでね。焼き鳥塩味を三つ頂戴」
「はいよ、三つだね!」
技術が発達したおかげで料理まで発達している。
そもそも味付きの屋台がある時点ですごいぞ。
調味料ってのはだいたい高級料亭くらいにしか使われない。
一般の食堂にもあるけどかなり値が張って買えるもんじゃない。
しかし、どうやら生産に成功したらしくここ近年では安値で出回っているようだ。
今のうちにたくさん仕入れてもこの様子だともっと安くなりそうだ。
だから鉄製品のこともあるしどうしようかなーって迷ってるんだよ。
焼き鳥を食べながら町を歩いていくが、やっぱり煙が凄いな。
時々咳き込んでいる人を見かけるけど大丈夫かな?
咳と言えば喉薬が無くなっていたな。
やっぱり需要があっても供給が足りてないのが気になるな。
薬草の類はここに来る途中でいくらか見つけたけども摘むことはしなかった。
だって今どき喉薬を必要としているところはすくないもん!
ぬぐぐ、こんな儲け話があるのを知ってたらたくさん摘んで高値で売ってたよ!
はぁぁぁ、もったいなかったな…………
「お兄さん暗い顔してるねー。タリナ教団のお守りはいかが?」
「タリナ教団?」
「あれ、もしかして知らない感じ?だったら世間知らず君に教えてあげようないか」
「シスターが世間知らず君っていうなよ…………」
なんだこれ、悪いけど宗教商売に付き合う暇はないんだ。
元勇者が言うのもなんだけど勇者信仰なので神様とか知りませんので。
むしろ、魔王の方が神様と関係してたらしい発言してたような覚えが…………
うーん、ループのしすぎで思い出せない。
肝心なことを忘れてるような気がするんだけど…………
「お兄さんどうかした?一層暗い顔になってるよ?」
「あんたには関係ない」
「あー、行商人の癖に冷たいなぁ」
「ある意味商売敵みたいなのに温かくする必要もってなんで行商人って分かったんだよ」
「それはあれ、宗教的秘密?」
「はいはい、さようなら」
こんなの相手に興味もないし構う必要もない。
そもそもお守りは俺にとってあんまり意味がないしな。
なんだって変なところの運の良さはいいからな、女運だけは悪いと思ってる。
「ちぇー、興味あったらうちの教団に来てよねー」
だから興味ないっての!
後ろから聞こえる声を無視して観光に戻る。
ここは思っていた以上に自由な街なんだな。
まあ、例の魔導馬車だっけ?それが暴走して主なお咎めがないと言うことはそう言うことなんだろう。
「迷える青年さん、少しお話しよろしいですか?」
「あ、勧誘は結構ですので…………」
台詞からして宗教関係だと分かり、また声をかけられたと思って振り返ると俺より背が高く、妙に肩幅が広い女性が立っていた。
妙に母性があるようなかんじが、いや、これは母性というより…………?
「何か悩みがあったようなので声をおかけしましたが、迷惑でしたか?」
「あ、いや、さっきも知らない教団に勧誘されて」
「なるほど、タリナ教団ですね。まったく、信仰する者が違えどあのような軽々しい者が同じ宣教師だなんて恥ずかしい限りです」
「え、あいつ宣教師だったんだ」
ただの破戒シスターとしか思っていなかった。
確かに露出は多かったし変な男は集まってきそうだ。
…………なんか余計に心配になってきたな。
「心配する必要はありませんよ?アレは欲望のまま生きることも含めて教義に入ってますから」
「欲望?」
「ええ、例えば肉欲とか」
こんな綺麗な人が肉欲とか言ってはいけないと思うの。
「へ、へえ、まあ興味はないんで」
「私達ルメシー教は母性を持って仕えるのであまりはしたないことはしませんよ?」
「また聞いたことのない宗教…………」
「ルメシー教というのは今から300年前に創立された由緒ある教団で」
「話長くなりそうなので結構です!」
これ以上、変な人と宗教に付き合わされるのはごめんだ。
こんなところで2つの宗教の宣教師がいたら戦争でも起きそうだな。
歴史で2つの宗教がぶつかり合った結果、共倒れしたっていう事があったらしいしここでそんなことが起きてほしくない。
おっと、街の人が言ってたこの街のシンボルである『革新の塔』だ。
例の天才が設計したものらしく、見た目は無骨な鉄棒の造りだがかなり頑丈に建っていて展望台までできている。
下手したら王城よりも大きいぞ。
不敬で天才が処刑さないかが心配だな!
ふう、気晴らしはこれくらいにして仕事に戻ろう。
一生遊んで暮らせるならこんなことはしなくてもいいんだろうけど、俺は働かないといけない商人の血が入ってるからきびきび働かないと!
新しい明日のために、どんどん一人の人間として稼ごう。
勇者教信者は自分を信じている。それ故に過ちも重いものとなる。




