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第十八話 流浪の行商人

一応ですが新章、開幕

「ようやく大きな街についた…………」


 エルフの村をでて一週間が経過した。

 出る時に道を覚えていなくて適当に進んでいたら予定よりもかなり遅くなってしまった。

 そもそも予定はあってないようなもんだけど、村それぞれの特産品を買うことができたからまあ良しとしよう。


 街に入るため順番待ちをしなければいけないが適当に周りの人を見ながら時間をつぶそう。

 結局、あれからでちさんとは会うことなかったしこれと言って語ることはない。

 しいて言うなら最近眠れなくなったというくらいだ。

 何だかずっと誰かがいるような気がしてならないんだ。


 いくら探そうとも監視しているようなのはいない。

 一体この怪現象はなんなんだろ?


 まあ、それはそうとして帝国領で五番目に大きい街は製鉄業がメインとなっている。

 ここで自衛用の新しい剣を手に入れて食器なんかを集めて次の行商に売ろうかなって考えている。

 金属製の食器は一生ものと言えるからな、少々値が張るが売り物としても劣化が少ないちょっとした資産になる。


 高過ぎたら売れないし安過ぎたら信用されない。

 いやー、難しいね!


 まあ、今回の目的はエルフの村で貰ったものを売る事だ。

 正直なところ、弓は俺の専門分野どころか的に当てる事すらできない下手糞だし宝の持ち腐れなんだよね。


 流石に直売りしちゃうと大変めんどくさいことになるからオークションにかける予定だ。


 彼女達が追ってきていたとしてもこの街には来ないはずだ。

 帝国領の中でも高潔な騎士より戦士、聖女より荒々しい戦乙女みたいな構図が出来上がっているから二度と来たくないって言ってたよ。


「次!身分証明と出せ」


 おっと、俺の番が来たみたいだ。

 商業ギルドの身分証明書を見せたらあっさりと許可が出た。

 ここも仕事仕事と言いまくってるから何か生活が少しでも変わるものを売ってほしいんだろうな。

 もちろんそれにお応えするのが行商人の仕事だ、酒と薬は少ないけど保存してある食糧ならたくさんあるよ!


 さあて、商売を始める前にオークションにちょっと寄ってみるか。

 ここのオークションにはたくさんの品物が集い金持ちがそれを手に入れるために金で争う場所だ。

 かつて冷やかしとして一度見に行ったことはあったがそれはもう金の動きがすごいすごい。

 何百万、何千万もの金が動きまくって頭が追い付かなかった。


 あんな大きな金を動かすよりこうしてチマチマと暮らしていくのが一番だと俺は思うよ。

 いくら世界の命運を背負った勇者とはいえ本当に期待されていたからであって商人の世界でここまでお金を持つには度胸が足りない。

 さて、そろそろ街に入るぞ~






〜●〜●〜●〜●〜






 煙くさっ!町中煙だらけじゃねえか!

 前に来たときはこんなんじゃなかったのに!


 ここは武具とかでにぎわってたのは覚えているが魔獣の脅威が大幅に薄れた今、そんなものはあまり必要とされていない。

 つまり、需要が減って売れなくなるはずなんだけど実際この煙の量から武器を作っている訳じゃなさそうだ。

 じゃあ、今はなんでこんなに煙を出してまでにぎわってんだ?


『緊急事態、魔導馬車が暴走中。市民の皆さんは避難してください』

「おいおい、今月に入って何回目だよ」

「この前はガスパールのとこの研究所がやらかしてたからなぁ」


 ちょっと待て、けたたましい音が鳴り響いてるのに何でこんなにのんきなんだ。

 一応避難しているとはいえまるでいつも怒っているような感じじゃないか。


「あれ、お兄さん外から来たの?うちに避難していいよ」

「えっ?」

「音の大きさと方角からそろそろ来る頃だから早く早く」

「じゃ、じゃあお邪魔させてもらおうかな」


 少年に言われるがまま手を引かれて少年が住んでいるらしい家に避難した。

 そう言えばここら辺の壁は鉄製になっていたな。

 そもそもその量の鉄がどこにあったんだ?

 近年では採掘量が減ったとか聞いていたが…………


「おかえりジョン。ってあら、その人は?」

「外から来たっぽい人!」

「なんかすいません、ここに来るの魔王が倒されて以来でして…………」

「おお、なるほど。さしずめ旅のお方ですか」

「行商人をやっております。といっても最近一人前になったばっかりですが」


 良かった、外の人だからって邪険に扱わない人で。

 成り行きで来てしまったから少年まで怒られかねないと思ったよ。


「ところで、今何が起こってるんです?」

「外から来た人は毎回驚いてるな。二階の窓からのぞいたら分かるさ。狭いが案内しよう」


 と、親父さんに案内してもらい二階についた。

 ジョン君と全く顔が似てないな…………


 おっと、窓を除けとジェスチャーしている。

 遠くから地響きのような音が聞こえるが、いったいどうなってるんだ?


 あ、音がどんどん近づいてくる。

 ジョン君もやってきたし一緒に窓を覗いていたら…………



 ブルルゥゥゥゥゥン!!!



「こらっ!と、まれぇぇぇぇ…………!」


 …………………………………………………………………………は?


「なにあれ!?」

「すっごいでしょー!アレが魔導馬車だよ!」

「あれが、馬車?馬がいないのに馬車ってどういうことだよ…………」


 確かに見た目は馬が引く馬車の天井を取り除き小さくしたものだが明らかに馬車ではない。

 しかも、あのスピードで走れるだって?


 ジョン君だけじゃよく分からないから親父さんから話を聞くと、最近現れた天才がたくさん人々の生活を楽にする発明をしているらしい。

 そのうちの一つに魔導馬車があるとか。


 アレが実用化したら大革命だぞ。

 動力さえあればずっと動き続けられる乗り物、疲れを知らないから馬車よりも効率がいい。

 ただ、危なっかしいと思うんだよな俺は。

 アレが悪意を持った人が使えば大熊の体当たりのごとく死傷者が出るかもしれない。


 はは、なんてこった…………

 世界が平和になったら人類はここまで進むのか!

 そういやループした時にはこんなの知らなかったな。

 元々ここに寄ることもなかったし、このループにだけ誰かが介入していましたー、なんてないもんな。


 さて、そろそろジョン君にかくまってくれたお礼としてある分の商品を安く売りますか!

 なあに、一応黒字で売るから問題ないさ。

 この後、安全になったという大きな声を聴いて商売を始めたらめっちゃ人が寄ってきた。

 おかげで売れる商品は全部売ることができたからあとは仕入れとオークションに売り出す時間だな。


 この時、俺は追跡者のことをすっかり忘れてたことを誰も咎めることはできなかった。

絶賛歪な産業革命中…………

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