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第十二話 隠れた里

 

 みんなは森の中で失敗をしたことはあるか?

 迷って出られなくなったとか変なキノコを食べて腹を壊したとか、あとはとある魔獣の縄張りに入って大きな戦闘をしてしまった事とかあるだろう。

 え、ない?まあ全部俺が体験した話だし気にするな。


 縄張りと言えば隠れ里があったりするんだよね。

 結界で隠されていて、誘導系だとずっと同じところをぐるぐるさせられるみたいなものもある。

 突破したら感知されて即座に警備隊が来る。

 今このように…………


「動くな!背負っているものを置いて手を上げろ!」

「でちち!」

「……………………」


 これほどでちさんを恨んだことはない、多分これからも更新し続けるだろうけど。

 今の状況を説明すると、でちさんを追いかけてたら結界を突破しちゃって警備隊らしき人たちに木の上という高所から弓で狙われている。


 でちさんは警備隊の女性に大事に抱えられていた。

 あの二頭身め、ドリブルしてやろうか…………


「三度も警告しない!荷物を置き手を上げろ!」

「分かった、分かったから!」


 ここはおとなしく手を上げなければいけない。

 肩書とか関係なしに身の潔白を証明すべきなんだ。

 おっと、荷物を降ろし忘れた。

 一応俺から離れた場所に置いておかないとな。


「これでいいだろ?」

「でちー」

「貴様は何者だ」

「俺は行商人のリクト!勇者と同じ名前をしているがただ同名というだけだ!」

「リクト?まさかあの勇者と同じ名前とはな」

「あとでちさんを追ってたらここまで来てしまった!もし禁止指定の場所に踏み込んだなら謝る」

「なに?でち公殿を追ってか?」

「でちち」


 ここの人たちもでちさんを知っていたのか。

 でちさんも片手をあげて肯定しているから警戒が解かれていく。

 でちさんの影響力って一体どこまで届くんだ?

 でちさんと一緒なだけで信頼してくれることが多いし、もしやこの大陸全域に顔が広いと言われてもおかしくはないぞ。


 そうしたらなんで勇者時代に会わなかったかろ言う話になるけど、会わなかったものは会わなかったんだから俺は知らないよ。

 あの人はでちさんをでち公殿と呼んでたけど、どっちが正しいにだろうか?


「でちー」

「済まなかった。まあ、でち公殿に関することなら仕方ない」

「一緒にいても勝手にどこかへ行こうとするから迷子になってたんですよ。ははは、はぁ…………」

「同情する。しかし、今日は森を抜けられたいだろう。よければ一晩泊っていくか?」

「いいのか?でも貴方達は…………」

「でち公殿と短い間とはいえ旅をしていたのだろう?邪心を持っているような輩ではないことははっきりしている」


 お、おう、なんかここまで信頼されていたら背中がかゆくなる。

 まあ全部でちさんのおかげなんだけどね。


 本当は辞退したいところだけど、実際に彼らが今日中に森を抜けられないと言ったら無理なんだろう。

 彼らは何者か、実際に見たのは初めてだが知識として知っている。

『エルフ』、俺たち人間とほとんど似た外見だが耳がとがっているのが特徴で、筋力も魔力も人間の上位互換ともいえる種族だ。

 彼らの数はもともと少なく、隠れ里に住んでいるため人の目につくことはまずない。

 誰かを招くこともないとされているから、俺の状況を考えると幸運だろう。


 そういえばジャンヌから聞いたことがある、帝国領にはエルフの隠れ里があると。

 まさかここがそうだったとは、魔王戦から生き延びたことに加えて一生分の幸運を使い切ったんじゃないか?

 即死攻撃らしいものを全部レジストした(弾いた)とか言っていたが、実際のところはどうだったんだろうな。


「もう少しで着くが、少し待っていてくれ。でち公殿がなついていても村長に許可を取らなければならない」

「分かった。それじゃあここで待たせてもらおう」

「もう少し先でもよいのだが」

「こう見えて剣の腕には自信があるんだ。そこらの魔獣に後れなんて取らない」

「そうか、ここらなら見張りもいるし少しの間なら一人でも大丈夫だろう」


 ちらっと特殊ポケットに隠していた剣を見せて納得させた。

 聖剣ではないにしろ、ちゃんと基礎から死ぬほど鍛錬して戦場をくぐりぬけて来たんだ。


 エルフの男性は一言断りをいれて駆け出した。

 流石は森の民と呼ばれるだけあってすぐに見えなくなった。

 森の中だと身体能力に補正がかかるのかな?


 待つ間は暇だけど一緒にいるエルフの人には話しかけづらいな。

 俺はでちさんのおかげで一応の信頼は得ているが、人間と仲が悪いとされているから視線がちょっと痛い。


 人間の俺に辛い空気だから現実逃避に何か考えよう。

 でちさんの人脈とかどうなってるんだろう?

 あのエルフにさえ仲良くしてるんだし秘密裏にどこかの領主とつながっているのかも。

 もしかしたらドラゴンにも知り合いがいたりして!

 いや、普通に考えてそれはないだろ、妄想が過ぎたか。


「おい」

「あ、はいなんでしょう?」


 いきなりエルフの女性に呼びかけられたからついつい丁寧口調になってしまった。

 エルフって美形ばっかりなのはなんでだろうな?


「お前は行商人なんだな?」

「ええ、それなりの商品は揃えていますが」

「何を売っている?」

「酒に生肉、魚などの食料品やタバコやパズルなどの嗜好品も。もしかして酒が欲しいんですか?」

「ち、違うぞ。興味があっただけだ」

「まあこっちも商売なんでねぇ、お金があれば売らせていただきます」

「……………………」

「物々交換でも可」

「…………後でうちに来てくれ」

「まいどありー」


 神話とかに出てくるような高潔さがぬじゅみ出ているエルフだが、俗物的な面があってなんか安心できたのは秘密だ。

でちさん(でち公)のスキル・誰とでも仲良くなれる。その対象は人語が話せるかどうか、人型かは問わない。

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