現実世界、二日目
今のは、夢だったのだろうか…………。
別の世界のようなそんな気もしたが。
「大丈夫?」
そこには時野がいた。
「俺、今まで…………」
「あなたここに来たとたん急に眠っちゃって、びっくりしたわ」
「眠った…………?」
やはりあれは夢ということにしておこう。
「それより、この街はどうなったんだ?」
彼女は大きく息を吐き、彼女のこと、世界がどうなっているかなどすべてを話してくれた。
彼女の話によれば、3年前、この世界に妙な力を持った人間が現れたそうだ。
力は様々あり、その力は使いようで人をも殺せるらしい。
そしてその異能力者を止めるための組織、対異能組織とやらが結成されたらしい。
彼女はあの学校にも、異能力者がいるという情報を入手し、入学したようだ。
「なんで街が壊されてるんだ?」
「おそらくあちら側は異能力者を残すため、こちらに攻撃を仕掛けてるんだわ」
「これからどうすれば…………」
「大丈夫よ。まずは本部に行きましょう。後のことはそれからよ」
崩壊している街を走る彼女についていく。
「本部とやらはまだ見えないのか?」
すると彼女は何もないところで立ち止まった。
「ここよ」
「何もないじゃないか!」
「あるじゃない。扉が」
瓦礫で埋もれていて見えなかったが、何やらマンホールのふたのようなものが見えた。
「扉って……これか?」
「そうよ。この先に本部があるから」
時野はその蓋をいとも簡単に開けながら言った。
マンホール蓋の奥には、下水道に続くはしごではなく、地下室に行くときのような階段があった。
先は暗くて見えない。
「早く入りなさいよ」
半ば強引に彼女に引っ張られて、奥へと進んだ。
「帰ったわ」
広い部屋に出た。
うっすらと明かりがついているが、ハッキリと認識できない程度の明るさ。
「トキ、やっときたかー」
声を出すまでわからなかった。
姿を現したのは、40代くらいの、いかついおっさん……だった。
「それは誰だ?」
「この人は私が調査しに行ってた学校の生徒。名前は……聞いてないわ」
自己紹介で言ったはずだが。
「まあいい。お前はこれからエムだ」
なんか名前を勝手に決められたのだが…………。
「あの……ここが本部ですか?」
「そうよ、ここは対異能組織本部よ」
「ここにきて何すれば……?」
「そうね、とりあえず異能者と戦えるようにするわ」
「戦えるって……」
「そう、戦うの」
「じゃあ、トキ、エムをお願いするぞ」
「任せて頂戴」
「ここ、あなたの部屋ね。使ってね」
そう言って連れてこられた部屋は先ほどの部屋とは違い、明るかった。
「この組織は、2人だけなのか?」
「違うわ。まだいるけど、来てないだけよ」
「そうなのか……」
「まだ準備があるから、しばらくここにいてね」
「そうか」
何もわからず、ここまで来たせいか、つかれがどっと来た。
「寝るか」
時野の準備ができるまで、俺は深い眠りについた……。