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異世界、一日目

「…………っは!」

 目の前には目覚まし時計が7時29分を示している。

「ここは…………?」

 自分の部屋。音が鳴る1分前だ。

「街はすごい被害だったはずじゃ…………」

 何が起きているのかわからない。とりあえず、下に降りてみることに。



「おはよう、今日はずいぶん早いのね」

「母さん…………‼ なんで…………?」

「何言ってるのよ。ご飯はもう少しでできるから待っていてね」

 何が起きているのだろうか。俺はあの時死んでしまったのだろうか。

 いや、確かに、あの時、時野とかいう電波少女に連れられ、逃げたはずだ。

「あ、ありがとう」



 しばらくしてご飯ができたようだ。

「はい、できたわよ」

 メニューは、鮭の塩焼き、豆腐、ジャガイモの味噌汁。

 あの時と、まったく同じだ。

「い、いただきます」

「それにしても、あんたが無事に高校に入学できてよかったわ」

「うん……、そうだね」

「どうしたの? 調子悪いの?」

 だめだどうしても集中できない。

「母さん、もういいよ。ごちそうさま。学校行ってくるよ」

「あら、そう。きおつけてね」

 俺は振り返らず、そのまま学校へと向かった。



 彼女はいた。

 俺の隣の席で、本を読んでいる。

「おい、時野、ちょっといいか?」

 彼女は静かに立ち上がり、俺のところまでやってきた。

「何かしら? 初対面のあなたに呼び捨てにされる覚えはないわ」

「初対面? 何言ってる? お前は昨日俺を助けただろう」

「ほんとに何言ってるの?」

 何を言ったらいいかわからず、彼女が自己紹介の時に言っていたことを言ってみた。

「お前は、対異能力組織の一員で、昨日崩壊する街から俺を助けただろう!」

 すると彼女は、またこういった。

「ほんとに何言ってるの? 対異能? 何ソレ」

 …………あれ、どうなっている? 確かにあの時彼女はそう言った。

「そろそろ、朝礼が始まるわ」

 周りの生徒はすでに教室に入り、廊下は静まり返っていた。



「今日からみんなのクラスを受け持つことになる政田だ。一年間よろしく」

 そう言って教室に入ってきたのは、やはり担任政田だった。

「えーそれではこれからみんなには自己紹介してもらう」

 やっぱりこの流れ。いったいどうなっている?

「出席番号の若い人からお願いしよう」

 そう言っておれにしたら二度目の自己紹介が始まった。



 時野の番。

 また彼女は何かを言うのだろうか。

 正直、対異能とかを言ってほしかった。

 しかし、彼女は、おれが思っていたのとは違うことを言い出した。

「私は、今から魔王を討伐に行く時野だ……!」

 …………は?

「討伐したい奴は、一緒に来い!」

 何を言い出すんだ? 魔王を討伐ってどこかの勇者か?

 すると今まで晴れていた空が急に暗くなり、街全体が、闇に飲み込まれていった。

 彼女は俺に、

「あなた、面白そうね。さっきも意味不明なこと言ってたし」

 そう言っておれの手を強引に引っ張って、走り出した。

「おい! どこ行くんだよ?」

「さっきも言ったでしょ? 魔王を討伐に行くのよ」

 彼女についてきている人は誰もいなかった。

 そりゃそうだ。突然あんなこと言われても誰も信じない。

「魔王っていったいどこに?」

「あそこよ」

 そう言って彼女が指をさした先は、この街のはるか遠く。この闇が広がっている根元があった。

「あそこに…………?」

「そうよ」

 ちらりと、振り返る。

 学校はもう闇に飲み込まれた後だった…………。





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