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第4節:ナイアたんは喜びます。


 アジトの中。

 目の前でダラダラと油汗を流しているのは、背こそ高いが細身で、小さい目をした男……リブだった。


 アジトの構造なんか単純で、天然の洞窟をちょっと掘って大きくした程度の穴蔵であり、特に枝分かれが多い訳でもない。

 どこに潜むかも完璧に把握している俺の襲撃で、油断しきっていたアジトの連中は相手にもならなかった。


「こ、コープ……」

「ん?」


 奥に追い詰められ、剣こそ構えているが明らかに腰が引けているリブの問いかけに、俺は首を傾げる。

 俺の後ろには、ナイア、ルラト、ホテプの三人と。


 ずらりと並んだ、フレッシュゴーレムの集団がいた。


 俺が墓場に引き連れて言った仲間達を、ナイアの力でゴーレム化してもらった連中だ。

 ただ、殺されてゾンビ化してナイアにやられた奴もいて、腕がなかったり頭がへしゃげていたりと、俺のように生前と同じ、という訳にはいかなかったが。


「い、一体どういうつもりなんだ?」

「どういうつもりも何も、お前が俺をハメたんだろ?」


 アジトに残った仲間達はなるべく殺さず、縄で縛り上げて隅に転がしている。

 奴らにも聞こえるように俺がリブに言うと、半分は驚いた顔をして、半分は青ざめた。


 青ざめた連中は、リブ派だった奴らだった。


「な、なんの話だよ!」

「斡旋屋で墓暴きの話を聞いたら、お前に似た奴の依頼だった。墓場の噂に関しては、口止めされてたって情報屋が言ってた。口止めしたのもお前だ。……っつー訳で、ここに来たんだけど」


 俺は短剣を右手でくるくる回しながら言い、リブを睨んだ。


「頭領やりたきゃ、こんな事せずに言や良かったんだよ。そしたら譲ってやったのに。それも俺一人をハメたんなら別に許してやっても良かったけど」


 俺は短剣を回す手を止めて、刃先を後ろのフレッシュゴーレム化した仲間達に向けた。


「あいつらまで殺されちゃ、見逃してやる訳にもいかねーだろ?」


 そう言って俺は短剣を腰に収めるのと同時に、投剣を引き抜いて素早く手首を返した。

 狙い違わず、投剣がリブの足に突き刺さる。


「ぎゃっ!」


 足を射抜かれて倒れたリブが、剣を取り落とした。


「ゆゆ、許してくれ! 命だけは!」

「ダメだ」


 俺は、仲間に裏切られたがまだ『ゴルバチョフ盗賊団』の頭領だ。

 先代にも謝りに行かなきゃならないが、裏切り者は死刑が、盗賊団の掟である。


「どうする? お前らやるか?」


 殺されてゴーレム化した仲間達に言うと、奴らは一様に首を横に振った。


「お前がアタマだろ。お前に任せるよ」


 子どもの時に俺と一緒に盗賊団に拾われたゴストンが仲間を代表して言い、俺はうなずいた。


「リブ。頭使う方向を間違えたな」

「ま、ま!」


 俺はそれ以上の言い訳を許さずに、リブの頭に投剣を放ってその命を刈り取った。


※※※


「それで、これからどうなさいますの?」

「先代が隠居してる山の中に行くよ」


 リブに協力していた連中も殺して埋めた後、残りの仲間には好きにさせる事にした。

 ゴーレム連中は半分くらいはそのまま死ぬ事を望んで、もう半分は俺やナイアについて来る事を願ったのでナイアの了承を得て許可を出した。


 ゾンビが増えましたわ! と喜びながら昼食を取るナイアを、盗賊団の連中がうっとりと眺め、ルラトが奴らの額を片っ端から指で突いて行った。


「全く、おぬしに従うだけあって頭の中に何も入っていない連中じゃの」

「うるせーよ骨野郎。お前なんか全身何も入ってねーだろうが!」


 倒れて呻いている中に混じっている生きてる奴らも、先代のご意向を伺うというので、このまま引き連れて行く予定だ。

 俺も炙り肉を食ったが、美味いという感覚はあるものの腹が減っている訳じゃない。


 何となく習慣で食っているだけで、本来はもう、飯を食う必要も寝る必要もない体だそうだ。


「思った以上に大所帯になったのう」

「ウチの生きてる奴らとナイア以外は飯もいらねーし、金の心配はねーだろ」

「そうではない。目立つじゃろ。外見はマントで覆うにしても、大勢で歩けば不審に思われるしの」

「山道を抜ける。先代が住んでるのはそんな遠い所じゃねぇし」

「どこじゃ?」

「ワンサイート山だ」


 カヨムー帝国は一枚岩の帝国ではなく、幾つかの王国をカヨムー王国が併吞して出来た帝国だ。

 その、元カヨムー王国と、西のファポリス山脈の間にあった元ネクロ王国領が、今、俺たちのいる場所。


 ワンサイート山の中にも昔使われていたネクロ王国に繋がる山道がある。

 マンサの街とネクロの都を繋ぐ街道の脇にある山で、その頂上に先代が住んでるんだ。


 ちなみに魔王軍が進行してきているのは南からで、国境がエルフの森を挟んでバタフラム王国と、カヨムー帝国の南領に接していた。


 いた、というのは、南領は既に魔王軍に落とされて、今はネクロ領主の統治する西領に侵攻しているからだ。

 その、今正に西領と戦う魔王軍の、聖女の力を持つ貴族の娘が魔王軍に所属しているとか、埋伏の毒も良いところだと俺は思う。


「ふむ。まぁ我らも一度ネクロの都に戻る予定じゃったし、丁度良いじゃろ、ナイア嬢」

「ええ、わたくしは構いませんわ」


 ルラトの言葉に、ナイアは頷いた。

 ナイア一行のトップはナイアだが、お目付役とか知恵袋とか、そういう立ち位置にいるのがルラトらしい。

 

 自然、話し合いはルラトとする事が多くなっている。


『山か。魔物どもは朕を認識出来るからな。肉体美を見せつける好機である!』

「魔物や獣に見せつけてどーすんだよ」

『愚問であるな。見せつける事が出来れば対象など何でも良いのだ!』

「……主義一貫してんのか馬鹿なのかイマイチ分かんねーな」

「馬鹿に決まっておるじゃろうが」

「何気にお前もひでーな、骨野郎」


 筋肉野郎にしてジンニーとやらであるホテプは、どうやら常人の目には見えないらしい。

 俺が見えるのは、ナイアと魂が繋がっているからだとルラトに言われて知った。


「じゃーまぁ、とりあえず行くか」


 今後、金の目処が立つまで趣味で飯を食うこともないだろうな、と思いながら肉の残りを口に放り込んで立ち上がった俺が言うと、一行は後片付けをして旅の仕度に入った。

 

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