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第26節:ナイアたんは自慢します。


「暗黒騎士……その名は、かつてこの地に在ったゴンド王国を滅ぼしたソウルイーターの名ではなかったか!?」

「ほう、脳筋呼ばわりされていた割には博識じゃの。もっとも、ソウルイーターと化した覚えはカケラもないがの」


 シュテンに問われて、ルラトは飄々と言い返した。


「一夜にして、ゴンド王国を壊滅せしめた者……俺が魔王となる為の戦いで血祭りに上げるのに相応しい存在だ! ゆけ!」


 シュテンの合図で、小鬼が数匹ルラトに襲いかかった。

 だが、その凶悪な爪がルラトの体に触れる前に、全て両断されて地に落ちる。


 ルラトが動いたようには見えなかった。


「何したんだ?」

「見えませんでしたけれど、多分、ただ斬ったんじゃないでしょうか」

「んなアホな」


 アブホース伯爵の剣ですら、振った事くらいは分かったぞ?


「小僧。だからレベルが低いというんじゃ。ナイア嬢の言葉が正解じゃ」


 この骨野郎、適当言ってんじゃねーだろうな。

 そう思う先に、また飛び掛かってきた小鬼が斬り捨てられる。


「流石にこの程度の者らでは相手にならんか! では、次だ!」


 今度は、シュテンより一回り小さい程度の赤鬼と青鬼が前に出て、手に握った巨大なマサカリとナタをそれぞれに掲げる。

 踏み込んで来た二体の攻撃に、ルラトは直撃された。


「おい!」

「いえ、待ってくださいませ」


 攻撃を受けたルラトに俺は慌てるが、ナイアは特に気にもしていないようだった。


「攻撃が抜けていません」


 言われてみりゃ、ルラトは微動だにしていないし、赤鬼、青鬼の刃は鎧の表面で止まっているようだった。


「小僧の体には少し活力が足らんでの。おぬしらで補わせて貰おう。……吸気」


 ルラトが宣言すると同時に、ボ、と赤鬼、青鬼の胸に巨大な穴が空いて、崩れ落ちた。

 薄ぼんやりとした紫の光がそれぞれの体から立ち上り、ルラトに吸い込まれる。


 二体の色鬼は、瞬く間に萎れ、干からびて砂と化した。


「暗黒騎士の基本剣術の一つ、『吸気』ですわ。相手の生気や霊気を吸い、自身の活力へと変える剣術です」

「……昔見た事があるけど」


 暗黒騎士そのものは割といるし。

 その時は傷付けた相手はピンピンしてたけどな。


「基本とは、極めれば奥義になりうるものですわ。練度が違いますの」

「ルラトなのに……」


 そりゃ骨の時も速ぇと思ったり、丘で毒沼作り出すのを見たりはしてたけど。


「アイツ、ナイアより強いんじゃねーのか?」

「当然ですわ! ルラトはわたくしを守る、最強のスケルトンですもの!」


 ふふん、と何故か胸を張るナイアだが、骨のまま戦わないスケルトンとかスケルトンじゃねーだろ。

 むしろ俺がスケルトン化されている件について。


「わたくしを守るってお前、最初の死霊術士の時、戦わせるのが忍びないとか言ってなかったか?」

「……だってルラト、強過ぎてわたくしが死霊術士として戦う機会がないんですもの」


 ちょっと恥ずかしそうに言ってるけど、お前そんなのが本音だったのかよ!

 さっき俺に掛けたエゲツない術と合わせて、死霊術士どころか聖女なのかも怪しくなって来たわ!


 その間にルラトが、どうやら久々に暴れて興が乗ってるのか、少し笑いながらシュテンに言う。


「ほほ、 雑魚では無駄よ。おぬし自身が来ると良いぞ」

「よかろう! やはり相手にとって不足はない!」


 あっさり口車に乗ったシュテンは、前に出て棍棒を振り上げた。

 ズン、と大地が鳴動する程の覇気を放ち、崖の端がパラパラと崩れていく。


「覚悟しろ! 貴様の体を、一撃で砕いてくれる!」

「大言壮語は身の破滅を招くのじゃがな」


 だらりと下げていた暗黒剣を、ルラトはゆっくりと持ち上げて半身で構えた。

 緊張感の中で対峙する二人は、しばらくの間全く微動だにせず。


「グルァッ!」


 何の兆候も見せないまま一気に距離を詰めて、シュテンが必殺の棍棒を上からルラトに叩きつけようと振り下ろし。




 それよりも先に、ルラトの剣がシュテンの首を刎ねていた。




「残念じゃったの」


 いつもと変わらない調子で、倒れ込むシュテンの体を避けたルラトは、クルクルと落ちて来たシュテンの頭を掴み、その顔を見た。

 完敗だ、とシュテンの口が悔しげに歪み、ルラトは頷いた。


「潔いの。おぬしの魂を永劫の苦しみに呑むのはやめておこう」


 死んだシュテンの死骸に剣を振るい、その肉体が先ほどの色鬼らと同じように消える。


「さ、小鬼ども。まだやるかの?」


 首を傾げたルラトの言葉に、小鬼は一目散に周囲に散っていった。

 

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